犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと東京(6)/池袋乙女ロード

秘密の花園突入にあたり、
図書委員は
事前に準備していた衣装に
犬女ちゃんを着替えさせた。


犬女ちゃんの大きな
バストが目立ないように、
サラシのようなものを
図書委員が胸に巻く。


純心は秘密の花園では
胸がデカイ女子は
いじめられるのだろうか、
と不思議に思っていた。


それから二本足で立つ
犬女ちゃんに帽子を被せて
ダボダボの大きな
トレーナーを着せる。




もともと短髪で
ボーイッシュな犬女ちゃんが
その豊満な胸を隠してしまったら、
まるで可愛らしくも
美しい少年のように見える。


図書委員は犬女ちゃんに
自作のBL風小説『犬男くん』の
リアルなコスプレを
させたかったのだ。
胸を目立たないようにしたのも
そのためであった。


図書委員は犬女ちゃんに
犬男くんの恰好をさせることで
今後の創作活動の
ヒントを得たかったのかもしれない。


-


緊張しながら女子だけの
秘密の花園に突入する純心。
そう思っているのは
純心だけなのだが。
しかし店内も圧倒的に
女子ばかりなのは間違いない。


これはちょっと不法侵入で
捕まるのではないかと
びくびくしてしまう。
不法でもなんでもなく、
ただ買い物に来ただけなのだが。


そんな緊張している純心を
男装した犬女ちゃんが、
優しく肩を抱いてあげる。
しかしこれが余計にいけなかった。


現在、超絶美少年に変身中の
犬女ちゃんもとい犬男くんが、
純心の肩を抱いてあげている。


そのシチュエーションを
店内の目ざとい一部の女子達が
見逃すはずはなかった。
彼女達にとってそういうシチュは
大好物に他ならない。


そういうのが好きな女子達は
潤んだ目で涎を垂らしながら
犬女ちゃんと純心に見惚れている。
犬女ちゃんが純心に
イチャコラするたびに
艶っぽい桃色吐息が漏れる。


『やばい!
ここはやはり
女子しか入っちゃいけない
秘密の花園に違いない!
しかもちょっとエッチぃ感じの』


純心の勘違い妄想は
より一層ますます
エスカレートして行く。


『やべぇ、やべぇよ、
やっぱ東京ってコワイとこだよ』


-


ついに犬女ちゃんは
単に人間に変装するだけではなく、
人間の性別すらも超えて
変装することに成功した。
何が成功なのかすら
よくわからなくはあるが。


種族を変え、
性別までも変えてしまったら
元は一体なんだったのか、
どんな生き物だったのかすら
まったくわからない
ことになっている。


『犬女ちゃん』という名前の
『犬』という要素と
『女』という要素の両方を
なかったことにしているのだから、
もはや『人間男さん』なのだが、
それでは単に普通の人だ。


これもまた犬女ちゃんの
可能性ひとつと言えるのだろうか。
種族も性別も超えて
一体何をしようというのか。
犬女ちゃんから
イオちゃんに進化して、
さらに犬男くんに進化して、
次はもう高次元な生命体にでも
なりそうな勢いだ。


先日人間の文化の壁を
無理矢理に
ブレイクスルーした
ばかりだというのに
今度は性別の壁に
喧嘩を売ろうとでも
言うのだろうか。


-


だが純心は
美少年の犬男くんについては、
これはこれでありだろう
と思っていた。


もちろんそれは
恋愛や性的な意味ではなくて、
パートナーや
バディとしての意味だが。


少女だろうと少年だろうと、
本当に美しければ
それでオッケーじゃないか
などという気にもなっていた。


もしかしたら、純心は
図書委員が書いている
BL風小説に影響を受けはじめて
しまっているのかもしれない。


-


その後、
まるで少女漫画か何かから
そのまま出て来たかのような
可愛らしい超絶美少年犬男くんに
周囲の女子達はメロメロになり、
大勢で後をついて歩いて来る。


ときどき見せる
純心とのイチャイチャも
彼女達には格好の
いいエサだったのだろう。


どうも犬女ちゃんは
人間を魅了する
チャームのスキルの持ち主では
ないだろうかとさえ思えて来る。


まるでハーメルンの笛吹き男のように
犬男くんの後には
女子の大名行列が出来上がっていた。


図書委員はどういうところで
女子が痺れるのか観察し続け
熱心に研究を怠らなかった。


こうして犬女ちゃんは、
池袋乙女ロードに現れた
伝説の美少年『犬男くん』として
後々まで語り継がれることになった。











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