身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。

がおー

32.「自称妹はこっちを凝視し続けている。」

自称従兄弟の抱きついた所を見ていたのだろう。

別に僕が悪事をした訳じゃ無いんだから気にする必要は無いのだけど。

「・・・お兄ちゃん・・・」

自称妹は僕を呼びかける。

「何だ?」

「こっち来て。野菜、切るの手伝って?」

手伝え?今まで、料理は自称妹が一人でやっていて、手伝いを求められた事は一度も無いのに。

「どうしてだ?君一人で出来るだろう?」

「いいから来てよ!」

自称妹は声を荒げる。

自分の兄貴を取られるかもしれないって自称従兄弟に嫉妬してるのかあ?

分かりやすぎてみっともないぞ。

いや、しかし、僕もこんなににも良く好かれたもんだ。

「・・・しょうがない、行ってやるか、千歳ちゃんはテレビでも見て、ここで待っていてくれ」

「は、はい」

僕は台所に向かったのだった。

「で、何切れば良いんだ?」

「ええっと、大根と、ほうれん草と、白菜」

「んー・・・、今日は何を作る予定だったんだ?」

「ええっと・・・何だっけ?」

「何だっけ・・・って、料理をしている君がわからないのに僕が解る訳も無いだろうに」

「そ、それもそうだね。あははは」

あははじゃないっての。

何を沸かしているのだろうと、僕は火で炙られた鍋の中を覗いてみた。

すると、鍋の中身は何も入っておらず、空の鍋だった。

「ちょっ、何をやっているんだ。火を止めないと。」

急いで火を止めたのだった。

「あっ・・・、ごめんなさい。」

自称妹も空の鍋炙っていたのを気づいたらしく慌てて僕に謝った。

「まったく、何をやっているんだい?料理は?」

「えーと・・・その・・・。」

自称妹はまごまご口を所在無さげに動かした後

「ええーと・・・、お兄ちゃん達の会話が気になって、その・・・」

「作ってなかったと?」

「ごめんなさい・・・」

「いや、いいんだ。気にしないで」

まあ、気になってしまったものは仕方がないだろう。

「どうしたんですか?」

僕らの様子が気になったのか、自称従兄弟も台所に入ってくる。

自称従兄弟を見て、自称妹はぶすっとむくれた顔をした。

「ああ、何でも無いんだ。何でも。ああ、そうだ、今日は新しい同居人が出来たという事で、出前でも取ろう。出前を。寿司で良いな?」

「えっ、いいんですか!」

出前という言葉にぱぁと顔をときめかす自称従兄弟。「何だ?寿司が好きなのか」

「はい!大好きです!」

にこにこ笑顔である。

単純だな。寿司ごときで。寿司を食わすと言えば何でもしてくれそうな顔だ。

「千尋ちゃんも、それで良いだろう?」

そう自称妹に聞くと

自称妹は俯きながら

「うん・・・」

とか細く答えた。

寿司がやって来た。

いくら、マグロ、シャケ。当然ながら寿司の出前なので色とりどりの寿司が並んでいる。ああどれも旨そうだ。

「旨そー!ねえ、お兄さん!食べて良いですか?」

「いいよいいよ。食べなさい食べなさい。」

気前の良い調子で言った。

「有り難うございます!頂きます!」

自称従兄弟はマグロにかぶり付く。

「んー・・・んまーい!・美味しいです!お兄さん!」

自称従兄弟は幸せそうだ。

寿司を食べるだけで、こんな顔をするなんて4000円を使った甲斐があった。

一方自称妹といえば

「・・・・・・」

ちまちまとたまごを食べている。

「千尋ちゃん、旨いか?」僕が声をかけてやると

「う、うん!旨いよー。お兄ちゃん!」

とはにかんで微笑んだ。

・・・どうも自称妹は引っ込み思案の様で(そういえば引きこもりだと言っていたな。)

「千尋さん、いつも、お兄さんのご飯作ってるのかなー?」

自称従兄弟は自称妹に質問した。

「そ、そうです・・・。」

自称妹はおどおどと答えた。

「私は全然料理とか出来ないからさ、そっかー、千尋さんがお兄さんの食事をー・・・へえ・・・。」

何やら意味深な眼差しの自称従兄弟。

「な、何ですか・・・?」

「いやね、羨ましいなあって思って。お兄さんと二人っきりで暮らせて、というか妹なんだよね。私もお兄さんが本当のお兄さんなら良かったなあー」

「そ、そうなんですか・・・」

「そうなんだよー」

くひひと笑う自称従兄弟。「私も・・・」

「ん・・・?」

「私も、ええと・・・千歳さんの事が羨ましい・・・。だって、お兄ちゃんとは血が繋がって無いもの。・・・羨ましい・・・。だって・・・」

何か言いかけた所で自称妹はハッと口をつぐんだ。

何か大変な事を言おうとしていた気がする。

「えーと、もしかして千尋さん、お兄さんの事、本気で・・・」

「わー!わー!」

自称妹は突然奇声を上げた。

「・・・そっかー、そっかー。私に当たりがキツかったのも分かったよー。」

うんうんと納得するかの如く頷く自称従兄弟。

「・・・同じ思いを抱えているなら、私達、きっと、仲良くなれるよ。きっと。私、同じだもの。」

クスクス笑いながら頷く自称従兄弟。

「え、えっ?」

「一緒に頑張ろ?千尋さん」

と自称従兄弟は自称妹に握手を求めた。

「・・・・・・」

自称妹は少し間を置いた後

「う、うん」

と自称従兄弟の手を握った。

「うんうん」

と自称従兄弟は微笑みながら握り返す。

実に微笑ましい光景だった。

「身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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