犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと文化祭(7)/スクールアイドルコンテスト

それまでの静かな曲調が
だんだんアップテンポに
なってきて、人々に
場面の急展開を予感させる。


構成としては、
ドルオタPが最初に撮った
PVとまったく同じ展開ではある。
だがあのときはイオちゃんも
お面をつけていたため、
イオちゃんがあのPVの躍り手と
同じ人物であることに
まだ誰も気づいてはいなかった。




激しい曲調に転換した瞬間、
イオちゃんは衣装の紐を引っ張り、
犬女ちゃんの姿に変身を遂げた。


舞台などで一瞬にして、
衣装が替わるシーン、
まったくあれと同じ要領だ。


それまで優雅に踊っていた
イオちゃんは一転、
打って変わって、
犬女ちゃんとなって、
その野生を剝き出しにて、
ワイルドにステージを
飛び回り、跳ね回る。


それまで見ていた人々は、
声を上げることすら忘れ、
ただただ茫然とするばかり。
理解が追いつかず
困惑しているのは明らかだ。


それはイオちゃんの中から、
犬女ちゃんが飛び出して来た
ようにも見えただろう。
イオちゃんの中の人は
犬女ちゃんだったのだ。


-


純心は、
今まで犬女ちゃんが
イオちゃんであることを
みんなに隠して
秘密にしていた
というわけではなかった。


ただ言い回るような
ことでもないので、
関係者以外の誰かに
自分からそれを
言うことはなかった。


もし聞かれたら、
答えようとは
思っていたが、
誰も聞いて来る人が
いなかったので
言う機会がなかった
ということだ。


だが、
通学電車でラブレターを
渡して来た中学生のような
こともあるので、
この際、みんなに
知ってもらおうと
純心は思っていたし、
それにはもってこいの
いい機会だとも思っていた。


-


昨日からテンションが高く
超ノリノリの犬女ちゃん。


人間の身体能力を
はるかに凌駕する
犬女ちゃんの
ダンスは圧巻だった。


跳び前転、ばく転、
いつの間にか身につけたのか、
新技である空中回転までも披露する。


『アクロバティックか!?』


しかも
連続して高速でやるため、
あまりに動きが速すぎて、
もはや何の生き物なのか
よくわからない。
単なる球体のようにも見える。


『お前は猫か!?』


純心は以前から思っていたが、
犬女ちゃんの敏捷性は、
犬というより猫のようでもある。
もしかしたら猫の血も入って
いるのではないだろうか、
そんな疑念すら抱いてしまう。


もうアイドル要素の
欠片もなくなっていたが、
縦回転だけではなく、
横回転にも挑み、
大きな助走から、
空中四回転を見事成功させる。


『フィギュアか!?』


犬女ちゃんの大技が
成功する度に、
会場からは
「おぉっー!」
という声が上がり、
会場は湧きに湧いた。


しかしながら、
アイドルらしい歓声要素は
まったくゼロだった。


-


スクールアイドル
らしいかは別にして、
パフォーマンスとしては、
よく出来てたいた。
というよりは、
もはや曲技団とか
サーカスレベルである。


また雅な美少女が一転して
野生の獣のように変貌する
というのはいろいろなものの
暗喩として捉えることも出来た。
実際に女性の
こういう変貌ぶりは
大人になると稀に
目にすることが出来たりもする。


犬女ちゃんの踊りも
キレキレだったし、
なかなかクオリティが高い
パフォーマンスだっただろう。


そして何より
見ている人々に
強烈なインパクトを
残すことにも成功した。




しかし、
そのインパクトが
あまりに強烈だったために、
スクールアイドルコンテストは
犬女ちゃんが
優勝に選ばれてしまった。


『これはさすがにだめだろ』


まぁ、
人間の美女コンテストで、
種族がまったく違う
犬や猫が参加して
優勝してしまった
ようなものである。


この場合、そもそも
参加資格を人間限定と
記載しておかなかった
主催者が悪い
ということに
なるのだろうか。


いくら頭がよく
機転が利く
生徒会メンバーでも、
まさかスクールアイドル
コンテストに、
人間以外の種族が
参加してくるだろうとは
思わないだろう。


逆に応募要項に、
『犬、猫など人間女性
以外の参加は禁止します』
と記載してあったら、
そっちのほうが心配になる
というものだ。
そんなコンテストに
参加したいと思う
女生徒もいないだろう。




『犬女ちゃんが優勝では、
他の参加者が
さすがに黙っていないだろ』


純心はトラブルを懸念したが、
他の入賞者が、
二位・夏希、
三位・お嬢様、
四位が生徒会長だったので、
誰からも文句が出なかった。


『結局お前らも出てたんかい!』




アイドルと銘打っているのに
歌ってすらいないのだが、
アイドルグループでも
歌わないで踊るだけ
の人もいるから
それはありなのだろうかと、
微妙に納得がいかず
気持ち悪さを感じる
純心だった。


-


「犬女ちゃん、
すごかったねー」


「あーし、
噂の美少女が
犬女ちゃんだと
思ってなかったしー」


白ギャル黒ギャルは、
犬女ちゃんを
エントリーさせたのは
私達だとドヤ顔で
胸を張っていた。




スクールアイドルコンテストは
若干卑怯な、
反則と言えなくもない
パフォーマンスで、
犬女ちゃんが優勝して幕を閉じた。


そして、
都市伝説級の美少女
イオちゃんの正体が
犬女ちゃんであると、
学校のみなが
知ることとなった。











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