異世界にいったったwwwww

あれ

29

 3マリの道のりを歩き、北側の門を出た。すると、作物類を育てる巨大な田畑が大地の一面に敷き詰められていた。 
真希は、最近歩きっぱなしが多く、靴擦れを気にしながらも、感嘆する。
 「どうです?」
 とパプキンが誇らしく胸を張る様子が、おかしく、つい、真希は笑う。 すると、彼も咳払いをしながら、一緒になって笑う。


 (ん? あの子は……。)


 遠くに、赤ん坊を担ぎながら畑を耕すため、農具を振るう少女がいた。年の頃は一〇歳位だろうか? とにかく幼い印象を受ける。
 「あの、あそこで働いているのも……。」
 「ええ、元奴隷です。子供の奴隷は結構な値段で売れますからね。しかも女だと、引く手あまたらしいですよ。」
 「……。」
 頭では理解していたし、それは自分のいた世界でも同じだった、と真希は必死に言い聞かせる。 
だが、異世界でも人間のやっていることは変わらない。 人が人をつかう、家畜であった時代。 
「あの、私ここからひとりでもいいから、案内ありがと。」
 そう言い残すと、少女のもとまで駆け出した。 
パプキンはため息をついて、砦の内側に帰った。




ザッ、ザッ、と乾いた土を必死に農具で掘り起こす。その度、手のひらにできた血豆が潰れて、またその上に血豆ができる。手の骨が見えかけていた。
 農具の掴んでいた部分は、赤黒く染まっていた。 少女はしばらく俯いていた。 「あ、あの少し時間いい? あっ、やっぱり今忙しいよね? ごめんなさい。」 真希は息を切らせながら早口で言う。
 彼女の接近を気がつかなかった少女は驚きで瞳を見張り、それから泣き出すように、その場に崩れ落ちると「すいません、すいません」と、懸命に懇願しだした。 「えっ、あ、あの悪かったのは私の方で……。」 
少女はなおも蹲り、震えていた。背中に背負っていた赤ん坊も目を覚まし、泣き始めた。 
(えっ……どうしよう……!)
 パニックになった。まるで傍から見ると、自分が彼女をいじめているようではないか! 
と真希は心中で吐露する。 
(ええい!) 
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
 呻きのような、呪詛のような声――。 
まるで、全ての絶望を集約した震え。
 意を決して、
 「あのさ、これ食べてよ。」 
真希はしゃがむと、少女に板のチョコレートを差し出す。 腕で覆っていた少女は、顔をその方に向ける。 
しかし、尚も訝しんだ様子であった。
 「あのこれ食べ物で、ええっと毒とか入ってないから。」
 実演がてらチョコレートを一欠片割ると、真希はいかにもうまそうにくう。 「……。」 
「もう、とにかく立ち上がって。ほら。」 
少女の腕を真希がとると、立ち上がらせ、膝の土を払ってやると、その手にチョコレートを押し付けた。 
「赤ちゃんも泣いてるし、あの、だから」
 どうみても慌てた不信な真希をみて、クスッ、と少女が笑った。
 「……いただきます。」
 「あっ、どうぞ。」
 少女もまた、先ほどを真似るように一つの欠片にすると、口に含んだ。 「おっ……おいしい。」
 頬が徐々に緩む様子に、とりあえず真希は安堵した。それから、なにかいいことをしたような充実感を得た。
 「ホント? よかった。マズイって言われたら、もうなにもないからね。あっ、でもお仕事大丈夫? ごめん、邪魔して。」 
ゆっくりと咀嚼のおわった少女が、急いで手を振り否定した。
 「いえ、もうお昼なので、大丈夫です。」
 「ああ、そうなんだ。私もお腹減ったし、えーっと」
 ポシェットを漁る真希がまたおかしいらしく、赤ん坊を背中であやしつつ、少女はクスクスと笑う。 
「あっ、あった。この乾パンマズイけど、仕方ないし。あっ、どうせだったら、一緒に食べない? 私色々あるし。マズイけど。」
 その言葉に驚愕して、よろしいのですか? と問いかけた。 
「うん。食べようよ。」 
真希は心中、ぼっち飯や便所飯を卒業するのが異世界の年下になるなんて、と余りの可笑しさに気分が高揚してきた。 
(そういえば、人とご飯食べるの何年ぶりだろう?)
 彼女の脳裏に瞬間、よぎった。 

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