異世界にいったったwwwww
馬⇒外伝1に
「――き? おい、真希。大丈夫か?」
軽い眩暈を覚えながら、真希は茫とした視界に父の像を結ぶのに暫しの時間を要さねばならなかった。
「ん、お父さん? あれ? 私どうして?」
覚えてないのか、と壮一は落胆したような、安心したような声でいう。後ろにザルが険しい目つきで荷台の布の隙間を窺っている。
「ねぇ、私?」
すると、ザルが外界を見つめながら背中で真希に応える。
「連中、イーターの野郎に意識を持って行かれてた。普通、生者にはあんまり手だしをしないハズなのにな。クソッ、あのクソ野郎ども、半分霊体だから一筋縄でぶっ殺せねぇ。チッ。」
そう言いながら、左手で槍をしっかり握っている。
「……いっ、タイ」唐突に激痛が真希の左腕に赤い筋を描いていた。
「どうした、その怪我。」
壮一は蒼白な顔になって、白い布を裂き包帯代わりに荷台にあった酒で湿らせると私の腕に流し、裂いた布で締める。
「壮一、そろそろ荷台を捨てよう。どうせ、砦にたどり着くまでには色々目立つ。あとは、検問の追っ手がいつ嗅ぎつけてくるかも分からん。」
「ああ、だがお前を載せる馬は……。」
ザルは見事な巨体である。かつて、牛に乗って戦っていた。そのことを危惧していた。が、ザルはいや大丈夫だ、とほくそ笑む。
「この馬は農耕馬の類で足が強い。オラぁくらいなら平気で載せられる。」
しかし、生憎2頭だけしか牽引している馬はいない。仮に二人乗りするとなれば速度は遅くなる。ザルを載せた馬も当然重いだろうが万が一襲撃を受けたときは、頭数が多い方が生存確率が上がる。
「――なら、はぐれた騎士団を襲うか?」
壮一は顎に手をやり短く刈り込んだ髭を触る。
「いや、もっと普通に入手しよう。」
……塩の道。即ち、経済の流動的な動脈といってよい。かつての日本でも米が通貨としての役割を果たした。また、シナ大陸でも沿岸部から山間部へと塩の価値は高まった。
一つに、保存としての価値がある。塩漬けは保存食として重宝される。また、人間は塩が必要となる。上質な塩は尚更価値が高まる。
壮一は、その塩の袋と、酒、その他の趣向品を小分けにして馬の鞍にぶら下げる。
「ザル、頼む。真希を守ってくれ。いくら霊体とはいえ、ザルが簡単にやられる訳はないだろう、何かあれば。真希。」
と、真希に肩に吊っていたAKを難儀しながらも手渡す。真希も重そうに受け取るとずしり、とした鋼鉄の現代的な〝殺意〟の結晶に目を瞠る。
「じゃあ、すぐ帰ってくる。」憂いを僅かに残した表情は真希を案じていたのだろうが、馬脚が走ると共に後ろは振り返らなかった。
「本当に行ってしまったな。」
ザルが珍しく目を点にしている。恐らく父が何者なのだろうか、と訝しんでいるのではないかと真希は類推する。それは正しかった。
「お前の父は一体何者なのだ?」
「ふっふっ。」
予期していた言葉をザルが首を傾げながら言うため、真希は吹き出した。それから肩をすくめて、
「さぁ? 私が一番知りたいかも。」
だろうなぁ、と愛想笑いでザルは手を振り、「せいぜい護衛させていただきますよ。お嬢様」
と、真希の肩に手を置き、槍の穂先を天空に刺した。イーターは通常浮遊しているらしい。真希は少し痛む腕と血に滲んだ包帯を撫でる。
「ええ、宜しくてよ。」
思い切りふざけて返答してみせる。ただ、ぼんやりと自分の血を見ながら、あの〝運命の魔女〟と名乗る女の記憶の断片が甦る。
(……エイフラムの恩人。)
真希が思案した為もあるだろうが、時間はそれほどかからなかった、とみえる。壮一は新しい馬を一頭手綱を曳きながらやってきた。壮一の爽快な笑顔に、思わずザルと真希は顔を見合わせた。
「おーい、貰ってきたぞ。」まるで無邪気な少年の叫びに似ていた。
