史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

異世界間弾道ミサイル

「こうなれば、最後の手段」


移動式要塞でもある巨大亀、その背中の居城、
戦況を見つめていた死神導師は命令を下した。


すでに髑髏は城内部にまで潜入して来ており、
アンデッドの群れと戦っているが
それも単なる時間稼ぎに過ぎない。
死神導師の眼前に現れるのは時間の問題。




死神導師の命を受け、
人間世界、某国に潜り込んでいた部下達が、
核弾頭付大陸間弾道ミサイルを発射させる。


それは人類を核戦争に導きかねない行為。
他国より報復の核ミサイルが発射されれば、
人間世界は核により死の世界へと変わるだろう。


しかし、死神導師も
もはやなり振り構ってはいられない、
人間世界がどうなろとも
ここで髑髏に負ける訳にはいかない、
これが最後の切り札でもあるのだ。




発射された弾道ミサイルが
大気圏上空まで到達した瞬間、
その巨大な物体が忽然と姿を消す。


人間世界に潜んでいた
魔道士達がその力を使い 
弾道ミサイル軌道上に
異世界へと繋がるゲートを開けたのだ。


人間世界側のゲートから
異世界側の空にあるゲートに姿を現す
大陸間弾道ミサイル、
いや異世界間弾道ミサイル。


やはり魔道士達が命中補正の魔法をかけ
弾道ミサイルを目的地へと導く。


そして、その目的地とは巨大亀の背中にある
死神導師の居城に他ならない。
この城もろとも髑髏を滅するつもりなのだ。




髑髏が死神導師の前に姿を見せた時には、
核弾頭付弾道ミサイルもまた、
城のすぐ傍まで到達していた。


「はっはっはっ、ここでお別れだ、
髑髏スカル、いやタケシ君」


死神導師はそう言うと、
髑髏の目の前から忽然と姿を消す。


死神導師の特殊能力、瞬間移動。


次の瞬間、核の光に包まれる髑髏。


-


瞬間移動がギリギリであったため、
核爆発の影響を受けた死神導師は
気を失って倒れていた。


目を覚まし、周囲を確認すると
遥か遠くの方で核の炎がまだ確認出来る。


「はっはっはっ、髑髏を倒したぞっ」


天を仰ぎ高らかに笑う死神導師。


「そうか、では次はお前が死ね」


後ろからする声に振り返ると、
そこには髑髏が立っていた。


「ば、馬鹿な、あの爆発の中から
逃げ延びて来たと言うのか」


「お前達を皆殺しにするまで、俺は死なん」


爆発に巻き込まれ、核の炎に焼かれ、
なお執念でここまで
死神導師を追って来た髑髏。


損傷と再生能力による再生を瞬時に繰り返し、
それを核の炎の中から抜け出すまで、
延々に続けて来ていた。


己が身を業火で焼かれる痛み苦しみに耐え続け、
なお再生を繰り返し続けた
その精神力こそがタケシの執念。


「特にお前はこの手で殺さなくてはな」


死神導師はその身を
魔神・烏賊スクイッドの姿に変えたが、
その瞬間に髑髏の拳で土手っ腹を貫かれる。


「処刑、完了」


血塗られた拳が、死神導師の血を吸収していく。




この地の土壌や海洋が放射能で汚染され、
それがどれぐらい影響を及ばすのか
浄化されることがあるのかは
ここが異世界であるためわからない。


そして、タケシはそんなことには全く興味がない。




髑髏は激闘の末、
因縁の宿敵である死神導師を打ち果たした。


残すは最後の幹部である地獄導師と魔王のみ、
魔王を狩る日もそう遠くはないだろう。











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