異世界にいったったwwwww

あれ

34

「へー、宿舎って、結構地味なんだね、それに、馬小屋が数すごいし。あっ、ガルバさんだっけ? そのお宅ってどこだっけ?」
 細長い連なって建った家々を眺める。数はざっと見ても数百戸であろう。整然と立ち並んでいる。
 ふぅ、と重い農具を地面に下ろして、肩を揉んでいた真希が、やかましく喋る。 「えっと、あの奥のあそこです。」 
ナターシャが指さした方向は薄暗くて見えないが、適当に相槌をうち、向かった。 そして、扉を数回ノックすると、熊と見紛う程の大男が、髭面を掻き毟り、出てきた。彼がガルバという男だろう。
 真希は、思わず、ナターシャの背中に隠れた。父以外で他人の背中に隠れるのは、それほどまでに他人を信用しているのだと、自ら確信した。
 ……とはいえ、年下の少女であるが。 
さて、当のナターシャは、赤ん坊で慣れているためか、真希が背中にいることに言及せず、敢えて黙り、かつ、優しく自らの肩におかれた手を重る。 
「あの、今日も妹を預かっていただくために参上いたしました。ご迷惑でなければ、よろしいですか?」 
ガルバは難しい顔をした。しばらく扉の付近で三人は固まっていた。すると、家の内部から小さな幼児たちが、ガルバの太い足元に絡みついてきた。 
「あんたたち! こら、なにしてるの」と叱る夫人の声が漏れた。
 ようやく思い出したように、ガルバは赤子のアーノを受け取りつつ、数回頷き、二人も家の中に入るように合図した。
 しかし、あくまで申し訳なさそうに「すみません、これから用事があるので」と、どこか他人行儀でナターシャは背中に引っ付いた真希を振りほどき走って去ってしまった。
 真希はしばらく呆然としていたが、やがて現状がどうなったのか探るようにガルバに問うた。 
「あの、どうしてナターシャはあんなに他人行儀なんですか?」と。 
臆面もなく聞かれたガルバとしては、また更に難しい顔をするより他ないのであった。 
それを見かねた夫人が助け舟を出すように、簡単に真希に説明した。
 曰く、ナターシャは、元々奴隷として売り買いされていたこと。そして、その市場に出る前、黒馬のグリア率いる若い連中が大暴れして結果的に奴隷の解放に繋がったこと。
 たまたまナターシャと妹の檻を開けたのがガルバだったこと。それが縁で、この砦に来てから、昼間は労働をしながら妹の面倒を見て、夜は、ガルバと夫人に預け、また朝になると、引き取りに来ること。
 しかし、なにか真希の胸に引っかかりが残った。 
それは、ナターシャの人間との関係性である。もう少し、甘えても馴れ合っても良いはずだ。まだ年端もゆかぬ少女らしくない。それを夫人に聞くと、また夫人も困ったように「実は私たちにもまだ心を許してくれない」との旨を喋った。
 なるほど、どこか納得した。だからこの無口なガルバという男も困っていたのか……と。


そしてガルバと夫人に礼を言うと真希は急いでナターシャの後を追いかけた。
 真希はナターシャのあとを追う途中、管理の男達に顔を見せて、どこに行ったかを問うた。 
「ああ、急いであの子はどこか行っちまったけどどうした?」
  初老の役人が真希に訊ねた。
 「いえ、あのすいませんでした。」 
 頭を下げると、真希は走り出した。

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