史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

黒将導師

城の近辺にはゾンビやグール、スケルトンが多数おり、
木の勇者の姿でこのまま進めば戦闘は必死であった。


岩槻は武装をすべて解除し、
勇者軍からの使者というていを装い、
なんとか城内部へ通してもらうことに成功する。


魔王軍幹部である黒将導師と
面会する機会などはそうそうあるものではないし、
なんとかしてこの無益な戦いの現状打破、
その足掛かりにしたい岩槻であったが。


「この城に人間が来るというのは久しぶりのことだよ、
君には敬意を表する意味でここまで来てもらった。
まぁ、人間というより勇者と言った方がいいのかな」


城の中まですべてが白い、この雪と氷の世界で、
黒将導師ただ一人だけが全身真っ黒であった。


「あなたは魔王軍の中でも特殊な存在だと聞いている。
魔王軍として戦わず、人間を殺すようなこともしないと」


岩槻は黒将導師に共闘を申し出る。


「是非、我々と同盟を結び、
共に戦っていただけないだろうか?」


岩槻の言葉に笑みを浮かべる黒将導師。


「私はね、
魔王軍と人間、勇者の争いには全く興味がないのだよ。
私のテリトリーを侵すようなことがない限りはね。


誰かが、私のテリトリーを侵すようなことがあれば、
それが例え魔王であろうとも、戦うことを選ぶだろうがね」


「そうだな、
わかりやすく人間で例えるとしよう……。


人間が、地を這うアリが邪魔だから
蟻を皆殺しにして殲滅しようと思うかね?


蟻が人間に向かって来て、
噛んだりした時に仕方なく振り払うぐらいのものだろう?
もしくは噛まれたら非情に危険な猛毒の蟻を見つけた時かな?


他の人間が蟻を殺すのを楽しんでいて、
そのことで蟻が別の人間のところに行き、
蟻の味方になって、その人間を殺してください、
と言われたら君ならどうする?
蟻ごときのために人間を殺すかい?
君が今していることはそういうことなのだよ」


「我々からすれば人間は蟻にも等しい。
それぐらいにちっぽけな存在なのだよ。
それにいちいちムキになる方がおかしくはないかい?」


その後、岩槻は粘ったが、話はどこまでも平行線。
お互いに相容れることはなかった。


はじめからわかっていたことではあったが、交渉は決裂。
岩槻はそのまま手ぶらで戻ることになる。


-


帰路に着く岩槻の姿を遠くから見ている人影、
それはタケシの姿。


魔王を狩り、魔王軍を壊滅させるため、
魔王と幹部の拠点を探し回っていたタケシだったが、
一向に見つけられない状況が続いていた。


そんな折、岩槻が永久凍土に向かったことを知り、
タケシもまたその後を追うようにして
ここまでやって来たのだ。


「なるほど、どおりで見つからなかったわけだ」


タケシは黒将導師の城を遠くに見つめる。











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