史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

神々の逆鱗

世界各国は何度も軍隊を新設しようとしたが、
戦う相手を探し求めているタケシには格好の餌食。


この世界ではタケシは天災のようなもの。
遭遇してしまったら、ただじっとして、
やり過ごすしかない。


どんなに用意周到に
何年も掛けて新たに軍をつくっても、
タケシがやって来れば
物の五分で壊滅させられる。
あまりに馬鹿馬鹿しくて
やっていられないというもの。




この世界で民を守る軍の役割として、戦争以外に、
危険な魔獣や魔物に対処するという任務があるが、
それもあらかたタケシがやってしまっていた。


戦う相手がいなくなったタケシからすれば、
危険な魔獣や魔物などはむしろ大好物であり、
そんなのが出現しようものなら、
喜んで真っ先に飛んで行く。


-


この異世界で世界各国の軍がなくなり、
その結果どうなったかと言うと。


平和になった。


もちろん、タケシは
この世界の人達が
平和に暮らせるようになどとは
微塵も思っておらず、
戦う相手を探し求めているだけであったが、
結果としてこの世界は平和になっていた。


地位や名誉や権利を欲する人々には
この上なく恨めしい存在のタケシだったが、
そんなことには全く関係がない
一般の民からすれば
戦争という無駄な争いがなく
住みやすい世界でもあった。




これまででは考えられなかったような
争いのない世界が続くと、
タケシのことをよく知らない人々は
世界から軍隊をなくし
戦争をなくしたタケシは
実は神なのではないかと言いはじめる。


お腹が空いて
また林檎を盗まれたら
何が起こるかわからないので、
食物を貢物として捧げ
機嫌を損なわないようにすれば
平穏な生活を、
平和な世界を提供してくれる、
本人のこれまでの非道を知らずに
そういう風に言われれば
確かに神のようにも思えて来る。


人々の中にはタケシを神として、
信仰する者達まで現れて来るのだった。


-


しかし、これが神々の逆鱗に触れた。


ある日突然、
太陽が暗雲に隠れ、世界が暗くなり、
空に唯一差し込む光の筋、
そこから『いきどおる女神』が舞い降りて来る。


女神は人より遥かに大きく、
手に持つ杖を振り下ろし
天から『裁きの雷』を地上に落す。


天が破裂したかのような
けたたましい雷鳴と共に、
落雷が止むことなく地上に降り注ぎ、
大地は裂け、大津波が吹き荒れる。


この異世界の人間がいる
ほぼすべての場所にいかずちが落とされ、
そして、このわずかな時間の間で、
この世界の人間の大半が死に絶える。




神々への信仰を忘れ、
不浄の者でしかないタケシを
新たな神として信仰するなど
神々には許せるものではなかった。


ましてやタケシ、いや髑髏は
願いを叶える女神をあやめており、
その時からの遺恨が
神々の間で今なお根強く残っている。


「ふっ、はははっ」


転変地異を起こす程の敵を前に
タケシは高笑いする。











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