犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとファミレス(2)

チョコレートパフェのおかわりも
食べ終わり、満足気な犬女ちゃん。


こんなに大好きなものを
もう食べられないのはあまりに可哀想だから、
喫茶店『夏祭り』のお祭りマスターに頼んだら、
つくって出してもらえないだろうか、
などと純心は考えていた。




チョコレートパフェも食べ終わったので、
そろそろ帰ろうかとしていたとき。


「ちょっと!純心さん!」


聞き覚えのある声がする。


「あなた、こんなところで、その女性と
一体何をしているのでして?」


「犬女さんという者がありながら、
犬女さんをほったらかしにして、
ふしだらでしてよ!」


いつの間にか
テーブルの横に腕組をして、
仁王立ちしている生徒会長がいた。


最近、生徒会の活動が忙しいらしく、
犬女ちゃんのお風呂係りも
他の人に代わってもらったりしてた。
それであまり連絡が取れていなかったので、
生徒会長はイオちゃんのことを
まったく知らなかった。


犬女ちゃんは、
久しぶりに会うことが出来て、
嬉しそうな笑顔で生徒会長を見つめている。




「?」


生徒会長は自分を見つめている
少女の顔を改めてよく見てみる。


「あ、あら?」


見ているものに対して、
脳の理解が追いつかない生徒会長。


「も、もしかして、
い、犬女さん!?」


「…わん」


犬女ちゃんは小さな声で、
返事をするように鳴いた。
まるで「お久しぶりです」とでも
言っているかのようだ。




「えぇぇぇぇぇっ!」


生徒会長は思わず、
大きな声で叫ぶ。


「シーッ!」


純心は人差し指を口の前に当てる。
せっかく目立たないようにしてきたのに、
これでは一気に店中から注目を浴びてしまう。


犬女ちゃんも、
手袋の指を口の前に当てて
純心の真似をする。


しばらく生徒会長は
鳩が豆鉄砲をくらったような顔で、
驚いたまましばし固まっていた。


-


そもそも純心も
まさかこんなファミレスで、
生徒会長に遭遇するとは
思っていなかった。


お嬢様ほどではないにしても、
それなりにセレブイメージの生徒会長と
庶民的なファミレスというのが、
どうも結びつかない。


「あら、
私ここのチョコレートパフェが、
結構気に入っておりましてよ。」


「どうしても食べたくなったときに、
よく一人で食べに来るのでしてよ」


『あんたは学校に友達いないのか?』


学校の友達が少ない純心が
言えた義理ではないのだが。


犬女ちゃんも
ここのチョコレートパフェが
気に入ったようだし、
そんなに美味いのか、とも思う。


-


ファミレスの同じ席に座った
生徒会長に純心は事情を説明した。


犬女ちゃんのことを
見慣れている生徒会長ですら
人間女性と見間違えたのだから、
もうおそらく他の人に
見破られるようなことはないだろう。
よほどじぃっと見られたりしたら
また別なのかもしれないが。


最近は生徒会長もすっかりデレて、
ポンコツ化して来ているから、
そこも当てにしてよいのか
わからなくもあるが。


-


「あなた、ここ数日
そんな実験みたいなことを
していらしたのですって?」


確かに人間に変装した犬女ちゃんが、
どれぐらい人間と
同じように生活出来るのか、
どこまで人間として
偽ることが出来るのかを
見極めようと試みていたのだから、
実験をしているとも言えた。


ただもっと根本的な部分として、
犬女ちゃんを社会がどう受け止めるか、
という社会実験のようなことが、
ここまでずっと続いて来ているのだ、
少なくとも純心が感じる中では。


-


「でも、これは好都合でしてよ…」


生徒会長は意味深な発言をする。


「まだ今は言えませんけど、もう少ししたら、
きっとあなたが驚くようなことが起きましてよ」


『まだ言えないなら言うなよ!』


以前、母と二人で何かやっていたから、
おそらくそのことだろうと、
純心にも察しがついてはいた。


しかしあの母親も自分には何も言わずに、
海外の戻って行ってしまったし、
どうなっているだろう、とも思う。
今はまだ公表するわけにはいかないということか。


-


純心がそんなことを
あれやこれや考えて、
気が付くと
犬女ちゃんは生徒会長と仲良く
またチョコレートパフェを食べていた。


「やはり女子にはスイーツが必要ですわよ、
ここのチョコレートパフェは美味しいですし、
ボリューミーで食べ応えがありましてよ、
ねえ犬女さん」


「…わん」
犬女ちゃんは生徒会長にだけ
聞こえるように小声で鳴いた。
おそらくその意見に
同感だったのだろう。


『お前、また太るぞ』













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