史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

厄病神

何が気に入ったのかはわからないが、
タケシはそのままアノ国の城に居着いた。


しかも城内にではなく、
城の玄関口前に。
たまにお腹が空くと厨房を漁ったり、
極稀に風呂に入ったりしていたようだが、
城に住むというのとは
ニュアンスが少し違っていた。


アノ国の偉い方も
今更どいてくださいとも言えず、
タケシの扱いに困り果てる。


対話を求め、話し掛ける人もいたが、
ほぼほぼ帰らぬ人となってしまう。




時々ふらっと居なくなる時もあるが、
数日すると戻って来てしまう。
最初はようやく居なくなってくれたかと
アノ国の偉い方は喜んだが、
すぐにがっかりすることに。


どこへ行っているのか、
気になった偉い方が部下達に
後をつけさせてみると、
不死身と噂されるドラゴンと
山中で戦っていたとのことだった。


タケシにとってはドラゴンでも魔獣でも
人間の軍隊でも関係なく
戦えれば誰でもいいということなのだ。


しばらくしてもう一度後をつけさせた時には、
今度はドラゴンを焼いて喰っていたらしい。


-


アノ国の軍事力が壊滅したことを
風の噂で聞いたイノ国は、
今が好機とばかりに
アノ国への侵攻を開始する。


アノ国に攻め寄せる敵軍は、
村を焼き、人々を襲い、
傍若無人の限りを尽くし
アノ国の城に進軍して来る。


イノ国軍が城の前まで来ると
目の前にはタケシが立っており、
タケシはイノ国の強行軍、
その先頭に居た将軍を馬ごと殴り飛ばした。


そのままイノ国の侵攻軍は
次々とタケシに倒され、
敗走を余儀なくされる。


タケシは逃げるイノ国軍を
まるで面白がっているかのように
バイクで追い掛け、
やはりイノ国までついて行く。


そこでもイノ国軍を殲滅し、
イノ国の城に居座った。




そして今度はイノ国の隣国である
ウノ国がイノ国に侵攻して、
タケシは同様の流れで
ウノ国に居座るようになる。


-


タケシのことが異世界各国に知れ渡ると
今度はそれを戦略的に
利用しようとする国も現れる。


エノ国の兵士が、
オノ国の兵士を装って、
タケシを挑発し、オノ国に逃げて行く。
それだけでオノ国の軍は壊滅してしまう。


ただ当然報復として、
オノ国の生き残り兵が
エノ国を装ってタケシを誘導し、
結局エノ国の軍も壊滅することになる。


そんな風に各国の間で
壮絶なババ抜きが展開されていく。
もしくは厄病神、貧乏神の
なすり付け合いとでも言うべきか。


-


ある時にはこんなこともあった。


隣り合うカノ国とキノ国の両国が進軍し、
国境近辺で今まさに軍事衝突しようしていた時、
その両軍が挟むど真ん中の位置で
タケシが昼寝をしていた。


両国軍には緊張が走る。
しかしもうそれは軍事衝突の緊張ではない。
いかにタケシを自国に入れないか、
そのことへの緊張だった。


「いいか、絶対に起こしてはならんぞ、
決して物音を立てるでないぞっ」


「慌てて逃げると、
そちらを追いかける習性があると
聞いたことがあります。
ここはゆっくりと後退していくのが良いかと」


両軍でそんな会話がなされ、
軍事衝突は未然に回避される。




そんなことをずっと続けていたら、
やがていつしか世界各国の軍は
すべてタケシに殲滅されてしまっていた。













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