犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)
犬女ちゃんと動画(3)
「今日はお疲れ様でしてよ」
学校での撮影が終わると
生徒会長が声を掛けて来た。
「本当は私もこのまま一緒に帰って、
犬女さんをお風呂に入れて
さしあげたいところですけど、
まだおじい様と大事なお話がありまして、
今日は行けそうにもありませんでしてよ」
確かに今日のお風呂当番は、
夏希になっている。
「新学期がはじまる前に、
一度学校に来ていただくことが出来て、
よろしかったですわ」
一体新学期に何があるのか、
何度聞いても生徒会長は口を割ろうしない。
ちょうどそこに
部活が終わった夏希がやって来る。
「なんか犬女ちゃんの踊りが
すごかったって話題になってたよー」
「クラスのLINEでも
話題になってるぐらいだから、
学校中の人に知れ渡ったんじゃないかなー」
夏希の話を聞いて、
純心は少し気が重くなった。
これが良い方に転んでくれることを
願うばかりだ。
「あたしも見たかったなー」
その日は夏希と一緒に学校から帰った。
もちろん電車に乗るために、
犬女ちゃんはイオちゃんに再び変装して。
-
さて肝心のPVはどうなったかと言うと、
撮影終了後、ドルオタが一生懸命編集作業を行い、
完成した動画の試写会が、みなを集めて開かれた。
最初の前奏から途中までは、
ドルオタがつくった曲に合わせて、
人間に変装した犬女ちゃんこと
イオちゃんがお面をつけ、二本足で、
バックダンサーのちびっ子達と
ゆるい感じで踊っている。
Bメロの終盤に差し掛かると、
ちびっ子達が紐を引っ張って、
サビの部分では、
スクール水着姿の犬女ちゃんが
四本足で激しく踊り狂う。
お面をつけたままで。
悪くはない、悪くはないのだが、
なんともシュールな絵面の
PVになってしまっていた。
しかも絵面が強烈過ぎて、
肝心のドルオタがつくった曲が
まったく印象に残らないという
弊害付きである。
「い、いやぁ、
これで、いいのかな?」
聞いてはならないかもしれないことを
純心はおそるおそる聞いてみる。
「何を言っているのですか、
ワシの最高傑作ですぞ!」
ドルオタはむしろ
ドヤ顔で胸を張っている。
「何をおっしゃっているのでしてよ、
この前衛的なセンスが、もしかして
おわかりにならないのでして?」
一緒に演出を練った
生徒会長も超強気発言だ。
『前衛的だからいい
と言うものではないだろう』
犬女ちゃんも
自分が出ているPVを気に入ったのか、
わんわん吠えて純心に訴えかけている。
「面白いし、いいんじゃないかなー」
『それ多分面白いの意味違うからな』
夏希には違った意味で、
受けていたのかもしれない。
「犬女さんの二面性が
よく表現されてりますわ」
『それが伝えたい
テーマではないんですが』
「このカオスな感じが、
世紀末ぽくていいじゃないですか」
『今、世紀末じゃねーし
今世紀末まですげーなげーし』
『うん、まぁ中二だしな』
試写を見たメンバーには
意外にも概ね好評のようだった。
みんなの反応を見て、
またしても、
もしかしたら自分のほうが
おかしいのではないかと
不安を感じはじめる純心。
『も、もしかしたらあれか、
これが今どきな感じなのか?
一応美術の成績いいほうだし、
そんな間違ったセンス
してないと思うだんだけど、
あ、あれなのか、
俺のセンスがおかしいのか?』
こういうのは主観の問題だから、
いろいろ感じ方があるのだろう。
そう思ってメンタルを
建て直すことにする。
『いやいや、
きっとこいつらとは
感性がまったく違うのだろう』
『こいつらと一緒に
映画を観に行くことは絶対ないな』
-
こうしてつくられた
犬女ちゃんをフィーチャーした動画が、
有名動画サイトで公開されると、
その奇妙さから、違った意味で、
海外勢に大受けしていた。
「また日本か…」
「なんてものを見てしまったんだ!」
「日本がまた変なものをつくりやがった!」
「Oh! Japan 一体どうしたんだい?」
「またインターネットの
深い闇に辿り着いてしまったようだ」
「今日のネットはもういいや…」
「どうやらネットはここまでに
しておいたほうがよさそうだな」
「かおるさんありがとうござます(原文まま)」
「かおるさんあいしてます(原文まま)」
「かおるは俺の嫁」
等々。
コメント欄にはだいたい
そんな感じの内容ばかりが
英語やら中国語、その他の言語で
並んでいた。
『これが日本代表みたいに
思われるのはさすがに嫌だわ』
そして動画に
出演していた犬女ちゃんは
胸に付いていた名札のお陰で
世界中に『かおる』という
名前だと思われていた。
純心はこれでいいのかと思うが、
それでも再生数が多くて、
