史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

魔王城

「なるほど、どおりで見つからなかったわけだ」


夜空に輝く星に照らされて、
地中からその姿を現す
魔王軍最後の幹部、
地獄導師の拠点。


地獄導師を倒せば、残すは魔王のみ。


乗り込もうとするタケシに
襲い掛かる魔獣の群れ。


牙を剥き飛びかかって来る
ヘルハウンドの頭部を殴り飛ばし、
もう一体の顔面に前蹴りを入れる。
振り返って後ろの一体に拳を振り下ろす。


タケシは髑髏スカルの姿に変身し、
三つ首の大型ケルベロスの背に飛び移り、
まるでケルベロスライダーのように背に跨る。
これを振り払おうと
いななき暴れるケルベロス。


三つある頭、
その内真ん中の頭に向かって、
背後から後頭部に拳を打ち込む。
一撃でケルベロスの頭は粉砕され、
血飛沫が噴き出す。


必死に背後を向こうとしている
残り二つの頭もその拳で打ち砕く。


-


魔獣と魔物を一掃し、
地獄導師が変身した魔神・蛇骨ジャコツ
一撃で血祭りにあげた髑髏。


蛇骨の断末魔に呼応するかのように、
空に人間世界と異世界を繋ぐ
巨大なゲートが浮かび上がり、
その中からドラゴンが姿を現す。
そのドラゴンの背中には
城の存在が確認出来る。


それこそが魔王の拠点である魔王城であった。


「なるほど、どおりで見つからなかったわけだ」


ドラゴンが舞い降りた地点へと向かう髑髏、
だがその前に再び魔物や魔獣といった
魔王軍の残存戦力が大群となって向かって来る。


-


「ついにここまで来ましたか」


それを遠い崖の上から見下ろしている赤い髑髏。
赤い髑髏である鳴門なると伸介しんすけもまた
人間世界からこちらの世界へと渡って来ていた。


人間世界で平穏に暮らす筈だったが、
常に魔王軍の刺客に命を狙われ続けるため、
魔王を倒す何かいい機会はないかと、
異世界に滞在しずっと様子を伺っていたのだ。




このまま順調にいけば
魔王はタケシが倒してくれそうではある。


しかし問題なのは、
その後タケシに命を狙われるだろうということだ。


蛇のように執念深いタケシが
魔王を倒したからと言って、
気分良く自分を見逃してくれるとは
到底思えない。


しかも魔王の血を吸った髑髏は
もう自分では勝てない相手になっているだろう。


一番良いのは魔王とタケシが刺し違えてくれること。
激闘の末、
二人がボロボロになったところを自分がとどめを刺す、
もしくは魔王がタケシを倒し、
ボロボロになった魔王に自分がとどめを刺す、
それもいいだろう。


それが鳴門が考え得る最良の展開ではあった。


「まぁ、とりあえず
いつでも寝首がかけるように
魔王城には潜入しておきますか」


夜の闇の中へと消えて行く赤い髑髏。


-


そして、もう一つ
魔王城の動向を気にしている者達がいた。


それは本来魔王を倒さなくてはならない筈の
七人の勇者達。


「魔王を倒してこその勇者ではないのか?」


正義感が強い元警察官、
魔王討伐を主張していた岩槻いわつきは熱弁を振るう。


「なに、タケシが魔王を倒したら、
タケシに新しい魔王になってもらえばいいんですよ」


水の勇者がノートPCを見ながら、眼鏡を指で押す。


「そんなに気になるんだったら、
またお前一人で行って来いよ、この間みたいに」


日輪の勇者は、岩槻にそう言い放った。


結局また岩槻だけが単身魔王城へと向かう。


-


魔王城の出現により、
各陣営がそれぞれの思惑の下、
動きはじめることになる。











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