史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

帰還

オーバーヒートを起こし、
片膝をついて崩れ落ちるハチロー、
その前に現れる魔王軍幹部の金狼導師。


その時、大きな衝撃音が響き渡る。


この異世界と人間世界をつなぐゲート、
それは巨大な門で閉ざされているが、
その門をバイクで突っ込んでぶち破り
飛び出して来る髑髏スカル


そのまま三人がいる地点まで突っ込んで来て、
ターンさせながらバイクを止める。


「幹部の拠点か、ちょうどいい」


バイクを降り、歩を進める。


「人間世界に逃げたと聞いていたが、
戻って来たというのか?」


突然の髑髏出現に驚く金狼導師。


「ふんっ、誰が逃げるか」
「殺すぞっ」


最初から殺す気しかないタケシだが、
いつもの口癖を発する。


タケシは魔神・仙人掌カクタスを追って
人間世界に渡ったものの
その後この異世界に戻れなくなっていた。


「俺はお前らを皆殺しにするだけだ、
逃げも隠れもせん」


人間世界で異世界に繋がるゲートを探し回って、
ようやくゲートを発見し、今帰還したという訳だ。


一時的にゲートを発生させることが出来る者もいるが、
常に人間世界と繋がっている固定ゲートがあるのは、
魔王軍幹部の拠点ぐらいのものであり、
タケシがここに現れたのは単なる偶然という訳でもない。


-


髑髏の出現に警戒するルルは、
片膝をつき動けないハチローを
庇うようにして前に立つ。


そのハチローに目をやる髑髏。


「はんっ、ガラクタか」


だが全く興味はない様子。


「ガラクタに用はない」


髑髏はそう言って、
ルルとハチローの前を素通りする。




今目指すべきはただ一人、金狼導師。


「お前のボスはどこにいる?」


金狼導師は歩み寄ってくる髑髏に身構える。


「お前のボスはどこだと聞いている」


「魔王様のことか? 知ってどうする?」


「狩る、魔王を」


圧倒的な力の差が開いてしまい
タケシが望む殴り合いが出来なくなった今、
より強い刺激を求め、タケシは魔王を探して
狩ることを決意し帰還していた。


「馬鹿め、お前ごときが一人で
魔王様に勝てると思っているのか?」


高笑いする金狼導師は、
その姿を魔神・金狼きんろうに変え、
髑髏に襲い掛かる。


一瞬で間合いを詰め、
その鋭い牙で噛みちぎろうとするが、
髑髏はかわすことすらせず、
自ら右腕を出してワザと噛みつかせる。


噛みついた瞬間、ほんの僅かな一瞬、
金狼の動きが止まったところを
髑髏の左腕が金狼の頭を鷲掴みにする。


「イライラするっ、こんなものか?」


金狼は頭を振って髑髏の手を振り解こうとするが、
その握力の前にまったく逃れられない。


「幹部でもこれか」


そう呟くと髑髏はそのまま
鷲掴みにしている金狼の頭を握り潰す。
イライラするあまり、
髑髏は結局魔王の居場所を聞かずに
殺してしまうのだった。


「処刑、完了」


金狼の返り血をその身に浴びる髑髏、
敵の血が彼をより一層強くしていく。






ハチローとルルはその圧倒的な強さを
ただ眺めているだけだった。











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