犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと二人きりのプール

お嬢様の別荘には、
プールが付いていた。


せっかく海に来ているのに
おかしな話ではあるが、
純心は、犬女ちゃんをプールに
入れてあげたいと思っていた。


公共のプールに犬女はまず入れない。
入場禁止になっている所がほとんどだ。


人間よりも手足などに毛が多いし、
抜け毛が不衛生だと言う人が大勢いるのだ。


人間も水中に潜れば、
髪の毛は抜けるわけだし、
何が違うのだという話になるが、
衛生面で不快に感じる人がいる以上、
公共のプールでは入場を
認めるわけにはいかない。




これは、電車などの公共交通機関、
飲食店、スーパーマーケット、その他店舗など、
同じように犬女が立ち入れない場所は多い。


犬女ちゃんと一緒に、
いろんなところに行ってみたい、
一緒にいろんな体験をしたい。
純心はいつもそう思っていた。


お嬢様はそんな純心の心中を察してか、
二人でプールに入ったらどうかと勧めてくれた。
自分も昔愛犬と一緒にプールに入ったことがある、
という内緒の話もしてれくれた。


-


みんなには海に行ってもらい、
純心は犬女ちゃんと
二人きりでプールに入ることにする。


プールは、純心のヘソまでぐらいの深さだった。
犬女ちゃんが、四足であれば完全に水中だが、
二本足で立てば、十分足が付くぐらいの深さであり、
純心が注意していれば溺れるような心配は、
なさそうだった。


純心が犬女ちゃんを
抱っこした状態でプールに入ると、
犬女ちゃんは純心にもたれかかりながら、
二本足でプールに立った。
それだけ見れば普通に
人間の男女カップルのように見える。


二人はプールで再び泳ぐ練習をはじめる。


塩辛くないし、波もないし、
水中でも澄んでいてよく見えるし、
犬女ちゃん的にはプールのほうが泳ぎやすかった。


-


仰向けになって足を
ゆっくりバタバタさせていると、
それだけでも沈まないことを発見した
犬女ちゃんは、その状態が気にいったらしく、
しばらく仰向けになって
プールにぷかぷか浮いていた。


そのまま水中に沈むと、
水の中に包まれているような
不思議な浮遊感があった。


水中から見上げた空は、
ゆらゆら揺れていて、
太陽の光が差し込んで、
きらきらして綺麗で、
犬女ちゃんもなんだか
懐かしいような気持ちになる。




純心も真似をして
水の底に沈んで、じっと空を見上げてみる。
なんだか妙に落ち着いた気持ちになる。


母親の胎内に、羊水の中にいたときは、
こんな感じだったのだろうか。
であれば、あの太陽の光は、
胎内から出るときに見たであろう、
外の世界に向かって行く光になるのか。
純心はなんとなくそんなことを思う。


-


あまりに浮かんでこないので、
純心は手を伸ばして
犬女ちゃんを引き上げようとする。


犬女ちゃんからは、まるで空から
純心の手が伸びて来るように見えた。
太陽の光できらきらしている純心が、
手を伸ばして抱きしめてくれるように。


純心が引き上げると、犬女ちゃんは
二本足で純心にもたれかかって立った。
本当に人間の女性のようで、
いつも以上に純心はどきどきしている。


犬女なのだが、
まるで美しい水の精霊か
何かのようにも思える。


大きな瞳を潤ませて
純心を見つめる犬女ちゃん。
昨晩、キスしたくなったことを思い出す純心。
今は二人きりだし、少しぐらいはとも思う。
犬女ちゃんも何かを察したのか、
目をつぶって、可愛らしい唇を
突き出して待っている。




「みなさん、早く来ないと、
なんかいい雰囲気になってるみたいですよ。」


愛ちゃんがこちらを指して叫んでいる。
海に行った夏希、お嬢様、生徒会長、愛ちゃんが、
こちらの様子を見に来たようだ。


「アイスの差し入れ持って来たよー」


「まぁ犬女さん、泳ぎが上手になりましたわね」


「し、心配になって来たわけではなくてよ、
プールでも泳いでおこうかと思っただけでしてよ。」


いいところを邪魔されて残念だったが、
それでも群の仲間、
みんなと一緒にいるのも、
犬女ちゃんは大好きだった。


-


人数が多いため分かれて、
夕方になる前に、
それぞれが帰宅の途に着いた。
純心母が運転する車に乗っている、
純心、犬女ちゃん、愛ちゃん五姉妹は
帰りはすっかり遊び疲れて寝てしまっていた。


こうして一泊二日の海水浴旅行は、
純心と犬女ちゃんの新しい思い出となった。













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