少子高齢化なので、異世界からの移民を認めます

ウロノロムロ

ぼ、僕をこのお店で働かせてください

夜の繁華街。
某所にあるオネエのお店。
世間からはよくオカマバーなどとも
呼ばれている店だ。


お店のママ(男)が
一人の少年を入って来た。


「やだー、どうしたのその子?」


「ママの隠し子ぉ?」


開店前、店内にいた
十人近くのオネエが集まって来る。


この手のお店にしては人数も多いし、
比較的に大きなお店ではないかと思われる。


「お店の前につっ立てるから、
とりあえず中に入んなさいよ、って
言って連れて来たのよ」


ママが事情を説明すると
俯いていた少年は顔を上げる。


「あらやだ、ゾンビじゃない、
あたしはじめて本物見たぁ」


「えー、そうなのぉ?」


「やだー、ウケるー」


人数が多過ぎて
誰が何を言っているのかわからないが、
そこは大した問題ではない。




青白く血が通っていない、
ツギハギだらけの顔、
少年は間違いなくゾンビだった。


思いつめたような顔のゾンビ。


「ぼ、僕を、このお店で
は、働かせてくださいっ!


ゾンビが勇気を出して発した一言。


「ちょっと、どういうことなのよ?
詳しく話を聞かせなさいよ」


店のママはゾンビ少年の話を聞くことに。


「ぼ、僕、
ゾンビでこんな見た目だから、
人間に白い目で見られて、
陰でコソコソ言われたり、
そういうのがすごく嫌で、
自分に自信ないし、自分が嫌いだし……」


「で、でもテレビでオネエの人達見たら、
この人達、人と違うのに
なんでこんなに堂々としてるんだろうって、
それで自分もこういう風になりたいって思って……」


「ちょっとあんた、それ失礼じゃない?
あたし達は見た目がゾンビと変わらないってこと?」


「やだー、ウケるー」


「ご、ごめんなさい、
そういうことじゃないんです……
ひ、人の目を気にしないというか、
誰から何を言われても気にしないというか、
そういう人と違う自分に自信を持って、
生きているところを尊敬してるんですっ……」




「あんたね、
他人様がどう思うと、どういう目で見ようと、
あんたはあんたらしく、
堂々と胸張ってればいいのよ、
別に何か悪いことしてんじゃないんだから」


「よく考えてみなさいよ、
人間だって大概気持ち悪いの多いのよ?」


「ベトベトに脂ぎったデブだとか
ヨボヨボでしわくちゃの爺とか婆とか、
ブサイクにも程があるって男とか女とか、
そういうのいっぱいいるでしょ?」


「しわくちゃの爺とか婆とか、
よーく見るとただの妖怪じゃないの、アレ」


「みんな、見慣れちゃってるだけなのよ、
みんなそういうもんだと思ってるから、
何とも思わなくなってるだけで」


「あたし達オカマだってそうよ、
毎日のように誰かがテレビとか出てるから、
世間様もすっかり慣れちゃってるじゃないの」


「あんた達ゾンビも
これからそうやって世間に浸透して行くんだから、
そんなの気にしなくたっていいのよ」


語り出したら止まらない
ママの有難いお言葉が延々と続いたが、
それでもゾンビ少年の熱意と決意は変わらない。




ゾンビ少年の話を
一緒に聞いていたオネエさん達、
その境遇に同情したのか、
みんなしてゾンビ少年の擁護をはじめる。


「ママ、もうこれだけ言ってるんだから、
うちの店で雇ってあげればいいじゃない」


「そうは言っても、
未成年を夜の店で働かせる訳には
いかないじゃないのよ」


「ぼ、僕、こう見えて
人間の年齢だと四十歳超えてるんです……」


「えー!ウッソー!」


「ちょー、ショックー!」


「やだー、ウケるー」


「ゾンビは不老不死で、年取らないんです……」


「えー、やだー!」


「あたしもゾンビになりたいー!」


「ちょっとあんた、
ゾンビってどうやったらなれるのよ?」




(つづく)



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