史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

金の勇者と土の勇者(2)

土中から這い上がって来る髑髏。


付近は濃い霧に包まれており、視界が悪い。
二人の勇者は、山の天候までも
操ることが出来るのか。


一寸先も見えないような視界の中でも、
敵は攻撃の手を緩めない。
向こうは髑髏の位置を
正確に把握しているというこでもある。


濃い霧の中から、
突如巨大な木の根が襲い、
巨岩が飛んで来て、
鉱物で生成された刃が飛び交う。




これまでただ目の前にいる敵を
殴り倒して来ただけの髑髏にとって、
こうした正体すら分からぬ敵というのは
滅法相性が悪い。


ここは一旦空に逃げ、
山から離脱するのが最善ではあるが、
タケシの性格からして
一時撤退も有り得ない。




髑髏はその拳の風圧で霧を晴らそうとし、
拳を打ち込むが、視界が悪いため、
山の一部を打ち砕く。


その瞬間だけ敵の攻撃が止まったのを
髑髏は見逃さなかった。


気づいた髑髏がもう一度
鉄拳を山に打ちつけると
やはり敵の攻撃は止まる。


「ふっ、はははっ」


これは狂気の笑いではなく、
馬鹿馬鹿しくて笑ったというところか。


「なるほどな、
そういうことか」




これもタケシとしては本意ではなかったが、
相手が巨大な山となれば仕方ない。


銀と黒である髑髏の体、
その全身に薄っすらと赤い血管が浮き上がる。


赤い髑髏こと鳴門なるとの血を吸収して得た
究極魔神の力。


危険を察知して、
金の勇者と土の勇者が突如姿を現し、
髑髏を止めようとしたが時既に遅し、
もう手遅れだった。


究極魔神となった髑髏、
渾身の力でアトミック級の一撃を
巨大な『はじまりの山』にぶち込む。


まるで大爆発でも起こしたかのように
何千メートル級もある山の上部が吹き飛ぶ。
遠くから見れば確実に山の形が
変わっているレベルの威力。


と同時に金の勇者と土の勇者の姿は消えて行く。


「やはり、そうか」


髑髏は二発目、三発目と
続けて拳を打ち込み、
山を跡形もなく消滅させる。


-


金の勇者と土の勇者、
その本体は『はじまりの山』そのもの。


千年近く前にこの地に現れた
初代勇者は山の化身であり、
金の勇者と土の勇者の二人がいた。


その山が『はじまりの山』だと言われており、
初代勇者の地として
『はじまりの山』は人々に信仰されるようになる。


最初から二人いたため
勇者は複数いるものだと人々は信じ、
各世代ごとに勇者は増えていき、
今回壊滅した魔王軍討伐には
七人の勇者が集められた。


その中に初代と同じく山の化身である
金の勇者と土の勇者が
紛れ込んでいたということになる。


七人の勇者が大自然の使いとされるのも、
初代が山の化身という
大自然の使いであったためだ。


-


そして後方支援を任されていた
岩槻はどうなったかと言うと。


頑丈だけが取り柄の岩槻、
吹き飛ばされはしたが
爆発に巻き込まれただけなので、無事生きていた。


気を失っていたが、気づいた時には
あった筈の山が無くなっており、
周囲には誰もおらず、
仕方がないのでそのまま帰って行くのだった。











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