犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと最終回!

お嬢様家の私有地、
桜の園で行われている
大お花見大会。


一面が桜色に染まる景色の中で、
みんなが歌い騒ぎ
宴を繰り広げる様は
どこか現実離れしており、
まるで桃源郷のようだ
と純心は思う。


『桃源郷は桃なので少し違うか、
ピンクの宴……だとまたちょっと
エッチぃ感じになってしまうし』


そんなどうでもいいことを考えつつも
みんなが楽しそうにしている姿を、
嬉しそうに純心は眺めていた。




たまたま珍しく
純心のそばに座っていた
メガネ、ドルオタ、ジャガイモの
三馬鹿トリオ。


「しかし純心殿はすごいですな」


メガネは感心するかのように
顔の眼鏡を指で押しながら言う。


「いつの間にか、
こんなたくさんの人達と
人脈が出来ておりますぞ」


ドルオタの言葉に純心は思う。
確かに去年の今頃、
まだ犬女ちゃんと出会う前、
自分の学校での知り合いは
この三人しかいなかった。
後は幼馴染枠の
夏希ぐらいのものだろうか。


学校どころかそれ以外でも、
当時の純心の世界には
その四人ぐらいしか
人が住んではいなかった。


「いや、全部
犬女ちゃんがつくった人脈だから。
犬女ちゃんの人徳、
いや犬女徳というやつかな』


だがこの大勢の人々を
自分の交遊関係だと言うには
あまりにもおこがましい。


すべては犬女ちゃんが
呼び寄せて来た人達であり、
自分はただずっと
そばについていただけなのだから。


いい意味で、犬女ちゃんは
人たらしが得意で、
ときどき起こる
ハーメルンの笛吹き現象のように
人を呼び寄せて来る能力がある。


「でも犬女ちゃんも
純心くんがいたからこそ
こうしてみんなと出会えたんだよね」


ジャガイモの言葉に
そういうものであろうかと
考え込む純心。


ラノベ主人公並みに鈍感なのは
まったく変わっていないようだ。


確かに犬女ちゃんのほうが
みんなとの関りは強かったが、
その犬女ちゃん本人は
純心との深い絆があればこそ
存在しているのは間違いはない。


人と人との縁とはそうやって
つながって行くものなのだろう。


-


男どもがそんな話をしているとき
いつもの女子メンバー達による
女子トークも大いに盛り上がっていた。


「リアルガチでハーレム目指すとか
どう考えてもおかしいじゃないですか」


まだ納得がいっていない愛ちゃんは
ひとりでぶつくさ呟いている。


「でもさー
犬女ちゃんの正妻感がハンパないよねー、
あたしも負けないけどさー」


ハーレムは確定として
今度は誰が第一夫人なのかを
決める気なのだろうか。


「正妻というよりは
パートナーとかバディという感じではなくって?
もちろん私が負けることなどあり得なくってよ」


女子大生になっても、この女子会に
参加する気まんまんの生徒会長。


「人間と他の生き物が
それほど強い絆で結ばれているなんて
とても素晴らしいじゃないですか!
あたしも負けないように頑張りますね」


獣医を目指すお嬢様の
我が道を行く、
ゆるふわ独自路線も相変わらずだ。


「でも
あれですよね、この集まりも
ハーレムみたいなものですよね。
ここにいる人達みんな、
犬女ちゃんと純心くんがつくった
一大ハーレムのメンバー
みたいなものですもの」


図書委員はハーレムの定義すら
広げてみようとしているのか。


確かに、
自分を大好きでいてくれる人達で、
自分も大好きである人達の集まり
とハーレムを定義するならば、
これは犬女ちゃんの一大ハーレム
ということで間違いない。


犬女ちゃんはみんなが大好きで
みんなも犬女ちゃんが大好きなのだから。


犬女ちゃんは
みんなが嬉しそうにしている姿、
みんなの笑顔を見て、
すごく嬉しそうな笑顔で
尻尾を振って喜んでいる。




犬女ちゃんは、
犬女というには人間に近くなり過ぎた。
そして人間というには犬の要素が強過ぎた。


犬女ちゃんは、
犬女でもなく、人間でもない、
『犬女ちゃん』という生き物、
それが一番あてはまっているだろう。


犬女ちゃんは、
この世界で唯一無二の
『犬女ちゃん』という存在で、
『犬女ちゃん』という生命だ。


そして純心にとっては
何にも代え難い、
かけがえのない
犬女ちゃんだ。




満開の桜が咲き誇る
桜の木に寄りかかって
座っている純心。


その足の方から
犬女ちゃんが寄り添って来て、
そのまま純心に抱き着いて甘える。


笑顔で犬女ちゃんの
頭を撫でてあげる純心。


犬女ちゃんも
笑顔で純心を見つめ、
楽しそうなみんなの姿を
一緒に眺める。




犬女ちゃんはこの先もずっと
純心のそばを離れることはない。
いつまでもずっと純心と一緒だ。


そして犬女ちゃんは
明るく元気に、
毎日を一生懸命生きて行く、
純心と一緒に。






おしまい











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