異世界にいったったwwwww

あれ

出発にむけて

「それで大将よ。ご予定は?」




 モグラは鼻くそをほじっている。グリアは旋毛を掻き上げて苦い顔をした。後先考えない行動は常のことだが今回は事情が全く違う、憲兵に喧嘩を売り飛ばしたことに起因しているのだが……それはしょうがない事だ、と自分を納得させるグリアであった。


 「交渉する以前の話になったな。」




 横からウールドがいう。事実、目的の硝石は入手がほぼ困難となった。


 つまり、これからの出撃に命綱ナシで臨む格好となった訳である。それだけは避けたい懸念事項でもあった。




 馬車の床板と隣の樽を眺めながらウールドが口を開く。




 「――交渉はこのウールドがやる、というのはどうだろうか?」




 「どういう意味だ?」




 言いにくそうに言葉を續ける。




「……兵站補給はこのウールドが一手に担う。必ず火槍の安定した入手ルートを見つけて送る。まず、我らの商会倉庫にある在庫全てをグリアたちが輸送する……」




 「待てッ」言葉を切ったのはモグラだった。




 「なんだって、外様のこっちが危険地帯に放り投げられならなきゃイカンのだ!? 筋が違うだろ!!」


 珍しく声を荒らげた。其の為、暫しグリアの方が固まっていた。




 が、ウールドはそれに臆せず「貴殿の意見御尤もである。」


 「――しかし」と彼は言う。




 「しかし、2正面作戦という事もできまい。戦場にはもとより赴く。だが、補給ができなければ即刻死だ。避けがたいのはオレたち一派はどのみち座して待つだけでは死ぬ、が、貴殿らは違う。だから拒否したければしてくれて構わない。」




 「偉そうに言いやがって!!」




「待て、モグラ」」




 声を低く、グリアは手綱を握りながら風に目を細める。






「その話、ぜひ引き受けよう。俺の精兵五〇〇が限度だがどうだ」




 その発言に思わず「エッ」とモグラが叫んだ。当然である、虎の子の五〇〇は言わば砦陥落でも生き残った猛者たちでグリアに個人忠誠を誓った兵士なのだ。その命はグリアの判断一つでどうにでもなるのだ。




 「すまない、今用意できる火槍の数は三〇〇が限度だ。それで全部だ。」




 「交渉はどれくらいかかる?」」


 「大体一二日、それだけあれば完璧だが……問題は輸送だ。簡単に輸送なんぞできない。」




グリアは大きな背中を丸めながら、


「いや、いい。お前に全てをかける。ただ、商会から兵士を連れて行ってもいいか? さすがに輸送で五〇〇はキツイ」




 ウールドの派閥の動員できる兵数、凡そ三〇〇である。合わせても千にも満たない。




 「やるしかないな。海運は誰に任せればいい?」




 ――いいやつがいるぞ、とモグラがひらめいた。




「グリア、お前に心酔したバカな船乗りの坊主がいる、あいつは中型の船舶の航海士もできるらしい。あの坊主にしよう。」




珍しくウールドが「まさか、そんな……」と狼狽を隠せずにいた。




 海運の船乗りの人身を掌握してい、また忠誠を誓っているのはウールド、その人だけだと思っていた。それは当然の心理的帰結ともいえた。






「分かった、交渉してみよう」




 しかし、表情を直しすぐさまウールドは仕事の事だけを考えた。






 2






 少年は高熱と汗にうなされていたが、早急な止血と、壮一からもらった医療器具でなんとか急場をしのいだ。しかし、体力が元からないため峠を越したとは言えない。安静にさせてやりたいのだが、馬車を直ぐに停止させることもできない。






 モグラは戦場での経験からそれなりの危機を乗り越えた自負がある、手際よく処置してゆく。血に染まった包帯からも分かる通り、血の色がどす黒い。このまま衰弱する可能性の方が高い。




「さて、どうしたもんかな。バザールまであとどれくらいか?」




運転手はウールドに変わっていた。


「あと30マリ(1マリ=6キロ)だ。」






微妙だな、と眉を顰める。それだけの時間、果たして妨害を超えながら治療ができるだろうか? まず、時間的に不可能だろう。






グリアは追手を避けての馬車の運転に疲れて横になっている。連日の心労(交渉の用意、及びガーナッシュ本国の謁見など)が積み重なったようだった。「さて、困りましたな」と嘆息したモグラは夕日を浴びた大地を後部からみた。










 

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