異世界にいったったwwwww

あれ

大陸歴1300年代後半……大陸誌史記を閲するに、まず、都市会議と五制の撤廃が中世における戦乱の要因だと一般的には思われた。
 ここで、ある歴史学者の言説を引用する。
 「私が思うにそのことは大きな要因であり、原因とはいえない。では、一体何が戦乱の原因だった……とするのか。そのうちの一つは宗教。もう一つは街道などの交通整備などの急速な国家と国家とを繋げたことが原因だと私は思う。」
 面白いことに、彼は本来歴史学者ではなくて生物学者として活躍していた人物であるからだ。彼の言葉をもう少しとるなら、「国家は熱膨張よりもむしろ、アメーバ状の生物の広がりに似ている。それゆえ、外的道路の繋がりと宗教という内的な二つが一致した瞬間だ」という。
 当時の学会においても、彼の置かれた位置がいかに特異であるかが理解できる。尤も、弾劾の憂目にあったのだが。








 さて、本稿を物語に戻す。
 この当時、我々は大陸の中原に目を移さねばならない。


 《蘇》という国が大国であることは以前書いた。では、その他の近隣国家はどうであるか? これを簡単に述べたい。
 まず、平原は我々で言うところの日本の関東平野であり、中国では海岸部分の平地、あるいは、欧州におけるドイツの開けた部分など、恵まれた土地である。
 畜産をはじめ、穀物などの農業、さらに交通の利便性を備えているため、大型都市国家群はこの平原に大量に集結した。さらに、文明の母である大河が中原の真ん中を貫いている。


 ……かつて、この中原を一時的に統一されたことがあった。それは今から数百年前の事である。


 その統一〝王朝”の俗称は黄金ゴールドである。なぜ、俗称を用いたかといえば、この王朝は様々な呼び名があり、統一されておらず、また研究によって様々な議論がある。それを避けるため、敢えて当時の人々の用いていた呼び名を用いる。
 そのゴールド王朝は、中原より離れた山岳部族の連合であった……という。その連合部族の族長であった族長は、その勇猛なる武力により次々と屈服させたという。
 都市国家連合もまた、同盟を組み、一丸となって戦った……というなら美談である。しかし、人間の世の中は醜い。彼らは必ずしも一枚岩でなく、都市国家どうしで裏切り、殺し合い、騙し合い、まるでらちがあかない有様であった。
 この当時、魔術師契約もまだ未熟であった。それゆえ、簡単に都市国家は内外要因で崩れ去ってゆく。当然といえば、至極当然の結末である。そのおこぼれに与るように、族長は降伏した都市国家を従え、中原初となる統一王朝ゴールドの名を掲げた。
 なお、この歴史はあまりに血なまぐさく、歴史編纂の文官の苦労も忍ばれる。その一例に、降伏した人々を生きたまま生の皮を剥ぎ取り、それを城壁に貼り付けた……あるいは、身内同士で殺し合わせ、生き残った者同士で殺し合わせ、それを肴に酒を飲む、などあまりに過激な内容である。
しかし、かのゴールド王朝もまた、長くは続かなかった。なぜならば、初代の統一した大帝が死去した直後、反旗を翻す時期を見出した都市国家たちの矛の前にあえなく敗れ去ったのである。
 王朝は僅か三〇年という短いものであった。しかし、悪いことばかりではなかった。当時、都市国家同士は別々の言語や文字を用いていたが、この王朝時代、共通言語と文字を作らせた。これが一番の功績であろう。
 また、同様に膨大な歴史編さん事業、治水、などを行った。それは、ひとえに王朝時代の優秀な一部の人間による発案であろう。
 民の暮らし向きは最悪であることは、王朝もそれ以前も変わらないと記されていた。
 重税、労役、飢饉、これらは常に市民を悩ました。
 つまるところ、誰が主権者であろうと、民は変わらないのである。
 ゴールド王朝を過ぎ去った後、魔族契約を引き下げ主権者として帰り咲いた〝都市”という御旗を掲げた連中は小躍りをして喜んだに違いない。








 が、それを
 「クソッタレどもさ。」




 そう語りながら、鼻で嗤いモグラは真希へ説明の途中吐き捨てた。彼は、どうやら元来の無政府主義者であるらしい。
 長い旅路による疲れと、空腹で呆けた頭を整理しながら、真希はうなずく。背中の赤子は幸い、雑踏や喧騒に煩わされることなく眠っていた。
 (あっ、よかった。眠ってくれてる。)
 ホッ、と彼女は胸をなでおろした。

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