異世界にいったったwwwww
14
「…………と、まあ散々だった訳なんですが。」
「――ハァ、そう。あなたたち大変だったんだね。安心しな。ここは、まあうまくやっている方だから、そんなすぐには襲われないさ。しかしね。もし、そんなことがあるんだったら、一国の軍だからね。どうしようもないさ。」
お喋り好きなおかみが、冗談半分に笑う。
しばらく、真希や壮一は口を固く結んだ。
「そういえば、金髪の彼、グリアさんだったか。彼は今どうなってるのか……。」
「さあ、いつもどこかを走り回る野良犬みたいなもんさ。どうってことはないよ。」
薄暗くなった外を濡れた窓から眺める壮一に、常に眠たげな顔のエイフラムが入っていきた。あら、と声をかけるおかみが、エイフラムに「お客人はどこに泊まるんだい?」と訊ねた。
しかし、待っても口をひらく素振りもないエイフラムと、おかみの様子に思わず、 「すいません。急に押しかけてしまって。」
真希が謝する。
「いや、あんたたちを責めてるわけじゃないんだよ。あんたの兄さんはなんか言わなかったかい?」
「……なにも。」
もう、とおかみがエイフラムに嘆息する。
「しぉうがないね、今日はウチに泊まんなさい。」
「よろしいのですか?」
壮一が唾を飛ばす。
「ええ、構わないよ。どうせ一つ部屋が余っているしちょうどいい。そうしなよ。」
はぁ、と生返事した壮一だったが、娘の方に顎をやると、わざとらしく逸らされた。
「……お言葉に甘えて、そうさせてもらいます。ところでエイフラムさん。我々は一体どうすればよいでしょうか?」
「――さあ。自分はなにも聞いてない。兄上に命ぜられないことは何もできない。」
「ははは、そうですね。ところであなたの兄上さまはいつお帰りですかな?」
「……わからない。ただここで待つだけだ。」
苦笑いした壮一は急に気づいたように、バックパックから手帳とペンを取り出し、何かを書き始めた。
(無口すぎんだろ――)
真希は、改めてエイフラムという青年を頭から靴まで観察した。フードとマントを脱いだ彼は、自然な焦げ茶色の髪が雨に濡れてぐしゃぐしゃだった。薄い唇が乾いている。一言で表すと、栄養不足を心配される外見である。
そんな彼も一応剣を腰に佩いている。そして、常に眠たげな眼の底に、人を嘲笑したような、意地の悪い雰囲気を帯びている。
「あの、エイフラムさん。」
「……はい。」
「あなた方は、一体何者なんですか?」
「……さあ。」
「ッく、ゴホン。えっと、そんな曖昧じゃ困るんです。私たちも旅人とはいえ、信頼関係を一時的にでも築かざるを得ない状態なんです。教えてください。」
「……兄上がいない以上お答えできません。」
怒りが喉まで熱く遡行する。
「はぁ? なんなんですかあん――」
喧嘩腰の娘の口をすかさず押さえ込んだ壮一が「いえ、何でもないです。すいませんね。」と笑顔を取り繕いつつ真希の耳元で「馬鹿、相手怒らせてどうするんだ。」と叱咤する。
「まあまあ、あんたたち。そうだ、エイフラムすこしさ、猪を狩ってきてちょうだいよ。」
「……わかりました。」
踵を返して戸口に向かう彼の肩を、おかみが素早く掴み、耳打ちする。
(あの方たち、随分変わってるけど、どこで助けたんだい? 驚いたよ。急にあんたが訪ねてきたと思えば、お客さんだとか言って上がり込んで……。まあそれはいいよ。しかし、もっと愛想よくしな。いいね?)
