おっさんが転生したら、寝取られた元嫁と寝取った間男の息子だった件

ウロノロムロ

合体か否か。戦いはまだまだ続くんやで!(執念

合体か否か。


おかあやんの元旦那である
赤ちゃんの中のおっさんと
今の旦那であるおとうやんとの
男の意地をかけた熱い攻防戦は続く。


『やるか、やられるか』ではなく
『やるか、やらせないか』。


考え得る限り最低で、下劣で下衆げす
みにくひどいさかいではあるが、
嫉妬に狂ったおっさんの暴走は止まらない。


『人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ』
という言葉があるが、
一度死んだにも関わらずこれなのだから手に負えない。


普通の寝取り寝取られであれば、
単に殺伐とした修羅場、泥沼、致命傷で済むのだが、
元旦那のほうが今は赤ちゃんであるのだからややこしい。
もちろんおかあやんとおとうやんという立場になった
元嫁も元間男もそのことは知らないのだが。


-


おっさん赤ちゃんは、
おとうやんが仕事に行って、
家にいない昼間にひたすら寝まくった。


夜になっておとうやんが帰って来たら
いつはじまるかもわからない
夫婦の夜戦に備えるために。


お陰ですっかり睡眠サイクルが乱れ、
日中ずっと寝ていて夜に目を醒まして活動する、
成人にもありがちな夜型生活に変わってしまっている。


もう今では、おとうやんがおかあやんに
迫ろうとしている空気ぐらいは
すぐに感じ取れるようにまでなっていた。




  おう、またやな
  毎日毎日よう懲りずに突撃するもんやな


  よっしゃっ!
  泣いたろっ!!




「おぎゃぁぁぁぁぁ! おぎゃぁぁぁぁぁ!」


赤ちゃんがする本当の夜泣き、
その原因も不安を感じたり、興奮して寝付けなかったり、
刺激やストレスなどであることが多いので、
おっさん赤ちゃんが夜泣きする原因と
それほど変わらないはずなのだが、
夫婦の合体チャレンジに興奮して泣き出すというのは、
そこだけを聞くと変態度が高いように思われる。
しかしながら内容はだいたい合っているので仕方がない。




「この子、なんでこんなに
夜泣きがひどいんやろか……
病気とかと違うかしら……」


赤ちゃんの夜泣きを心配しているおかあやん。
まさか我が子が自分達夫婦の合体チャレンジに
興奮して泣いているとは思いもよらないだろう。
もし知ったところでがっかりするだけであろうから、
やはり世の中には知らないほうがいいことは多い。


赤ちゃんを心配するおかあやんは、
病院の検診の時に相談したり、
近所のママトモに聞いたり、
ネットで調べたりして
赤ちゃんの夜泣きを止める方法を懸命に調べる。
親の心、子知らずとはよく言ったものだ。


-


いろんな人から聞いた夜泣き対策を試す
おかあやんとおとうやん。


「よしっ、今日は俺が風呂に入れてやるからな」




  ボケェ
  なんでお前と一緒に風呂入らなあかんねん!
  泣くぞ!コノヤロー!




  男同士で全裸で抱き合って風呂入るとかキモイんじゃ!


  ハッ!
  ま、まさかお前そっちもイケるんとちゃうやろな?


  そ、そうなんか?
  女だけでなく男も好きとか、両刀使いとか
  薔薇の園でアーッ!みたいな感じなんか?




おっさん、時々自分が赤ちゃんであることを忘れるらしい。


いや、おっさんの立場からすれば、
自分の嫁を寝取った相手の男に全裸で抱かれているのだから、
この男が性の野獣なのではないかと恐れおののいたとしても無理はない。
客観的に見れば赤ちゃんがお父さんと一緒にお風呂に入るだけなのだが。




「おぉ、いいお湯でちゅねぇ~
今日はよくあたたまりましょうねぇ~」


おとうやんは我が子と一緒にお風呂に入るのが嬉しいのか、
やたらと赤ちゃんに話しかけてみる。
しかも赤ちゃん言葉で。




  ホンマ、鬱陶うっとうしいやっちゃ
  イチイチ赤ちゃん言葉で話かけて来るの止めろしー


  ただでさえイラッとすんのに
  余計にイライラするんじゃぁ




大人が赤ちゃんに話かける時、
赤ちゃん言葉になるのはみなそうなのだが、
中のおっさんからすればもう単なるアホにしか見えない。




  なんや、今日のお湯
  いつもよりちょっとだけ熱めとちゃうか?


  コイツ好みの湯加減なんか?


  まぁワイも前世では
  熱めのお湯のほうが好きやったけどな


  ……


  なんや、今日いつもより
  お湯に入ってとる時間長くないか?


  まぁワイも前世では長湯するほうやったけどな


  ……


  …… ま、まさか


  ちょっとだけ熱めのお風呂に
  ちょっとだけ長く入れるだなんて……


  なんちゅう卑劣な手段を……


  さては、ワイを疲れさせて
  体力を奪って眠くさせる気なんやな?


  クソッ! 卑怯やないかっ!
  外道かっ! お前は鬼畜かっ!


  こんなん、幼児虐待やでっ!
  いや、乳児虐待やなこれは
  人権擁護団体に訴えたるからなっ!




