犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと変身(2)

「できたよー」


ニヤニヤと少し気味が悪い
笑みを浮かべながら、
夏希が部屋の扉を開ける。


純心が部屋に入ると、
そこには長い黒髪の
清楚な美少女が立っていた。


上半身は長袖の白いブラウスを着て、
ロングスカートを履いて、
脚にはおそらく
スクールソックスだと思われる
靴下を履いている。


そして、
おそらくは夏希が工夫して
細工をしたのであろう靴を履き、
手には白い手袋をしている。




なんだか、まったく
別人なのではないかと思える。
犬女ちゃんではなく、
本当の人間の少女ではないかと。


もしくは誰かが魔法を使って、
犬女ちゃんを本物の人間に変えてしまったか、
人間に転生させてしまったのではないだろうか。


純心がそう思ってしまうぐらいのレベルで、
犬女ちゃんは見事なまでに変わっていた。
もうこれは変装のレベルではなく、
変身したのではないかとすら思える。




そして、純心は
見た目が人間そのものであるため、
つい彼女が人間の言葉を
話すのではないかと期待してしまう。


別に話せない犬女ちゃんが
嫌だということではない。
ただこれまで何度となく
犬女ちゃんが喋ることが出来たら、
どれほどいいだろうかと思って来たのだ。


純心のいつもと違う熱い視線を感じ、
少女は顔を赤らめている。
まるで恥じらっているかのようだ。
一度人間のように思いはじめると、
仕草まで人間らしく見えて来てしまう。




だが、その少女は
小さな声でワンと鳴いた。
やはりその少女は犬女ちゃんだった。


純心は事実を確認すると、
がっかりするというより、改めて驚いた。


『ここまで女というのは変わるものなのか』
『女って本当にコワイな』


それが純心の一番正直な
感想だったかもしれない。


-


それから純心は再び、
頂点に達した疑問を
夏希に投げかけた。


「下着はお前のなの?
絶対サイズ合わないと思うんだけど」


これでも純心なりに、
遠まわしに聞いたつもりだ。


「あ、ブラのことでしょ?
あたしのじゃ全然入らないから、お母さんのだよ。
犬女ちゃんすごい胸大きいんだもん」


「て、な、なに言わすのよー!」


夏希は顔を真っ赤にしてぷんぷん怒った。


『ですよねー』


絶対夏希のじゃ無理だと、
確信していた純心だった。


-


人間に変装して、
お出かけするには、
もう一つ大きな問題があった。
名前である。


『犬女ちゃん』という
種族名称が付いた名前を、
人前で呼ぶのは、自ら正体を
ばらしているようなものである。


「うーん、そうだなー」


「じゃぁ、
『いぬ』の『い』、
『おんな』の『お』で、
『イオちゃん』でよくない?」


夏希が雑に付けた割には、
結構いい感じであったため、
純心もすぐに賛成する。


「いいな、イオちゃんかぁ」
「お前は、どうだ?」


人間の少女のような
犬女ちゃんに純心が尋ねると、
少女はワンと鳴き声をあげた。
嬉しそうな表情から察するに、
どうやら気に入って
もらえたようである。


目の前にいる人間の少女が、
ワンと鳴いていることに、
まだ少し違和感を感じる純心。
これが不気味の谷現象という
ものなのであろうかなどと思う。




こうして変装した犬女ちゃんのときは、
人前では『イオちゃん』と呼ばれることになった。


そしてイオちゃんが
人間社会にどれぐらい適応出来るのか、
奇妙な試みが、この後しばし続くことになる。











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