異世界にいったったwwwww
四十八
私の知っている限り、たった一人で手榴弾を投げて走る……なんていう行為をする人間(とくに女子高生で?)はいないだろう。どこの特殊部隊だよ、と自分でツッコミを入れたくなる。しかし、父が父なら私も私だ。何故迷わずあの命令を肯き、その侭実行してしまったのだろう。
「どうなってんのよ……。」
呟いた。馬車の運転を父に代わり、今私は荷台の方で横になっている。硬い床に羊毛の布を敷、無理矢理にでも眠る。馬車布の隙間から冷たい空気が入って来た。目が冴える。硬い大気が鼻腔に流れ込む。向かいにザルという漢が座って眠っている。正直、鼾がうるさい。外は野鳥とか、羽虫とかが鳴いている。普通だと野盗がいるからこの時間――しかも、深夜の移動なんかしない。けど、現在は非常時。父さんは肩に「AKー47」が吊っている。その横顔が見えない。暗い闇の中に沈んでいるのだ。
「……ねぇ、父さん。」
「うん? どうした?早く眠とけ。体力が持たないぞ」
いつものように陽気に応じる。しかし、どこかその返答に私は違和感を覚えた。正確な理由なんてない。だけど、その「何となく」が全く信用ならないようなモノでもないのだ。
「野盗、いないね」
「ああ――多分、あの反乱のあとの土地なんだ。騎士団やら何やらで人もいなくなって交通も疎らだと野盗もやる意味がないからな。ホレ、今も焦げた匂いがするだろ?」
「――うん。」
私はすこし体を起こして頭を振る。体内に澱が溜まっているみたいだった。
「何故、こうなった……。」
エイフラムは地下牢の一画にいた。鉄柵の守衛がアクビ混じりに「さぁ?」と肩をすくめる。全く、いい加減なところだった。さしずめ不審者として捕まったのだろう。が、彼は今ソレどころではない。
「……一つ、訊きたいことがある。」
「あ?」不満そうに再び答える。
「この辺で龍の巣があるというハナシではないか? そう、あの古民謡みたいな……。」珍しくエイフラムは饒舌だった。
「さぁ? もういいだろ。黙れ。」
冷たくあしらわれた。しかし、彼は納得できない。
先程の娘に出逢えれば……と、エイフラムはめを瞑る。
皓々とした月が一筋、牢の小さな高窓から射す。それがエイフラムの瞼の上を辷った。小さな痙攣をおこした筋肉が、酷寒の牢の温度を教える。カチカチと歯の根が浮く。
「――ちゃん、お兄ちゃん?」
聞き覚えのある声がした。ゆっくりめを開く。ぼんやりとした視界から幼い娘……古民謡を口ずさんだ子が牢の前にいた。
「この方がかぇ?」その脇に老女が佇み、口を挟む。
「うん」
「ほうか、ほうか」
孫の頭を優しく撫でる。エイフラムは不思議に口をついた。
「一体、どんな用でここに?」
不審者といえば不審者だ。当然、老人と幼児がこんな所にくるのはおかしい。理由がわからない――。
「ホ、ホ、ホ、ホホ」
ヘンな笑い方をして、老女は孫に鍵を渡す。その孫も忠実に従い鍵穴に回し、錠を落とす。はてな、とその行動を見守っていたエイフラムは開かれた空間を眺める。やおら、縛られた腕の縄を自らの技倆で断ち、軽く手首を回した。刃がなくとも、この程度を解くことはエイフラムにとって容易だった。
「すごい、お兄ちゃん。」
「……。」
敬意の眼差しにエイフラムは弱った。
「どうなってんのよ……。」
呟いた。馬車の運転を父に代わり、今私は荷台の方で横になっている。硬い床に羊毛の布を敷、無理矢理にでも眠る。馬車布の隙間から冷たい空気が入って来た。目が冴える。硬い大気が鼻腔に流れ込む。向かいにザルという漢が座って眠っている。正直、鼾がうるさい。外は野鳥とか、羽虫とかが鳴いている。普通だと野盗がいるからこの時間――しかも、深夜の移動なんかしない。けど、現在は非常時。父さんは肩に「AKー47」が吊っている。その横顔が見えない。暗い闇の中に沈んでいるのだ。
「……ねぇ、父さん。」
「うん? どうした?早く眠とけ。体力が持たないぞ」
いつものように陽気に応じる。しかし、どこかその返答に私は違和感を覚えた。正確な理由なんてない。だけど、その「何となく」が全く信用ならないようなモノでもないのだ。
「野盗、いないね」
「ああ――多分、あの反乱のあとの土地なんだ。騎士団やら何やらで人もいなくなって交通も疎らだと野盗もやる意味がないからな。ホレ、今も焦げた匂いがするだろ?」
「――うん。」
私はすこし体を起こして頭を振る。体内に澱が溜まっているみたいだった。
「何故、こうなった……。」
エイフラムは地下牢の一画にいた。鉄柵の守衛がアクビ混じりに「さぁ?」と肩をすくめる。全く、いい加減なところだった。さしずめ不審者として捕まったのだろう。が、彼は今ソレどころではない。
「……一つ、訊きたいことがある。」
「あ?」不満そうに再び答える。
「この辺で龍の巣があるというハナシではないか? そう、あの古民謡みたいな……。」珍しくエイフラムは饒舌だった。
「さぁ? もういいだろ。黙れ。」
冷たくあしらわれた。しかし、彼は納得できない。
先程の娘に出逢えれば……と、エイフラムはめを瞑る。
皓々とした月が一筋、牢の小さな高窓から射す。それがエイフラムの瞼の上を辷った。小さな痙攣をおこした筋肉が、酷寒の牢の温度を教える。カチカチと歯の根が浮く。
「――ちゃん、お兄ちゃん?」
聞き覚えのある声がした。ゆっくりめを開く。ぼんやりとした視界から幼い娘……古民謡を口ずさんだ子が牢の前にいた。
「この方がかぇ?」その脇に老女が佇み、口を挟む。
「うん」
「ほうか、ほうか」
孫の頭を優しく撫でる。エイフラムは不思議に口をついた。
「一体、どんな用でここに?」
不審者といえば不審者だ。当然、老人と幼児がこんな所にくるのはおかしい。理由がわからない――。
「ホ、ホ、ホ、ホホ」
ヘンな笑い方をして、老女は孫に鍵を渡す。その孫も忠実に従い鍵穴に回し、錠を落とす。はてな、とその行動を見守っていたエイフラムは開かれた空間を眺める。やおら、縛られた腕の縄を自らの技倆で断ち、軽く手首を回した。刃がなくとも、この程度を解くことはエイフラムにとって容易だった。
「すごい、お兄ちゃん。」
「……。」
敬意の眼差しにエイフラムは弱った。
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