犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと海水浴(3)

「犬女さんて泳げるのでしょうか?」


生物全般に興味を持つお嬢様が疑問を投げかけた。


犬女ちゃんはお母さんと一緒に、
砂浜でちびっ子達と遊んでいる。


小さい頃、海に行った記憶を
徐々に思い出して来ていた純心だったが、
犬女ちゃんが泳いでいた記憶はない。


その思い出の中では、
自分も浮輪をつけていたから、
当時の犬女ちゃんも
泳げなかったかもしれない。


その後、泳げるようになる機会も
おそらくなかっただろう。
年老いたおばあちゃんが、
犬女ちゃんを海水浴に連れて行くとも思えない。


そもそもおばあちゃんに大事に育てられた
箱入り犬女ちゃんなのだから、水難事故を怖れて、
川の近くにすら行ったことがないかもしれない。




「手の指が極端に短いから、
人間みたいに水をかくのが
出来ないんじゃないかなー」


「犬みたいに、
犬かきなら出来るかもしれないけど、
手足の構造が人間に近いから、
それでも長い距離は難しいんじゃないかなー」


スポーツ科学に興味がある夏希らしい意見だ。


後で犬女ちゃんを連れて
海に行ってみようと純心は思う。






波打ち際に立つ純心と犬女ちゃん。
それぐらいは全然問題なかった。
純心がどんどん海に進むと、
犬女ちゃんはそのまま立ち止まり、
吠えて純心を呼んでいる。


仕方ないので、純心は犬女ちゃんを
抱っこした状態で海に入って行く。
純心にしっかり抱き着いて、
少し不安そうな犬女ちゃん。


それでも海中は、犬女ちゃんにとっても
気持ちがよいらしく、だんだんと慣れて来る。


純心に抱っこされた状態で、
思い切り甘えて、海中を進むのは、
犬女ちゃんにも嬉しかったようだ。


普通の海やプールでも、浮輪やゴムボートで、
密着しているカップルがよくいるが、
犬女ちゃんの気分的にはあんな感じなのであろう。


知らない人が見れば、
完全に海中で密着している
ラブラブカップルにしか見えないだろう。


純心が泳げるかどうか試すために、
手を離し、犬女ちゃんを体から離そうとするが、
犬女ちゃんは体をくねくねさせながら、
いやいやして離れようとしない。


何度も純心が言い聞かせて、
ようやく純心から離れる犬女ちゃん。


しばらくは頑張って犬かきをしていたが、
すぐに沈みはじめ、必死の抵抗もむなしく、
海中にぶくぶく沈んで行く。


純心が海中から引き揚げてあげると、
ぷはーっと息を吐いて呼吸する犬女ちゃん。


どうやら泳げるとは言い難いようだ。


それでも純心は、この先水難事故などで、
泳ぎが必要になることがあるかもしれないと思い、
しばらく犬女ちゃんと泳ぎの練習をしていた。






その後、犬女ちゃんは、
基本的に浮輪をつけて、
海に入るようになっていた。
やはり暑いところにずっといると、
時々海に入りたくなるらしい。


「犬女ちゃんが浮輪してるの可愛いねー」


「ええ、とても可愛らしいですわ」


みんなに可愛いと言われて
犬女ちゃんは嬉しかったが、
それでも純心に抱っこされたまま海に入る
ラブラブカップル風のほうが、ずっとよかった。













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