史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

水の勇者(2)

海の魔獣、その群れに襲われ
今にも喰われようとしている髑髏。


巨大なイカ、クラーケンの脚に捕まり、
深海へと引きずり込まれたのだ。


クラーケンの脚に噛み付き
離した隙に髑髏を奪った巨大鮫が
その体を執拗に噛み砕こうとする。


さらにそれを水竜が横から奪い、
その鋭い歯牙で髑髏を貫く。


他の魔獣達も髑髏を奪おうと、
争奪戦を繰り広げている。




さすがの髑髏も
この巨大な水棲魔獣に喰われれば、
一巻の終わりであろうと
水の勇者は考えていたが。


「ふっ、はははっ」


水の中ではあるが、
髑髏の高笑いが聞こえる。


今にも自分が喰われそうな状況で、
笑い続ける髑髏の狂気に
水の勇者は戦慄を覚えずにはいられない。


タケシが狂っているのは知っていたが、
これ程までの狂気は計算外だったと。




巨大鮫に噛み砕かれ呑み込まれた髑髏。
だがすぐに巨大鮫の体には穴が開く。
そしてあっという間に
巨大鮫の体は穴だらけになり、
黒い目は光を失いそのまま底へと沈んで行く。


次は自ら魔獣の口に突っ込んで行く髑髏。
魔獣は大きな口を開けているので入り込みやすく、
やはり同じように内部を破壊し、
中から体を突き破って外に出て来る。


「やはりデカい奴にはこれだな」


次々と魔獣を倒して行く髑髏、
クラーケンにはその脚をすべて切断して回った。


髑髏の規格外の狂気を
怖れ始めていた水の勇者は、
その姿を見て決断した。


「こ、ここは一時撤退だ……」


ここを一時撤退、
他の勇者と共闘して倒すしかない、
そう考えた水の勇者は
この場を離脱しようと急ぐ。


-


海の魔獣達をすべて倒した髑髏、
一時撤退しようとする水の勇者を追い掛ける。


魔獣達の血を吸い能力を吸収したお陰で、
泳ぐことに関しては水中を既に克服していた。


水の勇者に追いついた髑髏は、
これを後ろから羽交い絞めにし
そのまま深海の更に奥深くへ突き進む。


火の勇者の時と全く同じように
水の勇者を羽交い絞めにしたまま
深海の更に奥底へと突き進んで行く。


太陽の光さえ遥かに届かぬ海の奥底。


水の中を得意とする水の勇者であっても、
鎧の中身は人間であり、
深海の奥底、その水圧には
耐え切れるものではない。
さすがに防御シールドを展開して
水圧で潰されないようにしなければならない。


火の勇者もマグマに引きずり込まれた際、
防御シールドを張ったのだが途中で力尽きていた。




水が問題なのではなく
水圧が問題なのだ。


潰されないように
防御シールドを展開するのが
精一杯である水の勇者。


シールドを張ったままでは
思うように動くことすら出来ない。


「これで条件は一緒だな」


水の中で思うように動けない髑髏と
水圧で思うように動けない水の勇者、
同じ条件にするというのが髑髏の狙いだった。


一緒どころか、今や
髑髏の方が圧倒的有利ですらある。
この深海の水圧を
全く問題にしていないのだから。


水の勇者が展開するシールドも
魔力キャンセラーを持つ髑髏には
防御壁にはなり得ない。


深海の砂に足を着け、
深く踏み込んだ髑髏の拳が
シールドをすり抜け、
水の勇者を鎧ごと貫く。




まさしく海の藻屑となった
水の勇者を残して
髑髏は水の中を浮上して行く。











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