史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

魔王

魔王と対峙する髑髏スカル


魔王城の最深部にある玉座、
マントで全身を覆い円錐状の頭巾を被る
漆黒の魔王。


魔王軍の残存兵力をなぎ倒し
ここまで辿り着いた髑髏。


兵達は全員殺されているためか、
城内は妙に静まり返っている。




「ついにここまで来たか、
魔神・髑髏、いやタケシよ」


魔王は立ち上がり
羽織っているマントを脱ぎ捨て頭巾を取る。


その姿は髑髏と全く同じ、瓜二つ、
ただ色だけは全身黒い。
漆黒の髑髏。


魔王は究極の魔神となる筈の
髑髏を誕生させるにあたり、
自分と全く同じ容姿につくらせた。
神を気取りたかったのか、
その真意は定かではないが、
容姿が同じというのも当然と言えば当然。




既に臨戦体制の銀髑髏。


「まぁ、落ち着くがいい」


魔王は再び玉座に座る。


「お前とて知りたいだろう、
究極魔神に隠された秘密を」


究極魔神にタケシは興味がなかったが、
とりあえずは構えを解く。
興味がないとは言え、
そもそもそれがすべての元凶であるのだ。


「私も今ようやく気づいたよ、
有栖川博士にしてやられたのだ」


「君が何故
これ程までに強くなっていながら、
究極魔神に覚醒していないのか、
私は不思議で仕方なかった」


「だが今君と対峙してようやく理解した」


「私が長年待ち望んだ究極魔神は、
私が命を捧げてはじめて完成するのだ」


「君が私を倒して、
この血を吸った時こそが
究極魔神の誕生の時なのだよ」


究極魔神が誕生し、
魔王の手先となることを恐れた有栖川博士は、
構造的矛盾とも呼べる仕掛けを施していた。


髑髏タイプが究極魔神となるためには、
魔王を倒しその血を吸う必要がある。


従って魔王が生きているまま、
究極魔神を魔王がその手にすることはない。


それが有栖川博士のせめてもの罪滅ぼし、
人間世界の人々とこの異世界の命に対する。




「はんっ、知ったことか」


魔王の一人語りにも飽き、
タケシはイライラしはじめていた。


「いいだろう、
ならば私がお前を倒し、お前の血を吸い、
私自身が究極魔神になってみせよう」


魔王が再び玉座から立ち上がろうとした瞬間、
痺れを切らした髑髏が、閃光の如き速さで、
魔王の顔面に渾身の拳を打ち込んだ。


魔王の首は千切れ飛び、
後ろに転がって行く。


玉座には首のない魔王の体だけが残り、
血が噴き出し、血飛沫をまき散らす。
髑髏の顔、体が返り血で赤く染まる。




「これだけか?」


拍子抜けするタケシ。


その身に浴びた魔王の血を吸収するが、
とても何かが覚醒したようには感じない。


究極魔神とはこんなものなのか、
タケシがそう思った時、声がする。


「あ〜あ、最悪の展開だね、これは。
でもワンチャン勝ち目が見えたか、な」


魔王の首を手に持つ赤い髑髏が
暗闇から姿を見せる。


そして、魔王の首から流れる血を
赤い髑髏もまた吸収していた。













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