異世界にいったったwwwww
19
もう朝日が空に現れていた。
広大にのびた畑の列が、村の遠くからも見受けられる。
モグラに会いにゆくため、壮一とエイフラムが村の近くの教会に入った。
「なあ、エイフラムさん。質問なんだが、モグラさんとは、どんな人ですかな?」
「……会えばわかります。」
そう言うと、二人は門を潜った。
教会の中に、長椅子がいくつもあった。
祭壇の近くに坐した男がある。 異様に巨大な背中。黒い布切れを羽織っている。
「む、きたか!」
異常に甲高い声だった。
「……やあ、ブラモン殿。久しぶりです。」
振り返った《モグラ》は、ひたいが広く、眼がギョロりと飛び出し、分厚い唇の、長身な男である。
その彼は、盛大に笑う。
「なに、他人行儀はよくない。いいかね、君たちがワシのことをモグラと呼んでいるのは知っている。だが、よい。いいかね、それ程ワシの徳がある証拠だろう。ん? 違うかい。」
ああ、そうだと、エイフラムは適当に相槌をうつ。
「ところで、モグラ殿。実は」
モグラは右手をあげる。
「なに、大丈夫、ワシと兵隊が君たちに合流しろというのだろう。違うかね?」 「……まあ、そうです。」
布切れを翻すモグラである。
「この、先祖伝来の甲冑、そしてこの闘志!」
わかりました、とため息混じりに頷くエイフラムを横目に、壮一は苦笑いした。「ところで、その隣の方は?」
「あ、私は壮一です。」
「フム、わしはブラモンだ。いや、モグラでよかろう。」
エイフラムはモグラに声をかける。
「ところで、我々に支払えるみかえりは少ないです。何をおの望みますか?」
よし! と膝をうつ。
「ワシは黒馬のどれかの家紋が欲しい。いや、返してもらう。いいかな?」
呆れた顔だったエイフラムは、しかし、
「わかりました。ですが、一つ、兵力はいくつありますか?」
「ワシは、そうじゃな。七十の農奴たちだ。それにワシの弟にこの土地を譲る故、心配もなく戦をできるぞ。それと……。」
巨大な頭を教会の天蓋に向けた。小さく長い鼻が、あだ名とおりのモグラを連想させた。
「君らはいやかもしれんが、いいか。盗賊団のいくらかも君たちに協力的だ。」 (壮一、どうだ? どこまで兄上に伝えれている?)
エイフラムが隣でトランシーバを使う壮一に横目で見る。
しかし、彼は指で円をつくり、笑顔である。
大体話の筋を概要としてグリアに伝えているようだった。その雰囲気を察したエイフラムは、
「……ええ。我々も願ったり叶ったりです。して、兵力は?」
「ああ、百五十くらいだ。連中はどれくらい兵力を出す?」渋い顔だったが、「……約五千は確実でしょう。」ギョロ目をくるりと、回す。
「ムゥ、面白い。いいぞ! それでこそだ!」モグラの家に壮一とエイフラムは招かれた。天気の良い昼の頃だった。
巨大な穀物庫を過ぎた二人は、モグラのアジトである床倉庫に入っていった。 「ここだ。座ってくれ」
ランプを一つおかれた丸テーブルを中心に丸太の椅子がある。 二人が席につく。
「しかし、大変だな。五制と都市会議が立ち消えて早くも数十年。なんとも、世の中は動いとるのう。ああ、そうか。七〇年昔に《甲》が滅びた。」
木質の戸棚から壺を持ち出した。 中身は蜂蜜である。
それを美味しそうに、モグラは長い鼻先に蜜をつくのを避けるように、ぺチャりと舐める。
頬を赤く染めつつ、分厚い唇の隙間から吸う。
「おっ、君たちも欲しいか? うまいぞ」
泥に汚れた腕を壺に突っ込む様子と、それをベロベロと唾液で満たす彼に、二人は拒絶の顔を表す。
「そうか。」
また、嬉しそうに、ニコニコと舐める。
「……都市会議の後、様々な同盟が結ばれたり、破られたり。動乱も、各地であります。モグラ殿、あなたの救援はありがたい。」
「ははは、よいよい。まあ、どうだ。」
戸棚から、酒をとりだした。瓶の口から直接グビグビと飲む。
ホレ、と瓶をエイフラムは促される。
「……では。」
蜜と唾液に汚れた瓶の口から酒を飲む。
(意外と彼は酒に強いのか。)
