異世界にいったったwwwww
支隊
運河の疎水には枯れた水草の切れ端が浮かび、船舶の船体へ容赦なく昼の陽光が落とされた。水面は銀粉を振りまいたように細かく反射した。ハミルトン率いるは凡そ七〇〇〇の精兵。彼らは堅固な守りと予想された湾流と運河の丁度合流地点を拠点にした敵軍野営の強襲に成功した。ハミルトンは元々アーロンの遠い血族に連なる男である。血縁関係から云えば、叔父にあたる。しかし、アーロンとの年齢差は僅か5歳でしかない。故に、粉飾なしの本来のアーロンと心安く語り合える数少ない人物であった。彼の他にもアーロンは大陸本土に遠い筋の血縁者を持っていたことが幸いしていた。彼らは後、アーロンの覇業を支える重要な騎士団の中核となってゆく。――が、今それを記すには稿が足らない為に話しを戻す。
「今どれほどの敵拠点を潰したのだ?」些か不満げにガルノスは嘯く。
彼は大陸の中枢で本来大戦をやっている、謂わば当事者なのである……このように悠長にアーロンの付近で傍観を決め込むより他にやるべきことがある立場なのだ。焦りが知らず知らず態度に露われはじめたのは、3日後を過ぎた辺りである。
「ご不満ですか?」
風采のよい、爽やかな笑みを零す隣の青年へ苦々しい視線を向ける。
「貴殿のように余裕綽々でありたいものだ」
幾分皮肉を滲ませ、手入れを忘れた髭をゆったり撫でつける。とはいえ、この数日の戦果で言えば寧ろアーロン軍は異様な速度で国内の反乱分子を壊滅へと追いやっている。例えば、国衆(地方豪族、地方貴族なども含む)の連合を壊滅に追い込むため、電撃作戦や、通常は忌み嫌われる2正面作戦をやってのけた。まず、国内の行政を司っていた最大都市を多量の兵の人海戦術で攻略し、同時にこの河川へ強襲した。方面軍の人材も豊富であり、決断と行動が早いアーロンの采配は目に見えて成果をあげた。
……とはいえ。
アーロン軍の基本は反抗する人々を容赦なく虐殺することを旨とした。
例えば当時といては普通の通行する軍隊へ近隣の村々が上納行為を行う。これはどこの国でも場所でも良くある事である。が、アーロンはこれを苦々しく思い、敵軍へと上納した村があり、それが発覚した場合には容赦なく殺戮と血の海を催した。
足元の葦の一本を摘まみ、
「今更本隊から離しがとして、このガルノスを愚弄しているのか!?」
「いいえ、そういう訳ではございますまい」
柔和に宥める、この影武者の青年は底のない闇を抱えているようにガルノスには思えた。
「しかし、安心してください。もう、内乱は終了致します」「……ほう? 勝算はあるということか?」「勝算、というより寧ろわが軍の陣容を貴殿に見ていただきたかったことが最大の理由でしょう。恐らく主は味方といて異存ない戦力か否かを実戦で判断していただきたかったかと……」
ふむ、と暫し考え込む。確かにこの若者という通りである。が、尚納得ゆかないのは血の契りを影武者と結ばされた事実。それは愚弄されているのだろう——そう勘ぐるのが当然の筋といえる。
「主は深謀を巡らせております。無論、ガルノス殿のようにとはいきませぬが」
「このように難なく揚陸できたことを考えてもそちたちの兵の質、並びに訓練他様々を推測できる。味方としては心強い」
「――では一体なにか不満を?」
「いや、よい。それよりそこらへんの死骸を処理するのだな」
敵勢の骸が小さな山を築きながら地平の果てまで点々と影を落とす。カラスや蠅が飛び回る。腐るのがこの季節は早い、其の為厄病があるかもしれず死骸は一か所へと運ばれる。その作業をする兵を眺めガルノスはアーロン軍を別支隊としてブリアンとパジャの喉元へ刃を突きつけるシナリオを戯れに想定する。
「今どれほどの敵拠点を潰したのだ?」些か不満げにガルノスは嘯く。
彼は大陸の中枢で本来大戦をやっている、謂わば当事者なのである……このように悠長にアーロンの付近で傍観を決め込むより他にやるべきことがある立場なのだ。焦りが知らず知らず態度に露われはじめたのは、3日後を過ぎた辺りである。
「ご不満ですか?」
風采のよい、爽やかな笑みを零す隣の青年へ苦々しい視線を向ける。
「貴殿のように余裕綽々でありたいものだ」
幾分皮肉を滲ませ、手入れを忘れた髭をゆったり撫でつける。とはいえ、この数日の戦果で言えば寧ろアーロン軍は異様な速度で国内の反乱分子を壊滅へと追いやっている。例えば、国衆(地方豪族、地方貴族なども含む)の連合を壊滅に追い込むため、電撃作戦や、通常は忌み嫌われる2正面作戦をやってのけた。まず、国内の行政を司っていた最大都市を多量の兵の人海戦術で攻略し、同時にこの河川へ強襲した。方面軍の人材も豊富であり、決断と行動が早いアーロンの采配は目に見えて成果をあげた。
……とはいえ。
アーロン軍の基本は反抗する人々を容赦なく虐殺することを旨とした。
例えば当時といては普通の通行する軍隊へ近隣の村々が上納行為を行う。これはどこの国でも場所でも良くある事である。が、アーロンはこれを苦々しく思い、敵軍へと上納した村があり、それが発覚した場合には容赦なく殺戮と血の海を催した。
足元の葦の一本を摘まみ、
「今更本隊から離しがとして、このガルノスを愚弄しているのか!?」
「いいえ、そういう訳ではございますまい」
柔和に宥める、この影武者の青年は底のない闇を抱えているようにガルノスには思えた。
「しかし、安心してください。もう、内乱は終了致します」「……ほう? 勝算はあるということか?」「勝算、というより寧ろわが軍の陣容を貴殿に見ていただきたかったことが最大の理由でしょう。恐らく主は味方といて異存ない戦力か否かを実戦で判断していただきたかったかと……」
ふむ、と暫し考え込む。確かにこの若者という通りである。が、尚納得ゆかないのは血の契りを影武者と結ばされた事実。それは愚弄されているのだろう——そう勘ぐるのが当然の筋といえる。
「主は深謀を巡らせております。無論、ガルノス殿のようにとはいきませぬが」
「このように難なく揚陸できたことを考えてもそちたちの兵の質、並びに訓練他様々を推測できる。味方としては心強い」
「――では一体なにか不満を?」
「いや、よい。それよりそこらへんの死骸を処理するのだな」
敵勢の骸が小さな山を築きながら地平の果てまで点々と影を落とす。カラスや蠅が飛び回る。腐るのがこの季節は早い、其の為厄病があるかもしれず死骸は一か所へと運ばれる。その作業をする兵を眺めガルノスはアーロン軍を別支隊としてブリアンとパジャの喉元へ刃を突きつけるシナリオを戯れに想定する。
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