都合がいい時だけ赤ちゃんの立場を振りかざすおっさん。


おっさんはどうあってもこの世界が
幼児虐待で満ち溢れているということにしたいらしい。
煮えたぎった熱湯風呂に
無理矢理入れられるとかならともかく、
これではお風呂に入っている子供に
『温かいお湯によく浸かって、よく温まりなさい』
と注意する親はみんな
幼児虐待で逮捕されてしまうことになってしまう。


「おぎゃぁぁぁぁぁ! おぎゃぁぁぁぁぁ!」


-


お風呂から出てオムツとパジャマを着せてもらい、
おかあやんのおっぱいを飲んで一息つくおっさん赤ちゃん。




  ぷはぁっ~
  やっぱり、お風呂上がりのおっぱいは最高やでぇ




もう結構満足しているおっさん赤ちゃんだが、
おかあやんはまだおっぱいを飲まそうと
口の中に乳房を突っ込んで来る。




  なんや、まだ飲んだほうがええんか?
  あれなんか?
  お嫁ちゃんおっぱい張って痛いんやろか?
  そりゃ、飲め言われたら、ワイは飲むで
  お嫁ちゃんに搾乳さくにゅうなんぞ、させられへんからな




「たっくん、ようく飲むんやで
たくさん飲んだら、お腹いっぱいになって、眠くなるやろし」




  な、なんやてぇ……
  お嫁ちゃんまでワイのことを寝かそうとしとるんかいな?


  ショックや、ショックやでぇ……


  そんなにワイが夜起きとるんがあかんのかいな?
  ワイが夜泣きするんが、そんなに嫌なんかいな?




そこは赤ちゃんも規則正しい生活を送ったほうが良いに決まっている。
しかしながら嫉妬に狂うおっさんに、
その道理が通じるはずもなく、
おかあやんとおとうやんの頑張り虚しく、
その日の晩も夜泣きをされることになる。


-


それからも毎晩夜泣き対策を試し続けるおかあやん、
我が子の夜型生活を直そうと必死に。
おとうやんも協力的ではあるが、
子を想う母の気持ちには若干及ばない。


「赤ちゃんがリラックス出来るような音楽を
寝る時に流してあげるといいみたいやで」


「なるほどな、大人でも環境音楽とか聞いてると眠くなって来るもんな」




  クソっ、今度は音楽でリラックス作戦かいな
  いろんなこと考えるもんやな




しかしおとうやんが流したのはムーディーでメロウな曲。
静かな曲ではあるの、これはこれで間違いではない、
普通であれば聞いているうちに寝てしまうのかもしれないが。


「なんか、随分しっとりとした曲やね……」


「いいだろ、このサックスの音色とか」


おとうやん、おかあやんの手を取り、その目をじっと見つめる。
おとうやんの目を見つめ返すおかあやん。


むしろおかあやんとおとうやんが
いい雰囲気になってしまている。




  なんでワイ寝かそうとして
  ええ雰囲気になっとんのや!
  自分らやっぱりポンコツやろ?


  あぁ、あれか?
  サックスとセックスって駄洒落か?
  オモロないんじゃっ!ボケェッ!


  このままやとまた合体チャレンジがはじまってまうがな


  よっしゃっ!
  泣いたろっ!!




「おぎゃぁぁぁぁぁ! おぎゃぁぁぁぁぁ!」


「この曲、あかんわ、
気に入らないみたいやわ」


ムーディーな曲にエロい気分になっているカップルを見て
興奮して泣いているおっさん赤ちゃん。
なんとも酷い状況だがありのままのことなので仕方ない。




今度こそ小川のせせらぎのような環境音楽をBGMに流す。


しばらくすると赤ちゃんよりも誰よりも
真っ先におかあやんが寝落ちしてしまう。
赤ちゃんが毎晩夜泣きして、それをあやしているので、
おかあやんは最近すっかり寝不足になっていた模様。




  そやで、みんな大人しく寝てくれるんなら
  ワイかて泣いたりせんのやで




おかあやんのスースーという寝息を聞いて安心するおっさん。


だがしかしおとうやんはどうにもおさまりがつかないらしく、
何やらおかあやんの横でガサゴソしている。




  ま、まさか……


  こいつ寝ているお嫁ちゃんに変なことする気ちゃうやろな


  ああ……あれか? 


  ……あれやな、今流行はやりの嫁ニーいうやつやな


  ……あかんわ
  泣いたろっ!!




「おぎゃぁぁぁぁぁ! おぎゃぁぁぁぁぁ!」


赤ちゃんの泣き声でハッと目を覚ますおかあやん。
おとうやんは咄嗟とっさにその場に倒れるようにして寝たフリをする。


「つい、うとうと寝てしまもうたわ……」


ワザとらしく目をこすりながら
ちょうど今目覚めたような素振りをみせるおとうやん。


「お、俺も、ついつい寝落ちしてたな……」


「音楽もあかんのかしら……
ホンマどうしたら夜泣きしなくなるんやろうか」


「そ、そうだな、心配だな……」




  ウソつけ!
  お前そんな大して心配してへんやろ!


  お前はただ単に合体したいだけやろがっ!!




おっさんの執念の戦いはまだまだ終わりそうもない。











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