(……はあ、しかし何分会話が得意でない)
(ああ、もうじれったい。)
おかみが後ろの机で頬を膨らませて怒っている真希を一瞥し、
「ねえ、丁度いい機会さ。マキさん、あなたエイフラムと一緒に少し散歩しておいで。気持ちいいよ。馬乗れるだろ。」
「えっ――そんな急に。それになんだか内股がすごく痺れて痛いので勘弁してください。」
「そうかい、残念だ。じゃあ、夕飯の手伝いをお願いしていいかい?」 「あっ、はい。それでしたら。」
「じっ、じゃあ、オレが行きますよ。馬は久しぶりだから。」
壮一がペンとノートをしまうと、肩と首を回す。
「……ではすぐそこに厩舎があるので、ついてきてください。」
男二人組は颯爽と飛び出していった。 それを見送ったおかみが、
「悪いことしたね。しかし、エイフラムは悪い奴じゃないんだ。許してやってくれよ。」と、フォローする。
ええ、と生返事した真希は、頬杖をつきながら戸口から流れ込む冷風に髪をなぶらせていた。
「――ハァ、そう。あなたたち大変だったんだね。安心しな。ここは、まあうまくやっている方だから、そんなすぐには襲われないさ。しかしね。もし、そんなことがあるんだったら、一国の軍だからね。どうしようもないさ。」
お喋り好きなおかみが、冗談半分に笑う。
しばらく、真希や壮一は口を固く結んだ。
「そういえば、金髪の彼、グリアさんだったか。彼は今どうなってるのか……。」
「さあ、いつもどこかを走り回る野良犬みたいなもんさ。どうってことはないよ。」
薄暗くなった外を濡れた窓から眺める壮一に、常に眠たげな顔のエイフラムが入っていきた。あら、と声をかけるおかみが、エイフラムに「お客人はどこに泊まるんだい?」と訊ねた。
しかし、待っても口をひらく素振りもないエイフラムと、おかみの様子に思わず、 「すいません。急に押しかけてしまって。」
真希が謝する。
「いや、あんたたちを責めてるわけじゃないんだよ。あんたの兄さんはなんか言わなかったかい?」
「……なにも。」
もう、とおかみがエイフラムに嘆息する。
「しぉうがないね、今日はウチに泊まんなさい。」
「よろしいのですか?」
壮一が唾を飛ばす。
「ええ、構わないよ。どうせ一つ部屋が余っているしちょうどいい。そうしなよ。」
はぁ、と生返事した壮一だったが、娘の方に顎をやると、わざとらしく逸らされた。
「……お言葉に甘えて、そうさせてもらいます。ところでエイフラムさん。我々は一体どうすればよいでしょうか?」
「――さあ。自分はなにも聞いてない。兄上に命ぜられないことは何もできない。」
「ははは、そうですね。ところであなたの兄上さまはいつお帰りですかな?」
「……わからない。ただここで待つだけだ。」
苦笑いした壮一は急に気づいたように、バックパックから手帳とペンを取り出し、何かを書き始めた。
(無口すぎんだろ――)
真希は、改めてエイフラムという青年を頭から靴まで観察した。フードとマントを脱いだ彼は、自然な焦げ茶色の髪が雨に濡れてぐしゃぐしゃだった。薄い唇が乾いている。一言で表すと、栄養不足を心配される外見である。
そんな彼も一応剣を腰に佩いている。そして、常に眠たげな眼の底に、人を嘲笑したような、意地の悪い雰囲気を帯びている。
「あの、エイフラムさん。」
「……はい。」
「あなた方は、一体何者なんですか?」
「……さあ。」
「ッく、ゴホン。えっと、そんな曖昧じゃ困るんです。私たちも旅人とはいえ、信頼関係を一時的にでも築かざるを得ない状態なんです。教えてください。」
「……兄上がいない以上お答えできません。」
怒りが喉まで熱く遡行する。
「はぁ? なんなんですかあん――」
喧嘩腰の娘の口をすかさず押さえ込んだ壮一が「いえ、何でもないです。すいませんね。」と笑顔を取り繕いつつ真希の耳元で「馬鹿、相手怒らせてどうするんだ。」と叱咤する。
「まあまあ、あんたたち。そうだ、エイフラムすこしさ、猪を狩ってきてちょうだいよ。」
「……わかりました。」
踵を返して戸口に向かう彼の肩を、おかみが素早く掴み、耳打ちする。
(あの方たち、随分変わってるけど、どこで助けたんだい? 驚いたよ。急にあんたが訪ねてきたと思えば、お客さんだとか言って上がり込んで……。まあそれはいいよ。しかし、もっと愛想よくしな。いいね?)
(……はあ、しかし何分会話が得意でない)
(ああ、もうじれったい。)
おかみが後ろの机で頬を膨らませて怒っている真希を一瞥し、
「ねえ、丁度いい機会さ。マキさん、あなたエイフラムと一緒に少し散歩しておいで。気持ちいいよ。馬乗れるだろ。」
「えっ――そんな急に。それになんだか内股がすごく痺れて痛いので勘弁してください。」
「そうかい、残念だ。じゃあ、夕飯の手伝いをお願いしていいかい?」 「あっ、はい。それでしたら。」
「じっ、じゃあ、オレが行きますよ。馬は久しぶりだから。」
壮一がペンとノートをしまうと、肩と首を回す。
「……ではすぐそこに厩舎があるので、ついてきてください。」
男二人組は颯爽と飛び出していった。 それを見送ったおかみが、
「悪いことしたね。しかし、エイフラムは悪い奴じゃないんだ。許してやってくれよ。」と、フォローする。
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