犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとホームルーム

純心の隣の席が
空いていなかったので、
間に一人男子を挟んだ
二席隣に犬女ちゃんは座っていた。


間に挟まれている男子山本君は、
ヒョロガリの眼鏡男子で、
人畜無害を絵に描いたような
人なので純心も安心し切っていた。


なんだか何もかもが、
今までからは、まったく
想像出来ないことばかりだ。


だが犬女ちゃんが
近くの席に座っているというのは
まんざら悪い気はしなかった。


あれだ、
青春恋愛ストーリーとかで
よくあるやつだ。


同じクラスの好きな人を
授業中目で追いかけてしまって、
チラチラ見てしまったり、
相手も意識して、
こちらを見たりするので、
ときどき目が合ってしまい
顔を赤くしたり、
そういう甘酸っぱいやつだ。


そんな甘酸っぱい経験の
一つもしたことがない
純心からしてみれば、
少し胸がときめくよう
シチュエーションであった。


-


休み時間を挟んで、クラスでは
再びホームルームがはじまる。


前を向いて先生の話を聞いていると、
横から犬女ちゃんの視線を感じる。


『あぁ、見てるな』


純心はニヤニヤしながら、
あえて犬女ちゃんのほうを
見ないでいた。


焦らすつもりはないが、
こういうのはときどき目が合って
はにかんだりするのがいいのではないか。


それによそ見ばかりしていては、
先生に怒られてしまう。


そういえばさっきの小夜子先生のあれは
一体なんだったのだろうか。
今現在教壇に立っている人と
同一人物とはまったく思えない。
あれはきっと夢か幻だったのだ。
そうに違いない。


純心はそんなことを
考えている間も、
横から犬女ちゃんの視線を
ずっと感じていた。


『ずっとこっち見てるな』


そんなこっちばっか見てたら
先生に怒られるだろうと思い、
純心が横にチラッと視線をやると、
犬女ちゃんが完全に真横を向いて
純心のことをガン見していた。


純心は思わず吹き出した。


『こっち見過ぎだろ!』


可哀想なのは間に挟まれた山本君で、
犬女ちゃんの熱い視線の間に挟まれ、
どうしていいかわからずに、
真っ青な顔をして、おどおどしている。


真面目で気が弱い山本君は
犬女ちゃんのほうを見ると、
ついその大きな胸に
目がいっていまうために、
犬女ちゃんのほうを見て、
注意することも出来ず、
ただただ、そわそわ、もぞもそぞ
しているしかなかった。


山本君はきっといい奴だ。
さすがに純心も
山本君に申し訳なかった。


『もういいから前見ろ』


純心は心の中で、
ずっとそう思っていたが、
犬女ちゃんはずっと
大きな瞳をキラキラ輝かせて、
純心のことをガン見し続ける。


『こっち見んな』


結局犬女ちゃんは、
ホームルームの間中、
ずっと横を向いて、
純心のことをガン見し続け、
山本君はずっとそわそわ
もぞもぞし続けていた。


-


担任の小夜子先生は、
ずっとそのことをわかていたが、
敬愛する犬女さまのやることに、
文句などつけられるわけがなかった。


「はあん、
ホームルームの間、
ずっとこららを見ていただけず、
ひたすら焦らしプレイとは…
さすが犬女さま、レベルが高いですわ…」


「さすが、ケ・ダ・モ・ノ(はあと」


ホームルームが終わって、
一人になった小夜子先生は、
顔を紅潮させて、身悶えていた。




「まぁそりゃ
言葉がわからない犬女ちゃんが、
一緒に授業受けるとか無理だよね」
と学校側も言っていた。


『この学校結構ゆるいな!』


純心は後で山本君に謝っておいた。











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