壮一は全く関係のない感想を持った。
広大にのびた畑の列が、村の遠くからも見受けられる。
モグラに会いにゆくため、壮一とエイフラムが村の近くの教会に入った。
「なあ、エイフラムさん。質問なんだが、モグラさんとは、どんな人ですかな?」
「……会えばわかります。」
そう言うと、二人は門を潜った。
教会の中に、長椅子がいくつもあった。
祭壇の近くに坐した男がある。 異様に巨大な背中。黒い布切れを羽織っている。
「む、きたか!」
異常に甲高い声だった。
「……やあ、ブラモン殿。久しぶりです。」
振り返った《モグラ》は、ひたいが広く、眼がギョロりと飛び出し、分厚い唇の、長身な男である。
その彼は、盛大に笑う。
「なに、他人行儀はよくない。いいかね、君たちがワシのことをモグラと呼んでいるのは知っている。だが、よい。いいかね、それ程ワシの徳がある証拠だろう。ん? 違うかい。」
ああ、そうだと、エイフラムは適当に相槌をうつ。
「ところで、モグラ殿。実は」
モグラは右手をあげる。
「なに、大丈夫、ワシと兵隊が君たちに合流しろというのだろう。違うかね?」 「……まあ、そうです。」
布切れを翻すモグラである。
「この、先祖伝来の甲冑、そしてこの闘志!」
わかりました、とため息混じりに頷くエイフラムを横目に、壮一は苦笑いした。「ところで、その隣の方は?」
「あ、私は壮一です。」
「フム、わしはブラモンだ。いや、モグラでよかろう。」
エイフラムはモグラに声をかける。
「ところで、我々に支払えるみかえりは少ないです。何をおの望みますか?」
よし! と膝をうつ。
「ワシは黒馬のどれかの家紋が欲しい。いや、返してもらう。いいかな?」
呆れた顔だったエイフラムは、しかし、
「わかりました。ですが、一つ、兵力はいくつありますか?」
「ワシは、そうじゃな。七十の農奴たちだ。それにワシの弟にこの土地を譲る故、心配もなく戦をできるぞ。それと……。」
巨大な頭を教会の天蓋に向けた。小さく長い鼻が、あだ名とおりのモグラを連想させた。
「君らはいやかもしれんが、いいか。盗賊団のいくらかも君たちに協力的だ。」 (壮一、どうだ? どこまで兄上に伝えれている?)
エイフラムが隣でトランシーバを使う壮一に横目で見る。
しかし、彼は指で円をつくり、笑顔である。
大体話の筋を概要としてグリアに伝えているようだった。その雰囲気を察したエイフラムは、
「……ええ。我々も願ったり叶ったりです。して、兵力は?」
「ああ、百五十くらいだ。連中はどれくらい兵力を出す?」渋い顔だったが、「……約五千は確実でしょう。」ギョロ目をくるりと、回す。
「ムゥ、面白い。いいぞ! それでこそだ!」モグラの家に壮一とエイフラムは招かれた。天気の良い昼の頃だった。
巨大な穀物庫を過ぎた二人は、モグラのアジトである床倉庫に入っていった。 「ここだ。座ってくれ」
ランプを一つおかれた丸テーブルを中心に丸太の椅子がある。 二人が席につく。
「しかし、大変だな。五制と都市会議が立ち消えて早くも数十年。なんとも、世の中は動いとるのう。ああ、そうか。七〇年昔に《甲》が滅びた。」
木質の戸棚から壺を持ち出した。 中身は蜂蜜である。
それを美味しそうに、モグラは長い鼻先に蜜をつくのを避けるように、ぺチャりと舐める。
頬を赤く染めつつ、分厚い唇の隙間から吸う。
「おっ、君たちも欲しいか? うまいぞ」
泥に汚れた腕を壺に突っ込む様子と、それをベロベロと唾液で満たす彼に、二人は拒絶の顔を表す。
「そうか。」
また、嬉しそうに、ニコニコと舐める。
「……都市会議の後、様々な同盟が結ばれたり、破られたり。動乱も、各地であります。モグラ殿、あなたの救援はありがたい。」
「ははは、よいよい。まあ、どうだ。」
戸棚から、酒をとりだした。瓶の口から直接グビグビと飲む。
ホレ、と瓶をエイフラムは促される。
「……では。」
蜜と唾液に汚れた瓶の口から酒を飲む。
(意外と彼は酒に強いのか。)
壮一は全く関係のない感想を持った。
コメント