犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんとお洋服(4)

その後、商業施設で
ご飯を食べたり、
犬専用のショップで買い物をしたり、
アイスを食べたりして、
休日を楽しんだ一同は、
純心の家に帰って来ていた。


みんなでお茶をしてくつろいでいると、
犬女ちゃんが夏希に向かって、
右手を突き出して来た。


「うん? お手?」
夏希は不思議に思ったが、
改めてよく見ると、
犬女ちゃんの右手には
今日買ってもらった
新しい服が引っかかっている。


「これ、夏希さんに着てみせてと
言ってるんじゃないですか?」
お嬢様は犬女の気持ちが
わかるスキルでも持っているのか。


以前、夏希が犬女ちゃんの真似をしたのが、
犬女ちゃんにはとても面白かったらしく、
夏希にまたやれと言っているのだ。


犬女ちゃんの服である、ショートパンツに、
ノースリーブのへそ出しジャケットに着替える夏希。


「あたし結構こういうの平気なんだよね。
陸上のユニフォームとか意外に露出度高いからさ」


「確かに露出度高いなあれ。ヘソとか出てるし。
動きやすいようにってことなんだろうけど」
そう考えると犬女用の服は
理にかなっているのかもしれない。


犬女ちゃんはお嬢様にも、
服を口に咥えて持って行き、押しつけた。


「え、あたしも着るんですの?」
お嬢様は顔を赤くして恥ずかしがる。
さっきまでの勢いはどこへ行ったのか。


夏希は、さっきのはずかしめの
お返しとばかりに、お嬢様を挑発する。
「あれ、犬女ちゃんのお願いなのに、
断っちゃうの?」


「も、もちろん、やりますわ。
犬女さんがせっかく
すすめてくださったんですから」
またお嬢様に再度変なスイッチが入ってしまった。


「私こんな露出が高い服着たことありませんわ」
着替えた後、恥ずかしそうにもじもじしているお嬢様。


「おお、いいねえ」
夏希は喜びながら、お嬢様の写メを撮りまくる。




今度は犬女ちゃんが夏希に向かって、
左手を突き出して来た。


「うん? おかわり?」
夏希がよく見ると、
今度は、先ほどお嬢様が買ってくれたアダルトな服が、
犬女ちゃんの左手に引っかかっている。


「え?」


「こんなエロいの、あたし着るの?」
夏希は顔を真っ赤にしている。


「あら、犬女さんのせっかくのご好意を、
無駄にされるんですか?」
ここぞとばかりにお嬢様が反撃する。


結局アダルトな衣装を着ることになる夏希。
犬女ちゃんにお手とおかわりを
躾けられてしまった夏希であった。


「いいですわね。
せっかくなので写メいっぱい撮っておきますね。」
お嬢様も意外に容赦がなかった。


夏希に再度反撃され、
お嬢様もアダルトな衣装を着せられてしまう。


「なんだかよくわかりませんが、
今までで一番恥ずかしいですわ。」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるお嬢様。


とりあえず、何に使うかはわからくても、
着ると恥ずかしい衣装ということだけは、
お嬢様にもわかってもらえたようだ。


純心の不安は結局的中してしまった。
『なんで、この二人が揃うとこうなるかなぁ』
そう思いつつ、一応二人の写メを撮りまくっていた。


犬女ちゃんは、
二人に言うことを聞いてもらえて、
嬉しくてワンワン吠えていた。


*****


純心は今まで犬女ちゃんが着ていた
小さくなった服をどうするか思案する。


「新しい服も買ったし、
小さくなった服は、
リサイクルのバザーにでも出すかな。」


犬女ちゃんはその純心の言葉がわかったのか、
純心が手に持っていた服を、口で奪い取り、
咥えてどこかへ行ってしまった。


みんなが犬女ちゃんを追いかけて行くと
犬女ちゃんは、家の庭の片隅に、
穴を掘って、純心が処分しようとしていた服を
隠して、埋めてた。


犬女ちゃんにとっては、
おばあちゃんに買ってもらった、
おばあちゃんの匂いが着いた
思い出の服であり、宝物だった。


「きっと亡くなったおばあさまが、
買ってくださった服は、
犬女さんにとっては、
ずっと大切にしたい宝物なですわ。」
お嬢様はその健気な姿を見て涙ぐんだ。


「あたしもちょっと感動しちゃったよ。
純心、小さくなった服も、取っておいてあげなよ。」
夏希も潤んだ目を指で拭った。


「そうだな、取っておくか」




その後、純心は、小さくなった犬女ちゃんの服を、
箪笥の一番下の引き出しにまとめてしまった。
犬女ちゃんが開けられるように、
引っ張るための紐もつけてあげた。


「お前の宝物、おばあちゃんとの思い出は、
ちゃんとここにしまったからな。」
純心が犬女ちゃんにそう言うと、
犬女ちゃんはワンと一鳴きした。


それから犬女ちゃんは、
ときどきその引き出しを開けて、
おばあちゃんの匂いと、
おばあちゃんと楽しく過ごした日々を思い出していた。



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