史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

髑髏攻略会議

ここ異世界の住人達の間では
例の噂で持ち切りだった。
今までの魔王が倒され、
新しい魔王が誕生したと。


今までの魔王は勇者が倒したとか、
魔王軍の内紛で政権交代したとか、
様々な憶測が噂と一緒に流れている。


勇者であると言うよりは、
魔王の方が間違いなく近いので
それ程タケシに問題がある
という訳ではなかったが。




しかし、木の勇者である岩槻いわつきの前に、
タケシは突然現れて、メッセージを伝えた。


「俺が新しい魔王で、
お前たちが勇者ならば、
俺を倒しに来い、
さもなければこっちから皆殺しに行く」


最後にタケシは、
なんだったら日時も場所も勇者が決めていい、
と付け加えていた。


これはタケシから七人の勇者への
宣戦布告のようなものである。
それよりは果たし状の方が近いかもしれない。


-


タケシからの伝言を岩槻に伝えられ、
早速勇者会議を開く七人の勇者達。


七人の勇者達は、
最後の一人になるまで生き残り
自らの願いを叶えるという野望を持っているため、
互いを牽制し合い、手の内を見せようとはしない。


だが、タケシが変身する髑髏の攻略法を
皆で情報共有しておくのはむしろ得策と判断する。


他の勇者は倒せても、
髑髏を倒すのは容易ではない、
誰かが髑髏を倒してくれればそれも良し、
誰かが髑髏に倒されてもそれはそれで良し、
七人いる勇者の大半がそう考えた。


彼等勇者も、
複数の魔法を詠唱なしで
同時に使いこなし、
複合魔法も自由自在、
空を飛べる者もいれば、
水の中で呼吸が出来る者もいる、
それぐらいにはチート性能の持ち主ではある。


しかし魔力キャンセラーを持ち、
魔王軍を一人で倒した髑髏相手では、
余程策を持って臨まねばならない。




会議はこれまで髑髏のデータを集め、
分析して来た水の勇者が中心となって進められた。


「魔力キャンセラーを持っているから、
他の魔神みたいに、魔法は一切効かないんだろ?」


火の勇者が改めて確認する。


「いや、俺は魔法こそが、
髑髏攻略の鍵だと思っている」


「魔王は、自軍がつくった魔神特有の能力、
魔力キャンセラーを高く評価し過ぎていた」


「死神導師の作戦、
現代兵器と髑髏の戦いを見ればわかるように、
破壊力のある兵器などに魔法を掛けて
効果的に使うという方法はある」


「俺はむしろ肉弾戦が一番やばいと思う、
あいつは肉弾戦に特化し過ぎている」


魔法で擬似電気を生み出し、
ノートPCを使っている水の勇者は、
分析データを見ながらそう分析した。


-


「ここにいる者達はみな、
大自然を司る勇者だ」


「つまり、この世界にある
大自然の力を借り、恩恵を受けて奴を倒す」


「その大自然の力を引き出すのが
魔法という訳だ」


「まぁ、これは俺の考えだから
それぞれ好きにやればいいとは思うが」


水の勇者が自らの見解を語って締め、
緊急勇者会議は終わろうとしている。


「具体的にはどうすればいいんだ?」


空気を読まない岩槻。


「それは自分で考えろ」


「で、誰が最初に行くんだ?」


一番の問題はそこだった。
一番やる気がありそうな木の勇者である岩槻は
七人目の、最後の勇者であるため、
まだレベルが全然足りていない。


結局、タケシを倒した者は
生き残りの勇者が3人になるまでは
勇者同士の戦いを免除される、
という特典が付けられてはじめて
最初の挑戦者として名乗り出る者がいた。











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