異世界にいったったwwwww
外伝27
森閑とした木々の群れに閉ざされた中、カイトは黒衣と白い石膏質の仮面で装っていた。自らの呼吸以外、殆ど音がない。まるで、死者の肌のようにはりのない空気の感触。
(イヤな匂いがするな……)
もう一人の為に呟く。
(そう? ――って、ぼくは分からないんだけどね)悪戯っ子のように笑った。
現在、カイトは賞金稼ぎまがいの者としてこの「森」に来ていた。本来であれば比較的騒がしいのだが、「ある生物」によって不気味な世界に変わってしまった。時刻は昼頃なのに木の隣り合った枝には太い白の繭糸が張り巡らされており、太陽の光を遮っていた。
卵の腐ったような香り……しかも、生肉のように新鮮な金臭さも混じって嗅がれた。地面を踏みしめる度、腐葉土の土壌の湿っぽさを感じた。
――と、その時。
(カイト、待って。何かコッチにくる!)
緑の瞳が闇の奥から動体を捉えた。枯れ枝を踏む足を止め、腰に佩いた剣を握る。
三日月型の細く長く裂けた真紅の片目が木々の間から迫ってきた。暗闇の中から予想外の風圧がカイトを脅かそうとする。驚くと同時に躰の部位が同時に回避行動をとっていた。
(チッ、くそ――いきなりかよッ!)
後方に飛びのいた時、マントの袖に繭糸が絡まる。着地場所が若干変わって地面に転がった。しかし視線は絶えず敵を捕捉し続けていた。
(大丈夫?)
(ああ、平気だ。それより、あいつなんだ?)
木漏れ日の弱光に照る巨大な純白の幼虫――それも粘液塗れの胴体を蛇行させている。三日月の瞳は、燃えるようにカイトを睨んでいるようだった。幼虫の口には人間の頭を齧っている途中だった。
(うげぇ、キモチわるい)
彼女は心底嫌そうに言った。思わず「だろうな」とでも言いたくなった。それほど醜悪な外見である。
「しかし、なんだってこんなのを退治しなくちゃならんのかね」
思わずぼやいた。
存外、魔獣の類を退治している瞬間は煩わしい事柄に煩わされない為、気楽なのだとどこかで思っている。そのことが口調に乗っかっているらしい。
(ふふふっ……はははは……その言い方、久々に聞いたなぁ)
甘い声で頭の裡に囁く。
どうかな、とでも答えるようにカイトは肩を竦める。
こんなやり取りが始まったのはあの時からだった。……そうだ! 〈あの時〉、それが網膜に焼き付いて離れない。呪いのようだ。また、それと同時に〈あの時〉に誓った記憶も今のことのように鮮烈に甦った。
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