史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

七人の勇者

この世界には魔王がいる、
となれば当然と言っていい程に勇者もいる。
しかもそれは一人ではなかった。


この世界の一大勢力が魔王率いる魔王軍であり、
これと戦う対抗馬が勇者を含めた人間達となる。
神々は人間寄りではあるが
滅多に争いに加わることはない。


これはあくまで種族的な対立であり、
国家間ではまた異なる対立がある。


しかし魔王軍以外にも様々な勢力があり、
勇者も一人では負担が大き過ぎるため、
この異世界では勇者は七人存在している。


月の勇者、火の勇者、水の勇者、
木の勇者、金の勇者、土の勇者
そして勇者の中でも
最強であろうと言われている日輪の勇者。


厳密には最近七人目の勇者が誕生し、
これでようやく七人が揃ったというところだ。


七人の勇者は全員が元人間世界の住人で、
死にかけて女神に会い、
この異世界に転移して来ている。


人間世界の者に頼ろうとするところは、
魔王軍も勇者軍も左程変わりはないが、
拉致ではないだけまだマシというものか。


そして、七人の勇者もまた決して一枚岩ではなく、
魔王軍をはじめとする各勢力を打ち果たした暁には、
生き残りと彼らの願いを賭けて勇者同士で
戦わなければならない定めにある。
それがここに転移して勇者になる際の掟でもあった。


-


七人目の勇者、岩槻いわつき吾郎ごろう
彼はこの異世界に転移して来た『木の勇者』。


『木の勇者』というメジャー属性ではない
勇者であることに不満を抱きながらも、
他の勇者のレベルに追いつくべく、
日々猛烈に鍛錬を積み重ねている。


正義感が強く、真面目で努力家、
気合いと根性論の持ち主で、
それ故に他の勇者との折り合いが
あまりよろしくない。




遭遇した魔神との戦闘。
鎧を纏い、大剣を振るう岩槻こと木の勇者、
慣れない魔神との戦いに苦戦を強いられる。


岩槻の魔法でつくられた多数のアローが
空を裂き魔神に襲い掛かるが、
魔力キャンセラーを持つ魔神には通用しない。


逆に魔神のタックルで吹き飛ばされる。




そこにバイクの爆音と共に現れた魔神・髑髏スカル
その圧倒的な強さで、魔神を一撃で血祭りにあげる。


魔神の血を吸収し終え、
髑髏から人間の姿に戻る。




人間に戻ったその男の姿を見て岩槻は叫ぶ。


「タケシィィィィィッ!!」


その声の方を振り返るタケシ。


「ほおっ、岩槻いわつきか」


不敵な笑みを浮かべる。


「お前は、俺が殺したはず」


激情する岩槻。


「ああ、俺は確かに、お前に殺されたっ!!」


「だが、俺はお前をこの手で倒すために、
この世界に転移して来たっ、お前を追ってな!!」


「改造魔神か?」


「俺は勇者だっ!」


「はんっ、勇者か」


「本物を見るのははじめてだ」


岩槻は手にする大剣でタケシに斬りかかる。


「タケシィィィィィッ!!」




七人目の勇者、岩槻いわつき吾郎ごろう
彼は人間社会でタケシに殺された元警察官。











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