ドルオタ的には大満足だったようだ。
学校での撮影が終わると
生徒会長が声を掛けて来た。
「本当は私もこのまま一緒に帰って、
犬女さんをお風呂に入れて
さしあげたいところですけど、
まだおじい様と大事なお話がありまして、
今日は行けそうにもありませんでしてよ」
確かに今日のお風呂当番は、
夏希になっている。
「新学期がはじまる前に、
一度学校に来ていただくことが出来て、
よろしかったですわ」
一体新学期に何があるのか、
何度聞いても生徒会長は口を割ろうしない。
ちょうどそこに
部活が終わった夏希がやって来る。
「なんか犬女ちゃんの踊りが
すごかったって話題になってたよー」
「クラスのLINEでも
話題になってるぐらいだから、
学校中の人に知れ渡ったんじゃないかなー」
夏希の話を聞いて、
純心は少し気が重くなった。
これが良い方に転んでくれることを
願うばかりだ。
「あたしも見たかったなー」
その日は夏希と一緒に学校から帰った。
もちろん電車に乗るために、
犬女ちゃんはイオちゃんに再び変装して。
-
さて肝心のPVはどうなったかと言うと、
撮影終了後、ドルオタが一生懸命編集作業を行い、
完成した動画の試写会が、みなを集めて開かれた。
最初の前奏から途中までは、
ドルオタがつくった曲に合わせて、
人間に変装した犬女ちゃんこと
イオちゃんがお面をつけ、二本足で、
バックダンサーのちびっ子達と
ゆるい感じで踊っている。
Bメロの終盤に差し掛かると、
ちびっ子達が紐を引っ張って、
サビの部分では、
スクール水着姿の犬女ちゃんが
四本足で激しく踊り狂う。
お面をつけたままで。
悪くはない、悪くはないのだが、
なんともシュールな絵面の
PVになってしまっていた。
しかも絵面が強烈過ぎて、
肝心のドルオタがつくった曲が
まったく印象に残らないという
弊害付きである。
「い、いやぁ、
これで、いいのかな?」
聞いてはならないかもしれないことを
純心はおそるおそる聞いてみる。
「何を言っているのですか、
ワシの最高傑作ですぞ!」
ドルオタはむしろ
ドヤ顔で胸を張っている。
「何をおっしゃっているのでしてよ、
この前衛的なセンスが、もしかして
おわかりにならないのでして?」
一緒に演出を練った
生徒会長も超強気発言だ。
『前衛的だからいい
と言うものではないだろう』
犬女ちゃんも
自分が出ているPVを気に入ったのか、
わんわん吠えて純心に訴えかけている。
「面白いし、いいんじゃないかなー」
『それ多分面白いの意味違うからな』
夏希には違った意味で、
受けていたのかもしれない。
「犬女さんの二面性が
よく表現されてりますわ」
『それが伝えたい
テーマではないんですが』
「このカオスな感じが、
世紀末ぽくていいじゃないですか」
『今、世紀末じゃねーし
今世紀末まですげーなげーし』
『うん、まぁ中二だしな』
試写を見たメンバーには
意外にも概ね好評のようだった。
みんなの反応を見て、
またしても、
もしかしたら自分のほうが
おかしいのではないかと
不安を感じはじめる純心。
『も、もしかしたらあれか、
これが今どきな感じなのか?
一応美術の成績いいほうだし、
そんな間違ったセンス
してないと思うだんだけど、
あ、あれなのか、
俺のセンスがおかしいのか?』
こういうのは主観の問題だから、
いろいろ感じ方があるのだろう。
そう思ってメンタルを
建て直すことにする。
『いやいや、
きっとこいつらとは
感性がまったく違うのだろう』
『こいつらと一緒に
映画を観に行くことは絶対ないな』
-
こうしてつくられた
犬女ちゃんをフィーチャーした動画が、
有名動画サイトで公開されると、
その奇妙さから、違った意味で、
海外勢に大受けしていた。
「また日本か…」
「なんてものを見てしまったんだ!」
「日本がまた変なものをつくりやがった!」
「Oh! Japan 一体どうしたんだい?」
「またインターネットの
深い闇に辿り着いてしまったようだ」
「今日のネットはもういいや…」
「どうやらネットはここまでに
しておいたほうがよさそうだな」
「かおるさんありがとうござます(原文まま)」
「かおるさんあいしてます(原文まま)」
「かおるは俺の嫁」
等々。
コメント欄にはだいたい
そんな感じの内容ばかりが
英語やら中国語、その他の言語で
並んでいた。
『これが日本代表みたいに
思われるのはさすがに嫌だわ』
そして動画に
出演していた犬女ちゃんは
胸に付いていた名札のお陰で
世界中に『かおる』という
名前だと思われていた。
純心はこれでいいのかと思うが、
それでも再生数が多くて、
ドルオタ的には大満足だったようだ。
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