身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ!いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!・・・どーすんのよ、マジで・・・。

がおー

19.「お兄ちゃん・・・、お兄ちゃん・・・」

何かに揺さぶられて、僕は覚醒した。

目蓋を開けると、目の前には見覚えの無い女の子・・・自称妹が僕を覗きこんでいた。

・・・夢じゃなかった・・・、あのキテレツな存在の妹と自称する者が現実の物である事にうんざりとした。

「起きる時間だよ?起きて?」

時計を見てみると、いつもの起床時間より30分は早かった。

「何だ・・・クソ、30分は早いじゃないか。眠いんだから寝かせてくれ」

と言って毛布を被った。

「え、ええ、でも、ご飯食べる時間・・・」

「いいから、いいから」

と言い付けて、二度寝したさ。

「お兄ちゃん、起きて。30分経ったよ。起きて。」

暗黒の眠りの世界に再び異物の声が鳴り響く。

眠い眠い目蓋をようやく開けると目の前にはまたもや僕の妹だと自称する女の子が居た。

時計に目をやるともう起床の時間である。

やれやれと僕は立ち上がった。

「お兄ちゃん、顔洗ってね。朝ごはん、もうとっくに出来てるからね」

と自称妹は顔をぷんぷん膨らませながら言った。

「朝ごはん?」

「うん、朝ごはん。」

自称妹が居間を指差した。

するとちゃぶ台の上にトーストと卵焼きにベーコンが森付かれた皿があるではないか。

「あれ・・・君が・・・?」

「うん、簡単な物しか作れなかったけどね」

自称妹はふんすと鼻を鳴らして言った。

「ほらっ、起きた起きた。早く準備しないと、お仕事遅れちゃうよ」

と自称妹は僕の手をぐいぐい引き僕は上体を起き上がらせられる。

「んむー、お兄ちゃん重ーい・・・。ほーら、顔洗って来てよ。」

そのまま立ち上がらせられて洗面所に向かって背中を押された。何なんだよ。眠いのに。

僕は渋々洗面所で顔を洗った。







「顔洗った?お兄ちゃん、じゃあ、こっち来てー、ご飯食べよ?」

顔を洗った僕に自称妹はちゃぶ台に手招きして言った。

僕はのろのろとちゃぶ台に向かい、畳に座る。

「ちゃんと食べてね。お兄ちゃん。朝ごはん抜きは駄目だよ?」

自称妹が用意した、朝食をもしゃもしゃ食べる。

横には通勤着が用意されていた。

「・・・これも君が用意したの・・・?」

「うん、・・・だって私、引きこもりだし・・・お兄ちゃんに厄介になってる身だもんね。・・・これぐらいはやらなきゃ・・・。」

自称妹はもじもじしながら言った。

・・・殊勝な奴だ。

思わず感心してしまった。

「・・・引きこもりは引きこもりとして、やる事はやるんだな、君。偉い偉い」

と誉めてやると

「そ、そうー?えへへー」

と自称妹は嬉しそうににやけた。

・・・偉い、偉いんだが、あまり健全とは言えないな。

普通この頃の学生なんて兄弟の世話なんかより自分の興味がある事に走るものだが

・・・いやいや、そんなつまらん事を考えても仕方がない。

完食した僕は「ご馳走さま」と自称妹に言ってやると、

「はいはい、お粗末様」

と自称妹はにこにこ微笑むのだった。

後は出勤時間までニュースをぼんやり見て、家を出た。

家を出る時、「行ってらっしゃーい」と元気良く自称妹が言うものだから

「行ってきます」と答えた。

久々に送り出しの挨拶を聞いて、出発の挨拶を返す事は、我ながら不覚にも、心地良さを感じてしまったのだった。

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