異世界にいったったwwwww
17
グリアが、不安と畏れと怒りの一座を首をチョイ、チョイと小さく左右に傾いでみた。小鳥の仕草に似ていた。
「なあいいか。だったら、昔、俺らの爺さんどもがやったように、逃げりゃあいいじゃねぇか!」
髭の長い老爺が、
「馬鹿! 一体どこに逃げる気だ! まさかまた宗教自治区に逃げるとかいわねぇよな? だったら無理だ! もう三十年前に中原諸国と条約で身柄を引き渡す契約ができてるんだ。」
グリアはすかさず眼を光らせた。
「そう、逃げるのは自治区だ。」
一座の男達は呆れた。
また何を言うのか、と。
それを察しつつも、言葉を続ける。
「だが、考えろ。宗教だけとは限らんだろ? 自治区はよ。」
先ほどの老爺が肩から大きく力を抜いた。もうだめだ。と言いたげである。ほかの連中も似たような格好になる。
「ま、まてよ、いいか。俺が言うのは、商業自治区だ。」
「おいおい、ま、まさかバザールに行くのか!」
「そのとおり。あそこは条約がまだだった。それに、商人どもはそういう契約に関しちゃ中原の馬鹿どもより賢いぜ。」
「で、でもよ、距離があるぜ、兄貴!」
ハゲと呼ばれた、壮一がはじめてここに訪れるとき、馬に載せた男である。
「パプキン、そう思うか。」
「えっ、まあ。だって……それに相手側は受け入れるか。」
「問題ない。せいぜいが小国相手さ。それに幸いバザールとは商業の関係は持ってない。小国規模の分際で、前時代的な領地運営だからな。俺らが金を商人に握らせりゃあ、平気さ。」ずっと真横の椅子に座っていたエイフラムが、急に立ち上がった。
「七マリ先の村、モグラも味方してくれるだろう。」
グリアは、最初、弟が言葉を発したことに驚愕した。しかし、次第にその告げた内容に、今度は吹き出した。
ほかの男たちも、爆笑する。手を叩くもの。冗談、冷やかし、様々である。 「あははっはは! モグラ、モグラか! あのハリボテ正義の騎士、モグラか。うんうん、連中も兵力はあるだろう。どれくらいだ!」
「だいたい、四十から七十くらい。」
「くっ……」
というグリアの声に続き、尚一層高い笑い声がこだまする。
黒馬の砦より目と鼻の先に村がある。 ここに「モグラ」と嘲笑される男がいた。彼は、地主の子であり、農奴も所有する子息であった。 その彼が、なぜこの地一帯に嗤れる者となったのか? 理由の一つとして、自らの理想に囚われて行動する狂人であったからだ。
彼自身、己を誰かの英雄の遺児であると思い込み、事実黒馬の民の亡き赤子の王子だと考え、それが、やがて現実的でないとわかると、その家臣の子供だと考えるようになった。
「なあいいか。だったら、昔、俺らの爺さんどもがやったように、逃げりゃあいいじゃねぇか!」
髭の長い老爺が、
「馬鹿! 一体どこに逃げる気だ! まさかまた宗教自治区に逃げるとかいわねぇよな? だったら無理だ! もう三十年前に中原諸国と条約で身柄を引き渡す契約ができてるんだ。」
グリアはすかさず眼を光らせた。
「そう、逃げるのは自治区だ。」
一座の男達は呆れた。
また何を言うのか、と。
それを察しつつも、言葉を続ける。
「だが、考えろ。宗教だけとは限らんだろ? 自治区はよ。」
先ほどの老爺が肩から大きく力を抜いた。もうだめだ。と言いたげである。ほかの連中も似たような格好になる。
「ま、まてよ、いいか。俺が言うのは、商業自治区だ。」
「おいおい、ま、まさかバザールに行くのか!」
「そのとおり。あそこは条約がまだだった。それに、商人どもはそういう契約に関しちゃ中原の馬鹿どもより賢いぜ。」
「で、でもよ、距離があるぜ、兄貴!」
ハゲと呼ばれた、壮一がはじめてここに訪れるとき、馬に載せた男である。
「パプキン、そう思うか。」
「えっ、まあ。だって……それに相手側は受け入れるか。」
「問題ない。せいぜいが小国相手さ。それに幸いバザールとは商業の関係は持ってない。小国規模の分際で、前時代的な領地運営だからな。俺らが金を商人に握らせりゃあ、平気さ。」ずっと真横の椅子に座っていたエイフラムが、急に立ち上がった。
「七マリ先の村、モグラも味方してくれるだろう。」
グリアは、最初、弟が言葉を発したことに驚愕した。しかし、次第にその告げた内容に、今度は吹き出した。
ほかの男たちも、爆笑する。手を叩くもの。冗談、冷やかし、様々である。 「あははっはは! モグラ、モグラか! あのハリボテ正義の騎士、モグラか。うんうん、連中も兵力はあるだろう。どれくらいだ!」
「だいたい、四十から七十くらい。」
「くっ……」
というグリアの声に続き、尚一層高い笑い声がこだまする。
黒馬の砦より目と鼻の先に村がある。 ここに「モグラ」と嘲笑される男がいた。彼は、地主の子であり、農奴も所有する子息であった。 その彼が、なぜこの地一帯に嗤れる者となったのか? 理由の一つとして、自らの理想に囚われて行動する狂人であったからだ。
彼自身、己を誰かの英雄の遺児であると思い込み、事実黒馬の民の亡き赤子の王子だと考え、それが、やがて現実的でないとわかると、その家臣の子供だと考えるようになった。
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