史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

月の勇者と日輪の勇者(3)

上空にいる日輪の勇者、
その巨大魔方陣から
究極奥義『光の柱』が放たれる。


それはまるで
神が使う裁きの雷が如き閃光。


一瞬で地上に到達したその光は、
大地を貫き突き、
地上に途方もない爆煙が上がる。




勝利を確信する日輪の勇者。


「はははっ、ははははははっ」


天を仰ぎ、高笑いを上げる。


「これですべてが俺のものだっ」


天上天下唯我独尊、ここに完成か。




「はんっ、知ったことか」


しかし日輪の勇者の後ろには
宙に浮く髑髏の姿があった。


「ば、馬鹿なっ……」


驚愕する日輪の勇者。


「まさか、
アレを耐えたというのかっ!?」


実際に耐えたと言えば耐えた。
しかしもう少し時が止まったままであれば
再生能力も使えず、
そのまま消滅していたかもしれない。


日輪の勇者は最大のミスを犯していた。


月の勇者も一緒に殺したことである。
『光の柱』を同時に受けた月の勇者と髑髏、
耐久力の差で、月の勇者は先に消え去った。
月の勇者が消えた瞬間、
髑髏に掛けられている
時止めの能力は当然解除される。


そこから髑髏の再生能力が動きはじめ、
髑髏自身もまた閃光から抜け出した。


それはわずかな刹那の出来事であるが、
髑髏はこれまで刹那の差で
何度も勝利を手にして来ている。




取り乱し、慌てる日輪の勇者は
背負った大剣を手にし
これを振り下ろすが、
肉弾戦で髑髏に敵う筈もなく、
髑髏の拳で鎧こと胴を貫かれる。


高空から地上へと
落下して行く日輪の勇者。


-


日輪の勇者による攻撃の直前、
髑髏に投げ飛ばされた
木の勇者・岩槻はまだ生きている。
被弾を免れこそすれ、
爆風に巻き込まれ瀕死ではあるが。


最後まで生き残った勇者、
それは木の勇者、岩槻ということになった。




岩槻の周囲が光で溢れ出し、
その傷がみるみる間に回復されて行く。


岩槻の前に姿を現す女神。


「最後の勇者よ、
あなたの願いを言いなさい。
神々があなたの願いを叶えることでしょう」


立ち上がった木の勇者、岩槻は叫ぶ。


「俺の願いはただ一つっ!」


「俺のこの手でタケシを倒すっ!」


光り輝く女神は応える。


「よろしい、
あなたの願いを叶えましょう。
神々の力をあなたに授けましょう」


女神から発せられる光の粒子が
木の勇者である岩槻に吸い込まれていく。


神々の力を得て、
光輝く木の勇者・岩槻、
いや最後の勇者。




しかしこれは神々が本来想定していた通りの
『最後の勇者の願い』でもあった。


タケシが神々に新しい魔王に
認定されているのかはわからないが。


魔王との戦いの中で、
志半ばで六人の勇者が命を落とし
勇者が最後の一人となった時、
魔王を倒す力を得ることを願い、
神々の力を得て魔王を倒す。


六人の勇者の命を生贄にして
神々の力を召喚する一発大逆転のシステム。




まだレベルが低かった筈の木の勇者だが、
神々の力を得て、
レベルは最強、チート能力を多数有し、
神々にも等しい無敵の状態を獲得していた。


自身にみなぎる新たな力に震え、
光り輝く最後の勇者は
再びその決意を叫ぶ。


「俺のこの手でタケシを倒すっ!」











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