犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと体力測定

二学期最初の体育授業は、
体力測定だった。


ホームルームを除いて、
犬女ちゃんが初めて参加する
高校の授業でもある。


体育の授業は、
男女分かれて行われるため、
当然犬女ちゃんは
女子側になるのだが、
純心クラスの体育に限っては、
純心と一緒のほうが
いいだろうということで、
犬女ちゃんも男子と一緒に
体育を受けることになる。


他のクラスで体育の授業に
参加するときは女子側に
参加するそうなので、
いずれ夏希やお嬢様、生徒会長とも
一緒に体育の授業を
することもあるだろう。


体育着への着替えなどは、
保健医の日向先生が、犬女ちゃんを
手伝ってくれているため、そこは
純心が心配しなくてもよかった。




純心のクラスの男子達は
当然ながら色めき立った。
女子と一緒に体育の授業を
受けることなど小学生以来で、
小学校当時は
よくわからなかったため
気にもならなかったが、
色気づいた高校生ともなれば、
当然ラッキースケベの一つや二つは
期待してしまうという物だ。


しかし、クラスの男子は
体力測定で完膚無きまでに、
犬女ちゃんに叩きのめされる。




ほぼすべての種目で、
クラスの男子より
犬女ちゃんのほうが
数字がよかった。


五十メートル走や持久走などの
走る競技では、犬女ちゃんに
追いつける男子はまずいなかった。


立ち幅飛びや垂直飛びでも、
犬女ちゃんの跳躍力は、
バレー部所属男子の最高記録を
いともたやすく抜いてしまった。


犬が横歩きをする姿を
あまり見ることがないため、
さすがに反復横飛びは
無理だろうとみんな思っていたが、
犬女ちゃんは横飛びも見事にこなし、
新記録をマークした。


上体起こしや長座体前屈の
柔軟系もクラスで一番で、
唯一、指で握れないために
握力が計測不能で、
ボール投げも両手で挟んで、
ポイっと投げるだけで終わった。


-


「ハハハ!こいつすごいじゃないか!」


熱血脳筋体育教師と
生徒達から噂される剛田先生が
純心クラスの体育担当だ。


剛田先生は
細かいことは気にしない
豪快な性格をしており、
相当な天然でもあった。


その性格から生徒には
結構人気がある先生であったが、
純心はそもそも体育会系というのが、
大の苦手であったため、
剛田先生にも若干苦手意識があった。


どうも非体育会系からすると、
体育会の人が、どういう価値基準で、
どんな思考ルーチンをしているのか
まったくわからない。




「ハハハ!お前なんて名前だったけ?」


剛田先生が天然である証拠に、
犬女ちゃんに直接
名前を聞いている。


「あ、こいつ喋れないんです。
名前は『犬女ちゃん』と言います」


純心は慌ててフォローする。


「ふむ、随分変わった名前だな。
『イヌウォンナ・チャン』か。
交換留学生かなにかか?」


『東南アジア出身の人みたいに
なっちゃってるじゃねえかよ!』
『その妙なアクセントで呼ぶの止めろ!』


剛田先生は犬女ちゃんが
学校に通うことになったのを、
職員会議で聞いていたにも関わらず、
まったく忘れてしまっている。
細かいこと気にしなさ過ぎだ。


「まぁ、そんなようなもんかと…」


説明するのもなんなので、
純心は適当に返事をしておいた。


「よし!『チャン』こっち来い!
先生がいっちょもんでやるぞ!」


『それ、意味変わっちゃってるから!』
『女子に言ったら
完全にセクハラなやつだから!』


当然この場合のもんでやるは、
厳しくしごいてやるの意味だが、
このご時世、
女性徒にそんなことを言ったら、
問題にされてもおかしくない、
かもしれない。


犬女ちゃんの胸が大きいだけに
何かエッチな意味に聞こえてしまう。


よく考えると
『しごいてやる』というのも、
何かエッチな意味に思えて来る。


そう聞こえるというのは、
自分がどんどん汚れた大人に
なって来ているからなのかと
不安になって来る純心だった。


-


「そうだ『チャン』!
お前せっかくこの学校に来たんだから、
部活に入ってみろ!ハハハ」


「お前の高い身体能力なら、
全国だって目指せるぞ!ハハハ」


『犬女が、
高校生の競技大会
出られないから!』


「やはり高校生は、汗をかいて
青春を楽しまなくてはな!ハハハ」


こうして、熱血脳筋体育教師、
剛田先生の命令で、
運動部の部活体験をすることに
なってしまう犬女ちゃん。


スポーツの秋というし、
それも悪くはないのかもしれないが、
九月は秋と言うには
早過ぎるような気もする純心だった。













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