犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと動画(1)

高校のクラスメイトである
アイドルオタクの『ドルオタ』から
純心に連絡があった。
なんでもちょっと
相談したいことがあるそうだ。


前回家に来たとき、
犬女ちゃんのセクシーポーズを
激写しまくっていたドルオタなので、
家に呼ぶのはどうかと
純心は思っていたが、
幸い今日は生徒会長が
お風呂当番だった。
生徒会長の前ではさすがに
変なことはしないだろうと思い、
ドルオタを家に呼ぶことにする。


案の定、
生徒会長がいることを知った
ドルオタは少しびびっていた。


「で、相談したいことって、なんだ?」


「ワシ、
この夏休みの間に
オリジナル曲を作ったんですぞ」


ドルオタは少しドヤ顔で
胸を張っている。


「お前そんなこともするのか?」


ただのアイドルオタクで
アイドルの追っかけ以外
何もしないものだと思っていた
純心は少し驚いた。


「自作の楽曲を動画投稿サイトに
投稿したいと思うのですな」


「いいじゃないか、やってみれば」


なんだかよくわからないが
いろいろチャレンジしてみればいい、
純心はそれぐらいの気で聞いていた。


「そこで犬女さんに是非PVに
出演していただきたいのですな」


「そうか、そうか…」
「え?」
「はぁ?」


純心はドルオタが言ってることを
理解するのに時間が掛かった。


純心はここまで、
あまりよく考えずに
相槌を打っていたが、
よく考えるといろいろおかしかった。


曲を作ったのに、
動画投稿サイトに投稿するというのは
どう考えてもいろいろ合間が抜けている。
画的な意味で。


「そういうのは
自作の音楽投稿サイトに
投稿するもんなんじゃないのか?
よく知らんけど」


「ワシも有名動画サイトの
有名Pみたいになりたいんですぞ」


『知らんがな』


「それには犬女さんの
インパクトのある絵面が
どうしても必要なんですぞ」


「要するに
曲だけでは自信がないから、
絵面のインパクトで
再生数を稼ぎたいということか?」


純心が問うと、
そばで聞いていた生徒会長が
話しに割り込んで来る。


「まぁ、いいじゃありませんの」
「別に学校で撮影させてあげてもよろしくてよ。
そういうのはこちらもいろいろ都合がよくてよ」


どういう風の吹き回しだろう。
一学期の硬い感じがまるで嘘のように、
寛容になっている生徒会長。
さすがにこれには生徒会長も
ダメだしするだろうと思っていた。
それに意味深な言葉も気になるところである。


-


ドルオタが作った曲を聞いてみたが、
案外よく出来た曲だった。


ただ曲に合わせて犬女ちゃんが
ダンスを踊るというのが、
純心にはまったく想像が出来ない。


というか、そもそも犬女ちゃんが
ダンスを踊れるのかすらよくわからない。
身体能力が高いことは
最近わかって来ていたが。


試しに生徒会長が
即興で振りを付けて踊ってみる。


「犬女さん、
よく見ていたくださってよ、
こうやって踊るんでしてよ」


まぁ即興だったらこんなもんだよね、
というレベルたったが、
それを見ていた犬女ちゃんが、
生徒会長と一緒に踊りはじめる。


人間のダンスとは少し違うが、
飛んだり跳ねたり
躍動感と迫力があって、
体の動きもキレキレで、
個人的には生徒会長のダンスよりも
確かにインパクトがあると純心は思う。




その場の空気は
「なんかいけそう」
そんな感じになって来ていた。


「しかしなぁ、
顔出しというのがなぁ…
有名動画サイトということは、
日本全国どころか、
世界中に流れてしまうわけだろ?」


LINEぐらいしか
SNSをやったことがない純心は
こういうことに対しては保守的だ。


それだけではなく、犬女ちゃんの
顔が知れ渡ってしまうことで、
心無い人間達の悪意の矛先、
対象にされてしまうことを怖れてもいた。


生徒会長もドルオタも
一学期の学校のあり様を見ていたから、
純心の心配もわからなくはなかった。




生徒会長はまるで
さもいい案を閃いたかのように
突然顔を明るくする。


「それでは、お面をつけて出たらよいのではなくって!」


『別にそんな顔するほどいい案でじゃないだろ』


しかしドルオタは純心とは違ったようだ。


「おぉ、それはよい考えかもしれませんですぞ!」


『別にお面つけるなら誰でもいいだろ』


純心的にはいろいろ不思議で仕方なかったが、
話はその方向でどんどん進んで行く。


「衣装とかはどうすんだよ?
作るとなると時間もお金もかかるぞ」


まだ今ひとつ納得がいかない純心。


「そうですわねぇ…」


生徒会長は再びまるで
さもいい案を閃いたかのように
突然顔を明るくする。


「私のスクール水着を貸してさしあげましてよ!」


まったく油断していた純心は吹き出した。
母親が海外に戻った今、
まさかまたスクール水着が出て来るとは
夢にも思っていなかった。
スクール水着に不意打ちされたようなものだ。


『いい案閃いたみたいな顔してんじゃねぇよ!』


「それは素晴らしいアイデアですぞ!」


しかしドルオタは
思いもよらないアイデアに
いたく感服しているようだった。


『お前も感服してんじゃねぇよ!』




「ちょ、ちょっと待てお前ら」


「犬女ちゃんが
お面つけて、スクール水着で踊る、
そんな色物みたいなPVでいいのか?」


純心はなんとか二人を
思いとどまらせようとする。


「何をおっしゃっているのでしてよ、
この前衛的なセンスが、もしかして
おわかりにならないのでして?」


「最高にビビッと閃きまくり、
イマジネーションが湧きまくりですぞ!」


『あぁ、これ絶対
ひどいことになる
パターンのやつだわ』


純心は諦めた。













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