異世界にいったったwwwww

あれ

35

しばらく走れないため、痛む体を励ましながら歩いていると、強烈な光線が目の前を横切った。
 真希は思わずヒッ、と体を硬直させた。 
「真希? おお、いたいた。お前、こんなところで何してる?」
 聞き覚えのある……父のソレであった。 
「父さんこそ何してるの?」
 転んだ羞恥を隠すようにわざと声を怒らせる。 
「ん? お前、腕時計型のソレ、補給物資がきたんだよ。だから取りに来たんだ。これを受け取りに来たわけじゃないだろ、お前。」 
泥に汚れた彼女を上から下まで眺めていた。
 「まあ……友達を探してた」
 「友達? ほぅ、そうか。よかったな。学校で一人もできなかったお前がなー」 嬉しそうに笑う壮一が、癪に障ったようで真希がすかさず「うるさい。」と呪文のように何度も唱えた。
 思い出したように真希が、 
「今日は、その友達のところにとまるから、いいでしょ?」
 「ああ、いいぞ。ん? あ、そうだ。ほれ、お前の分の補給物資だ。」
 そう言われると、壮一が引きずっていたキャリーバッグが真希の足元に投げられた。 
「もう、丁寧にしてよ」
 と、文句を言いうと、 
「いいじゃないか。初めてのお泊まり会だろ? 餞別だ。」 
耳を真っ赤にして、 
「うるさいっ! んじゃ、もう行くから」 
キャリーバッグを引きずってまた走り出す。
 壮一は、どこか儚げに、微笑した。








バックから懐中電灯を取り出して使う。
 文明の利器とは切実に必要だと感じたのも、異世界という環境のためだろか、真希は、光を振り回す。 
すると、きゃあ、と短い悲鳴が聞こえた。 耳を澄せて、すかさずその方に走り出す。
 「あっ、ナターシャ!」
 叢にナターシャが佇んでいた。
 鈴虫のような鳴き声が耳にこびりつく。 
「どうして逃げ出したのさ。お陰で転んで最悪だよ。」 
ナターシャがすかさず、 
「すいません、すいません、あのわたし」 
「違う違う。だから、なんで逃げ出したの?」
 「……。」
 なにも語りたがらない顔に、真希は腹が立ちはじめた。 
「ねぇ、私はそんなに信用できないかな?」 
「……っ、そんなことは!」 
「だってそうだよ。なんで逃げるの?」 
「それは、あの、なんというか、真希さんには関係ないので、迷惑かけられないと……」 
「だーかーらー! まだそんな年してなんで、そんなに達観してるの? おかしいよ。」 
「――ッ、年は関係ないはずです!」
 「あるよ、変だって、なんでそんなに頑張ってるの? まだ子供じゃない」
 瞬間、ナターシャの形相が変わった。怯えたように弁明していた顔が、何かに取りつかれたように、足を素早くバネのように跳ねて、真希に突進した。
 「――――ッ、げぇほ、げぇほ」
 見事に真希の鳩尾にナターシャの突進が当たった。 
崩れるように地面に二人は倒れた。 
「ッ、痛い痛い。どうしたの?」 ナターシャは真希に馬乗りになって、尚も胸の辺りを叩く。 
甘栗色の緩くウェーブした髪の毛も垂れて顔を覆い表情がつかめない。 
しばらく、真希が両腕で防いでいると、ナターシャは嗚咽をはじめた。
 叩いていた腕を止めて、肩を痙攣させた。
 真希は頭を上げて、顔を近づける。
 ナターシャは、人一倍大きな瞳に涙を溜めていた。唇を必死に噛み締めている。 「どうしたの? ごめん、なにか悪いこと言っちゃった? ホントごめんなさい。」 
痛む鳩尾をさすりながら、ナターシャを眺める。










 「……すいません。こんな、乱暴なことを、すいません。それでも、それでも……。」
 静止した体勢で、疲れた様子だった。
 「もしかして、私が子供とか言っちゃったから? だよね。」
 静かに彼女は頷く。 
「ごめん。無神経だった。ほんと最悪だな、私。」 
今度は、首を横に振る。 
「違います。違うんです。」 
「あの、よければさ、私に話してくれる?」
 また、彼女はしずかに了解を示す。






 「あの、粗茶ですが……」
 と、差し出された器はお世辞にも立派とは言い難く、ひび割れており、壊れかけている。
 二人は取っ組み合いの後、とりあえず、落ち着かせて、第三居住区のナターシャの家にいった。



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