史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

火の勇者(2)

ドラゴンの口から脱し
マグマの底から上昇して来る髑髏、
表面は灼け爛れており、
再生能力で今まさに治している。


浮上して来たところを
火の勇者が手にする大剣を振り下ろす。
灼けただれた箇所を
さらに切り裂かれた髑髏、
そこから血飛沫が上がる。


これまでの肉弾戦を主とした魔神との戦い、
それとは明らかに異なる戦闘に戸惑う髑髏。
炎や溶岩、マグマを操り、
炎系モンスターを使役し連携する、
それが火の勇者が立てた髑髏攻略法。




「俺の願いは最強になることだ」


火の勇者は、最後の一人となった時、
その瞬間に叶えたい願いを口にする。
改めてその決意を口にしたのだろう。


傷口を再生させながら髑髏は立ち上がる。


「ぬるいな」


それはマグマの温度か、 
それとも火の勇者の決意か。


タケシは強さを求めて来た訳ではないが、
ここまで強くなるのに
数え切れない程の死線をくぐり、
刹那の中で命のやり取りをし、
多くの命を殺めて来た。


それを願いひとつで叶えたところで、
その強さにどれ程の価値があるのか。


火の勇者のそうした考えが、
タケシにはぬるく感じたのかもしれない。


-


火の勇者の大剣に切られ
タケシは目を覚ましたのか、
何度も振り下ろされる大剣を
右手で受け止め、そのままへし折る。


そして、後ろから突っ込んで来る火竜に
振り向き様、その拳を打ち込む。
火竜はまるで自ら壁に激突したかのように、
反動で後ろによろけ動きを止める。


髑髏は火竜の尾を掴むと、
その巨体を振り回してから放り投げ、
投げ飛ばされた火竜はキマイラと激突。




剣を折られた火の勇者は、
再び火の柱を操り、追い詰めようとするが、
蝙蝠の羽根で宙を飛ぶ髑髏は、
それを全く意に介さず
勇者に向かって突っ込んで行く。


そのまま火の勇者に抱きつくと、
勇者を抱えたまま空に連れ去る。


上空に向かって急上昇した髑髏は、
そこからクルッと引っ繰り返り
そのまま火口へと急降下する。


「ま、まさか」


「やめろ、やめろっ!」


火の勇者と共に火口の奥深く、
煮えたぎるマグマの中に飛び込み、
そのまま奥底へと突き進んで行く。


自らも灼熱のマグマに焼かれ
激しい痛みを伴うというのに、
火の勇者のフィールドで
敢えて勝負するということなのか、
それとも我慢比べということなのか。


-


 しばらくして、
マグマの底から再び浮上して来る髑髏。
火の勇者の姿はそこにはない。


火の勇者でありながら、
灼熱のマグマに焼かれ絶命した勇者。


髑髏の外皮はやはり灼けただれ、
再生能力で復元されている。


「やはりぬるいな」


髑髏はその場に残されたキマイラと火竜に
向かって行き、戦いを挑むのだった。













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