犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと夏祭り(2)お神輿

「この子が姐さん家の犬女ちゃん?」


女神輿と言うだけあって、
集まったのは全員女性であった。
安易にカメラマン担当を
引き受けてしまったことを後悔する純心。
女性しかいないところに居るのが、
どうにも居心地が悪い。


そしてなぜか純心母は
地元の人達から姐さんと呼ばれていた。


「また随分と美少女な犬女ちゃんだねえ」
「純ちゃんもこんな娘と二人きりじゃ
間違いでも起きちまうんじゃないかい?」


女衆達はそう言って笑った。
割と年がいった女の人は意外に下ネタが好きだ。


「よしておくれよ、この子達は小さい頃から
一緒に育った兄弟みたいなもんさね。」




犬女ちゃんが珍しくて、
成人男性だけで担ぐ大人神輿の男衆も寄って来る。


「へえ、これが姐さんところの犬女かい」


「それに一体どうしたんだい、
この美少女ちゃん達はよ。」


夏希、お嬢様、生徒会長は、
純心同様に場に入れずに
隅っこで小さくなっていた。


「純心のガールフレンドなんだよ。
あたしに似てモテまくってんのさ。」


母親は冗談めかして言った。


「純ちゃん、それじゃハーレムじゃねえか。
若いってのは羨ましいねえ。」


地元の人達に会うたびに、
毎度そんな話が繰り返された。
このままでは、地元の人達から、
そのうちハーレム小僧と呼ばれそうな勢いだ。


純心は、その性格からして、
こうした地元の人達との
コミュニケーションが得意ではなかった。
そもそもまともな人間関係を築くのが、
苦手なのだから仕方がない。


こっちに引っ越して来てから、
地元の子供会などのイベントで、
地元の人達の顔は知っていたが、
まったく馴染むことは出来なかった。




「もしあたしがいない間、
何かあったら、この子達のことを、
よろしくお願いします。」


母は毎回そう地元の人達にお願いしていた。


「まぁ、なにか困ったことが
あったらいつでも言って来な。」


確かに母が戻ってしまって、何かあったら、
夏希家のおばさん以外に
頼れる大人がいればありがたい。
でも何も返せるものがないのに、
無暗に他人に甘えてしまっていいのか、
とも純心は思う。






女神輿の本番。
犬女ちゃんは神輿の前に位置取り、
威勢のいい掛け声に合わせて吠えている。


純心はカメラのファインダー越しに、
女性達の輝いている瞬間を見つけていた。




お嬢様は純心の想像通り早々にヘタレた。
担いでいる時間はわずかなもので、
後はひたすら付いてまわるだけだった。


それでも一生懸命、汗をかくお嬢様を
見たことがなかった純心は少し感動した。
純心母も休憩のときに、
様子を見て、気づかっていた。




生徒会長も頑張ってはいたが、
やはり体力不足で最後はヘロヘロだった。
生徒会長がこれだけ必死に
汗をかいている姿も
純心には新鮮だった。




夏希にはやはり汗がよく似合う。
息を弾ませ、顔を紅潮させ、
汗が太陽の光で光って見える。
純心には眩しくすら思える。




祭りの活気に野生の本能を呼び起こされたのか、
犬女ちゃんもいつもと顔つきが違っていた。
いつもの甘えん坊な犬女ちゃんとは、
まったく違う犬女ちゃんの一面だった。




女神輿が終わった後、女子は、
高揚感からなのか、達成感からなのか、
まだ興奮冷めやらぬといった感じだ。


「体力のなさを痛感いたしましたわ。
でもみんなと一緒になって、テンション上がって、
とても楽しかったですわ。」


「べ、別に私は疲れてなどいなくてよ。
気分が高揚して、何かから解放されたみたいで、
とっても気分がよろしくてよ。」


「やっぱりおばさんはかっこいいよねー
あたしもおばさんみたいに、
かっこいい大人の女になりたいよなー」


「それだけはやめておけ」
純心は苦笑した。


あの人はいろいろと豪快過ぎる。
あんな人が周りに二人もいたら、
たまったものではないと純心は思う。


それでも、一番凛々しくて、力強て、
かっこよかったのは純心の母だった。
まるで過去にツライことなど
なかったかのように、活き活きと生きている。
本当に強い人だと、そんな母を見て思う純心だった。











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