異世界にいったったwwwww

あれ

パジャという男

  パジャという男は同時代人の中でも、恐らく最もその能力に於いて完璧ではないだろうか。この時代を語られる場合、殊に歴史学者は殆ど口を揃え「彼は天才ではなく天災であった」という。




 なるほど、それも一理である。






 が、実際彼の業績を見るに道徳的に看過されるべきモノでないにしても経済、政治に於いては無類の能力を発揮し、余技として軍事を司ったに過ぎないという印象を筆者は思う。








 彼の業績の一端を披瀝したいと思い、今稿を記す。








 未だ、若きパジャ20代後半の頃――。彼の祖国は砂漠とオアシスの丁度中間にある地方の一行政官として王朝から出向した。当時、このハンザ地区(祖国は王朝に討伐される以前のことで、以後は地区となった。)は先進国から徐々に凋落し、少子高齢化の激しい社会構造となっていた。その一因に戦争、国外脱走者の増加。この地区は調査官僚が匙を投げるほど、実例では数十年再建不能との判断を下された。パジャは幸い、戦争前から王朝の宮廷学校に身を置き、且つ祖国の人脈で会戦の回避を模索していた。なんと学生の身分で、である。






 しかし、その枯れた祖国の風土を派遣されてから三ヶ月で絶望した。己の精密な調査の結果確かに再建不能と判断せざるを得なかった。……普通の方法では。






 『我が主、謹んで申し上げます……』という書き出しで始まるパジャの財政再建策は直接皇帝へと直訴状として送り届けられた。今日でも名文として誉れ高い。




 この直訴状を読んだ皇帝はすぐ、パジャの権限を全て与えた。が、それだけではなく彼の同期でライバル官僚を監視として送った。無論、ハンザから税を搾取する目的で……。








 こうして、祖国の国土回復にパジャの改革が始まった。






 まず、彼が手をつけたのは税制改革である。それまで物品にかかっていた税、及び貿易税の免除。更に、交通の要所であることが幸いし、それまで交通税を搾取していた部分を切り下げ交通量を増やした。






 更に働かない労働層が人口の15%に及ぶこと、それに伴い出生率などの低下を看過することはできなかった。普通のやり方では解決できない。彼の打ち出したのは、まず十五歳以上の男子が労働を一日以上就かない場合、それを扶養する人間の通常税収に加え、更に年収50%の課税。「非労働税」の導入であった。それをクリアしても、今度は労働者でありながら、婚姻関係にない人々に「未婚税」であり、通常の税収に加え、年収の40%の徴収。更に、婚姻でありながら子供ができていない家庭には「非子供税」の導入。通常の税収に加え、30%の徴収。




 しかし、これを一つずつクリアするたび、年収の15%程の経済関係の費用免除が行われた。また、子供が3人以上の家庭には報奨金の支給を開始した。ただし、財源は既得権益などや、財源蓄えのある階級の人々の相続税の100%徴収であった。




 身寄りのない人々を生産階級にするため、更生施設の維持費にも国家予算の30%を使い、労働先も規律正しい監査がはいった。




 役所は従来の倍以上の増員を図った。








 最初、この改革は民衆の反発を招いた。が、パジャの独裁制作は容赦なく弾圧を加えられた。人々は恐怖した。密告を奨励した。連帯責任を家族一族単位で課した。国外逃亡を厳しくした。




 反抗者は処刑した。殆ど、娯楽に飢えた人々は毎日の日課のように処刑を愉しんだ。街中でも、食事をする為の憩いの場でも、どこでも処刑をした。絞首刑、斬首、投石。一応、法律と宗教の戒律に則り執行した。しかし、殆ど人々のストレスのはけ口として、処刑された。学者も、貴族も、貧民も、役人も。皆処刑場では等しい平等社会の楽園を構築していた。その周りをリンチの為の民衆が群がる。




 あまりの首塚の多さに、メインストリートには一時期塚に埋葬しきれない首を列にした線ができたという逸話ができた。


 とはいえ、パジャの目論見は5年後以降数字で現れ始めた。まず、出生率が倍増という形で。更に、それ以前から労働場所の確保を迫られる自体に陥った。この為、ビザを発行し、信用できる民衆を積極的に国外労働者とした。これに付随し、ハンザの人々のナショナリズムの高揚を図る宣伝広告戦略を打ち出した。








 かくしてパジャの在任期間9年ほどでハンザは良くも悪くも変貌を遂げた。






 人口が豊かな、人々も愛国者の多い、そして何よりパジャという男への礼賛をする集団の完成をみた。流石にこの状態を許す訳にも中央集団はゆかぬ。かくして、中央政権へとパジャは出世を果たした。これが、彼の目論見であった。宰相各が彼の目的であったのだ。






 部下が、ハンザを離れるパジャに別れの言葉を告げると、




 「だいたい、行政の要領は理解できた。また、実験だ。」と鳶色の目が光ったという。








 徹底した合理主義者である。

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