異世界にいったったwwwww

あれ

48

イヴァンは、ようやく起き上がると、しばらく地面に座った。 
「すまない、水を持ってきてくれ。」 
近衛兵が持ってきた柄杓に入った水を貪るように呑む。 
一息つくと、 
「いま、我が軍はどうなっている?」
 「ハッ、只今情報が錯綜し、私が知る限りでは、数人の将が帰っておりますが」 
「そうか。わかった。おそらく、今、深手をおっているのだろう。」 
近衛兵は固い沈黙でこたえた。
 イヴァンは、尚蒼白な顔で、衰えたように両手で面を覆う。 
本陣に新たな人の氣がする。「やあ、大変だな。」炎の魔術師であった。彼は、厳しい骨格と、それを包む隆々とした筋肉と褐色の肌。レーザーアーマーを着込んでいた。
「なんだ、何しに来た?」ハッ、と馬鹿にしたように鼻をならす。
「もういいだろ? 今からでも魔術で砦を制圧してくる。」がばっ、と立ち上がり、
「ま、まて! まだだッ! こんなに、わざわざ遠征軍を利用できたのに……なあ、待ってくれ!」
「……では、こうしよう。敢えて非戦闘員だけを襲う、というのは……」イヴァンは「しかし」と口調を弱く抗議した。だが、それと同時に、この発想が魅力的に思えた。「
どうしたらよい、もう……」
こんな時、もし自分をかばった武将がいれば、と後悔が脳に群がる。あの瞬間、少しの門の隙間に走り込まねば……いや、あるいは、忠告の折に撤退すべきだったか……。
「よし、わかった」もし、自分が、あの時……そう、全て、全て自分の行為の責任である。イヴァンは思索の森を突き抜けた。
「君、炎の魔術師よ。君は援軍でなく、あくまで“鎮圧”としてやるんだ。いいか、援軍じゃない。いいか?」
床机に上半身をおろして、ペンをはしらせる。この期に及んで、悩んでいる。だのに、方法は限られている。
イヴァンは、静かに、炎の魔術師へ、命令用の紙を渡した。そこには、一時的に別行動を許す旨が記してあった。
「あんたは、いい主君になる」
イヴァンははじめて笑った。自分がいい主君……その結果、肢体を強いひかりに切り裂かれた己の武将たちという結果なのだろう。イヴァンは、
「そうだ、自分はいい“主君”だ。」
そのニュアンスが皮肉に満ちており、炎の魔術師は、苦笑いした。
「では」と短く挨拶すると、焔が彼の周囲の大気の色を変化させ、卵型の炎に包まれた。イヴァンの左手は強く握られていた。

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