軽い眩暈を覚えながら、真希は茫とした視界に父の像を結ぶのに暫しの時間を要さねばならなかった。
「ん、お父さん? あれ? 私どうして?」
覚えてないのか、と壮一は落胆したような、安心したような声でいう。後ろにザルが険しい目つきで荷台の布の隙間を窺っている。
「ねぇ、私?」
すると、ザルが外界を見つめながら背中で真希に応える。
「連中、イーターの野郎に意識を持って行かれてた。普通、生者にはあんまり手だしをしないハズなのにな。クソッ、あのクソ野郎ども、半分霊体だから一筋縄でぶっ殺せねぇ。チッ。」
そう言いながら、左手で槍をしっかり握っている。
「……いっ、タイ」唐突に激痛が真希の左腕に赤い筋を描いていた。
「どうした、その怪我。」
壮一は蒼白な顔になって、白い布を裂き包帯代わりに荷台にあった酒で湿らせると私の腕に流し、裂いた布で締める。
「壮一、そろそろ荷台を捨てよう。どうせ、砦にたどり着くまでには色々目立つ。あとは、検問の追っ手がいつ嗅ぎつけてくるかも分からん。」
「ああ、だがお前を載せる馬は……。」
ザルは見事な巨体である。かつて、牛に乗って戦っていた。そのことを危惧していた。が、ザルはいや大丈夫だ、とほくそ笑む。
「この馬は農耕馬の類で足が強い。オラぁくらいなら平気で載せられる。」
しかし、生憎2頭だけしか牽引している馬はいない。仮に二人乗りするとなれば速度は遅くなる。ザルを載せた馬も当然重いだろうが万が一襲撃を受けたときは、頭数が多い方が生存確率が上がる。
「――なら、はぐれた騎士団を襲うか?」
壮一は顎に手をやり短く刈り込んだ髭を触る。
「いや、もっと普通に入手しよう。」
……塩の道。即ち、経済の流動的な動脈といってよい。かつての日本でも米が通貨としての役割を果たした。また、シナ大陸でも沿岸部から山間部へと塩の価値は高まった。
一つに、保存としての価値がある。塩漬けは保存食として重宝される。また、人間は塩が必要となる。上質な塩は尚更価値が高まる。
壮一は、その塩の袋と、酒、その他の趣向品を小分けにして馬の鞍にぶら下げる。
「ザル、頼む。真希を守ってくれ。いくら霊体とはいえ、ザルが簡単にやられる訳はないだろう、何かあれば。真希。」
と、真希に肩に吊っていたAKを難儀しながらも手渡す。真希も重そうに受け取るとずしり、とした鋼鉄の現代的な〝殺意〟の結晶に目を瞠る。
「じゃあ、すぐ帰ってくる。」憂いを僅かに残した表情は真希を案じていたのだろうが、馬脚が走ると共に後ろは振り返らなかった。
「本当に行ってしまったな。」
ザルが珍しく目を点にしている。恐らく父が何者なのだろうか、と訝しんでいるのではないかと真希は類推する。それは正しかった。
「お前の父は一体何者なのだ?」
「ふっふっ。」
予期していた言葉をザルが首を傾げながら言うため、真希は吹き出した。それから肩をすくめて、
「さぁ? 私が一番知りたいかも。」
だろうなぁ、と愛想笑いでザルは手を振り、「せいぜい護衛させていただきますよ。お嬢様」
と、真希の肩に手を置き、槍の穂先を天空に刺した。イーターは通常浮遊しているらしい。真希は少し痛む腕と血に滲んだ包帯を撫でる。
「ええ、宜しくてよ。」
思い切りふざけて返答してみせる。ただ、ぼんやりと自分の血を見ながら、あの〝運命の魔女〟と名乗る女の記憶の断片が甦る。
(……エイフラムの恩人。)
真希が思案した為もあるだろうが、時間はそれほどかからなかった、とみえる。壮一は新しい馬を一頭手綱を曳きながらやってきた。壮一の爽快な笑顔に、思わずザルと真希は顔を見合わせた。
「おーい、貰ってきたぞ。」まるで無邪気な少年の叫びに似ていた。
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