異世界にいったったwwwww

あれ

 大宰相パジャは北方の賢王ブリアンに一つの勅命を与えていた。


 即ち、王都の防衛である。




 北方連合軍(実態はブリアンの軍勢と、従属する都市国家の兵)


    第一軍……天領の守護。総数約三万、大将ブリアン。 


    第二軍……直轄州の警護。総数四万、イリーツキ。


    第三軍……大規模な反乱の鎮圧。総数二万五千、ソローツキ。


    第四軍……予備兵力。総数五万、ソルジャニー。


 この将帥はいずれも、この都市国家連合、及び大陸でも屈指の名称、勇将、驍将、など綺羅星の如く鎮座する中でも一際目立つ存在であった。彼らは王都周囲の属州二三州(規模は小さい)拠点を警護する傍ら、パジャの強力な精鋭常備軍と共に、仮想敵となった獅子への睨みをきかせていた。




 当時の記録となる宮廷書記官の記録による。


 『払暁、我々と都市国家の首脳は城壁の回廊へと呼びつけられた。一体何が始まるのか、我々も眠い目をこすり我々は集合地点までやってきた。馬鹿馬鹿しいことに、その景観をみるまでどうでもよかった。――だが、正直に言おう。我が主君、パジャ閣下と賢王ブリアン殿は今や、嘘偽りなく神の軍勢を従えているようであった。大地の微妙な勾配と起伏のある丘、原野の稜線を悉く軍勢が埋め尽くしている。まるで、洪水のようだった。一糸乱れぬ姿で、新鮮な微光に照らされ、まるで黄金の鱗のようにもみえた。騎馬は巨大な旗の前に整列し、兵士は彫像の如く。招集された皆、首脳はその威風に息を飲む。最早、これに対峙する者なし……と。』






 噂ではその数一五万とも二〇万とも言われた。だが正確な数字は今日までわかっていない。それよりも重要なことは、この数の兵が本当に北方の兵であるかという疑念である。




 これには、一応の説がある。まず、征服した後の北方諸国から無理やり徴用したケース。しかし、それでもこの夥しい数には繋がらない。となると、各属州からの急増した徴用と見るべきか? 


 ここに、面白い資料が存在する。それは、戸籍である。中原では早い段階から戸籍を重要視した。共同体を徹底して調べ上げさせた。それは税収に直結するためである。この税は無論軍役もある。当時、中原では大規模な戦災、天災、疫病の蔓延により、大規模な餓死者が続出していた。無論、国庫を開き、救済する手立てもある。……が。パジャはこの時戸籍謄本に目をつけた。


 どの時代でも、飢饉が起こる場合、人口が爆発的に増える。となれば当然口減らしが必要となる。


 当時、やはり豊富な穀倉地帯は中原より南方の州であったり、あるいは遠州の半分であったり、と誠に限られた土地であった。いや、正確には中原もゆたかな地であるが、いかんせん人が溢れた。賄いきるには他国の侵略が必定であった。




 また、アテが外れても余剰な人間は減る。




 そんな冷徹な思考がパジャの脳裏を一瞬で巡り、実行した。当然、時間もない。


 最早、ガルノスと中原で覇を争い激突するのは目前であった――。
 

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