史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

魔神の鉄拳

髑髏が地上に降り立つと、
神々の軍勢もまた地上に降りて来る。


髑髏の右腕、その肘から先が
高速で横回転をはじめる。
もちろん人間の関節構造では
有り得ないことだが。


体を最大限に捻り、構える髑髏、
降り立つ神々に向け
渾身の力で右拳を振り抜く。


すると高速回転している
髑髏の肘から先が
勢いよく千切れ飛び、
そのまま超スピードで
遠く離れた地上の神々を
次々と貫いて行く。


怨霊がとり憑く髑髏の拳は、
その力尽きるまで
神々を追い続ける、
まさに執念の拳。


しかも髑髏の元に
戻って来る必要もない。


何故なら髑髏には
次の腕がもう生えているから。


「ふっ、はははっ」


飛び続ける腕は、
地上に降りようとし無防備になっている神々を
次々と貫き、怨霊の恨みのはけ口にすると、
最後は敵の神に叩き落とされた。
腕にとり憑いていた怨霊は
髑髏の怨霊アーマーに戻って行く。


-


地上に降りた神々を
次々と殴り倒して行く髑髏。


だが神々が総出で
髑髏の手足に絡みつき、
その動きを止める。


右手、左手、右足、左足、
それぞれに五人以上の神々が絡みつき、
ようやくこれを抑え込んだのだ。


身動きが取れない髑髏の前に立ったのは、
おそらくこの世界で
『全知全能』と呼ばれている神。


その神はエネルギーを溜めて
高火力攻撃の準備をしている。
おそらく髑髏が再生出来ぬよう
細胞一つ残さず消し去るつもりであろう。


高火力エネルギーが放たれる瞬間、
髑髏は自らの意思で
手足すべてを切り離し、パージして
羽根のみで空へと急上昇する。


手足を抑えていた神々は、
光と共に跡形もなく消え去って逝く。




空へ逃れた髑髏は、
既に手足を再生させ
右手を出して構えていた。


体のサイズを
自由に変えられる能力を
右拳にのみに使い、
極限まで最大化されたその拳が、
渾身の一撃として
髑髏の腕から放たれる。


それは神々に滅ぼされた
この世界の生きとし生けるもの達
すべての怨霊が拳にこもった、
数十億、いや数百億以上かもしれぬ
怨霊達の無念が込められた、
まさしく『恨みの一撃』


髑髏の肉体を離れた極大の右拳は
全知全能の神を真上から叩き潰す。


轟きと共に大地を破壊し、
地中深くまで突き進む『恨みの一撃』


『神の裁き』で滅亡した無念を
今ここに晴らす。


-


「はんっ、知ったことか」


この世界の滅んだ生命の怨念だとか
神々の怒りだとか、
すべてタケシには、知ったことか。


タケシはそんなことには全く興味がない。


この世界が滅びようとも。


守るべきものなど何もなく、
この世界の生命はすべて死滅し、
再びここに生命が生まれぬ限りは
いずれ神も消滅するだろう。


それでもタケシは生きている限り殴り続ける、
ただそれだけ。




天からはまだ次々と
神々の軍勢が舞い降りて来ている。


「ふっ、ははははははっ」


タケシは薄気味の悪い笑い声を上げる。













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