犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)

ウロノロムロ

犬女ちゃんと女の戦い(1)

翌日の朝、いつものように犬女ちゃんの散歩で、
純心はお嬢様に会った。
その際に夏希のことを話した。


お嬢様に口止めをしておいて、
自分が他の人にばらしてしまったのは、
少し申し訳ない気がしていたからだ。


純心は、犬女ちゃんの散歩には、
学校の人間にばれないように、
変装して行くようにしていた。




「まぁ、そうでしたの。
そういうことなら
私にご相談くださればよかったのに。」


純心は少し意外だった。
大型犬の世話も、
きっと使用人がしているのだろう
と思っていたぐらいなので、
犬女ちゃんの世話をお嬢様が自ら進んで
やりたがるとは思っていなかった。




「こう見えても私、将来獣医に
なりたいと思っているんですの。」


「純心さんと同じ学校に転校してきたのも、
獣医学部がある大学への
指定校推薦枠があるからなのですよ。」


「前の学校は、名門女子高だったので、
そういう大学への推薦がなかったんですの。」


純心はさらに驚いた。
これだけのお嬢様が、
将来の夢をしっかり持っていたことに。
働かなくても、暮していけそうなものなのに。
むしろ動物病院を経営出来そうなぐらいの
ご令嬢であるのに。


「すごいですね。
俺なんて将来について、
まだ何も考えてないですよ。」
純心は素直にお嬢様に感心した。
もっと箱入り娘のお嬢様なのかと思っていた。


「私の亡くなったお母様が、
元看護師でしたので、私も人の役に立つ
お仕事に就きたいと考えていましたの。」


「お父様が病院に入院していたときに、
お母様と知り合ったそうなのですよ。」


お嬢様は嬉しそうに、純心に、
家族のことをいろいろ話した。


そして、次の土曜日に、純心の家に来て、
犬女ちゃんをお風呂に入れてくれることになった。






犬女ちゃんのお風呂当番が
バッティングしないよう、
純心が夏希にその話をしたら、
夏希も家に来ると言い出した。


「あたしも午後、
部活休みだから、
純心の家に行くよ」
当然ながら夏希は、
お嬢様と純心を、
家に二人だけするわけには
いかないと思っていた。


というわけで、次の土曜日に、
純心の家に、お嬢様と夏希が来て、
犬女ちゃんをお風呂に入れてくれることになる。






土曜当日。
純心は生徒会長の薫に呼び止められる。


「ちょっとあなた。
あなた、新入生歓迎イベントの実行委員でしてよ。
今日の午後はその準備ですから、
ちゃんと体育館に集まってくださいね。
事前連絡をしておいたのに、
お忘れになっているのではなくて?」


「あれ?
自分は確かに実行委員ですけど、担当違うんで、
今日のメンバーの中には入っていなかったです。
連絡も来てませんでしたし。」


「そんなわけありませんことよ。
今日は全員参加ということに。
先ほどそう変更になりましたのよ。」


用があることを主張する純心であったが、
抵抗虚しく、生徒会長に連れ去れてしまう。


仕方なく、お嬢様と夏希には、
帰りが少し遅くなることを言って、
先に家に上がっていてもらうことにする。






夏希が純心から預かった家の鍵で、
玄関のドアを開けようとしたとき、
ちょうどお嬢様も純心の家に到着した。


学校中の男子が大騒ぎしていたから、
美少女であることは知っていた夏希だが、
実物を見て、お嬢様の美しさにやはり驚いた。


「本日はよろしくお願いいたしますね。」
お嬢様は丁寧に夏希に挨拶をした。




夏希が玄関を開けると、
足音で人が来るのがわかっていた犬女ちゃんが、
お出迎えをしてくれていた。
人が大勢来てくれて、
犬女ちゃんは、尻尾を振って喜んでいた。

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