犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとヘアカット

「お前、髪伸びたんじゃないか?」
純心は犬女ちゃんを
改めて見て思った。
やはりはじめてこの家に
来た頃より髪が伸びている。


おばあちゃん家から持って来た
犬女ちゃん関連のグッズに、
ヘアカット用のすきバサミと
くし、ケープが入っていたのを
純心は思い出した。


ということは、
普段はおばあちゃんが
カットしてあげていたのだろう。


純心は、犬女ちゃんの髪を
カットしてあげることにする。


人間の女の子であれば、髪が長いのも
純心の好みではあったが、
長い髪は、犬女ちゃんが
動く際になにかと邪魔だった。




おばあちゃんと暮らしていたときは、
犬女ちゃんの髪はいつも
おばあちゃんが、切ってくれていた。
ショートカットなのもおばあちゃんが、
犬女ちゃんが動きやすいようにと
考えてのことだった。


犬女は髪が長くなると、
髪で顔が隠れて、視界が狭くなる。
自ら髪を束ねることも出来ないため、
本人達も非情に鬱陶しそうにしている。
自ら髪を歯で噛みきる犬女もいた。


その見た目はまるでホラー映画に
出てくる幽霊のようであり、
そうした野良犬女が
突然飛び出してくると、
心臓が止まるかと思うような、
なかなかの恐怖体験が味わえる。


犬女ちゃんが年頃になってから、
おばあちゃんが犬女の美容室に
連れて行ってくれ、
プロのトリマーに手入れを
してもらったことがあった。
おばあちゃんは、人間の女の子と同じように
おしゃれさせてあげたかったのだろう。


おばあちゃんは、
やっぱりプロがやると違うねえと感心していた。
確かにいつも以上に可愛くなっていたが、
犬女ちゃんは、おばあちゃんに
切ってもらうほうが好きだった。
おばあちゃんに優しく髪を
撫でてもらいながら、
切られるのが好きだった。




純心は、縁側に犬女ちゃんを呼んだ。
ケープを見て察したのか、
大人しく縁側に座ってじっとしていた。


頭からケープを被せ、
霧吹きで犬女ちゃんの髪を濡らす純心。
ここまでは自分が髪をカットしてもらうときに
されることだからわかる。


しかしそこで手が止まる。
犬女ちゃんの、
どこまでが頭で、
どこからが耳なのか、
よくわからないのだ。


適当にカットをはじめて、
耳でも切ってしまったら、
大変なことになる。


純心は犬女ちゃんの頭と髪を
慎重にかき分けながら確認する。
犬女ちゃんは、頭を撫でてもらっていると
勘違いして、尻尾を振って喜んでいる。


純心は一回一回丁寧に、確認しながら、
髪を撫でるようにくしですいて、
カットしていった。


純心はおばあちゃんと同じ匂いがするから、
おばあちゃんに優しく髪を
撫でてもらいながら、
切ってもらっているようで、
犬女ちゃんは嬉しかった。




次の日、昼休みに学校の屋上で、
純心と夏希とお嬢様が集まって、
ヘアカットの話をした。


学校の友達がいるために、
わざわざ三人が学校で
一緒にお昼を食べることは
ほとんどないのだが、
ヘアカットのことを忘れないうちに
二人に聞いておうこと思って、昨晩のうちに
純心がLINEで連絡していたのだった。


「この辺に犬女さん用の
美容室はありませんわね」


「ここも、たいがい田舎だかんね」


「私は犬用のプロのトリマーに
やってもらうのがいいと思いますわ。
人間と犬女さんでは勝手が違うでしょうし、
もしかしたら危ないかもしれませんわ。」
お嬢様は獣医を目指しているだけあってか、
犬用の美容室をおすすめして来た。


「あたしは人間の美容室かな。
犬女ちゃん、アイドルみたいに可愛いし。
きっとすっごく、可愛くしてもらえると思うんだ」
夏希はルックス重視で、
人間の美容院をおすすめして来た。


二人が例によって、
ああでもない、こうでもないと、
ずっと言い合いをしているのを聞いている内に、
だんだんと面倒臭くなってくる純心。


「もうこの際、電動バリカンで、
坊主みたいにカットすればいいんじゃないかな」
なんだか面倒臭くなってきた純心。


「髪は女の命ですのよ、そんなことしたら可哀想ですわ!」
「そんなことしたら絶対許さないからね!」
女子二人に物凄く怒られてしまった。


純心は犬女ちゃんを可愛いが
やはり犬に近い存在だと思っており、
女子二人は、女の子だと思っていた。
その違いだろう。




三人がそんな話をしていると、
屋上の反対側にある入口から、
生徒会副会長の今生河原ルイが上がって来た。


「あら、純心くん、見ーつけた」
ルイはいじわるそうな顔で笑みを浮かべた。


楽しそうにしている純心達の様子を
ルイは入り口付近に隠れてしばし眺めていた。
遠すぎるため何を話しているかは
聞こえなかったが、
仲が良さそうなことだけは伝わった。


「いつの間にかあんなハーレムつくちゃって。
なんだかとっても楽しそう。
会長に怒られちゃうわねえ、ふふふ」
ルイはいじわるそうな顔で笑みを浮かべていた。

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