史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

エピローグ

夕暮れ色に染まる空。
死滅したこの世界にも夕暮れはやって来る。


この世界のすべては失われ、
延々とただただ
荒野が広がっているに過ぎない、
どこに行っても。


それでもまだ
夕暮れ色の空はこの世界に残っていた。




いや、空を覆っていた暗雲が
神々の全滅と共に取り払われ
色を取り戻したと言うべきかもしれない。


死滅した世界のいたる所に見られる
神々のむくろしかばね


神々と髑髏の戦いが、
いかに凄惨なものであったかを物語っている。




神々の屍が積み上げられた山に
腰を掛け座るタケシ。


タケシもまた夕暮れに染まっている。




おそらくもうこの世界で
生きているのは自分だけだろう。
もうここには何もない。


もう自分と殴り合える者は
ここにはいない。


そろそろ、ここを離れる時か。


幼い頃過ごしたあの貧民街で、
ずっと殴られ続けていた自分が
誰かを殴るようになり、
いつの間にか誰からも殴られなくなって、
自分が殴るだけになって、
離れることを決意した時のように。


-


髑髏が、いやタケシが、
神々と果てしない戦いを繰り広げた結果、
この異世界は死滅した。


大地は何度となく引き裂かれ、
何度も大津波に呑み込まれ、
海の底へと沈んで行った。
もはや地上は以前の半分も残っていない。


暗雲が空を覆っていた間、
太陽の恩恵を受けることも
出来なかったため、
すでに生命が耐えられる
気候ではなくなっている。


それ程の被害が出るような
天変地異レベルの戦いが
何度も何度も繰り返されたのから
無理もないことだろう。


-


タケシが元いた人間世界も
同様にほぼ死滅しかかっている。


死神導師が、髑髏を消し去るために
核弾頭付弾道ミサイルを発射した後、
自国に核を撃たれたと判断した
超大国が報復の核を発射し、
人間世界は核の冬へと突入してしまった。


まだ生き残っている人間もいるが
そう遠くない内に
人類が死滅するのは
避けられないだろう。


異世界と人間世界、
二つの世界は死滅する道を辿った。


-


滅んだ世界を一人彷徨い続けるタケシ。


以前城があった近辺を差し掛かると、
魔王軍の遺物であるゲートを通じて
人間世界と異世界を行き来している
二人の人影をタケシは見つける。


「もうこちらの世界は
滅びてしまったようよ、ハチロー」


「ルル、
他ニモ異世界ハマダアル、
ソッチノ方ニ行ッテミヨウ」


いつか見たことがある
機械人形と胸に爆弾を埋め込まれた少女。


ルルの胸に埋め込まれた爆弾を
解除する方法を探し
二人は他の異世界まで旅して回っていた。


タケシはその二人の後をつけて行き、
他にも無数の異世界があることを知る。




それからずっと
タケシは異世界を渡り歩き続けている、
自分と殴り合いが出来る者を探して。




そして、今日もまた一つ異世界が滅びた。











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