史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

行方不明の子供達

ルルの両親は既に他界しており、
亡き父の知合いの家に
住み込みで働かせてもらっていたが、
そこの女房からはあまりよく思われていなかった。


「なんだいあんた、
森の化け物に会いに行ってるって
村中の噂になってるじゃないか」


ルルはハチローのことを庇おうとする。


「ハチローは化け物なんかじゃないわ!」


ルルの態度が気に食わない女房は、
いつもわざといびるようなことを言う。


居候いそうろうの分際で口ごたえするなんて、
なんて子だよ、まったく!
きっと親の育て方がよくなかったんだよ」


両親のことを言われるとルルは
目に涙をためて泣きそうになる。
それでも絶対かないと心に決めていた。




ルルは天涯孤独、
いつも寂しくなるとハチローに会いに行く。


「ルル、俺ノコト、怖クナイノカ?」


「またそんなこと言うの?」


「ダッテ俺ハみにくイカラ」


「心がみにくい人間の仲間なんかより、
見た目が変わっていても心が清くて優しいハチロー、
あなたの仲間の方がいいわ」


「ルルノ歌聞カセテ欲シイ」


「もちろんよ」


-


しかし、ある日を境にルルが森にやって来なくなる。


ルルに会いたくて仕方がないハチローは
村に様子を見に行きたかったが、
自分の姿を見たら村の人が怖がってしまう、
そう思うと村に近寄ることが出来なかった。


だが、村人達が向こうの方からやって来る。
手にくわすき、斧、なたなど
思い思いの武器を手に取った村人達が
何十人も徒党を組んでハチローに詰め寄った。
中には銃を持った者もいる。


村人達は口々に『子供達を返せ!』と叫ぶ。
どうやら村の子供達が
ここ数日行方不明になっているらしい。
その中にはルルも入っており、
村の人々はそれが森の怪物、
ハチローの仕業だと決めつけていた。
中にはみなしごのルルがハチローと一緒になって、
村の子供達をかどわかしたなどと言う者もいる。


体が大きく人並み外れた怪力を持っているのに
ハチローは目の前の人間達に怯えていた。
怪力の持ち主である自分が、人を、生命を
傷つけてしまうかもしれないことを恐れていたからだ。


「待ッテ、一緒ニ探ソウ」


興奮し狂気の集団心理に陥った村人達は、
ハチローの言葉に耳を貸そうともせず、
手に持つ武器で襲い掛かる。


しかしハチローの強靭なボディは、
分厚い斧の刃を折り、銃弾すらも弾き返す。
他の武器もまったくハチローには通用しない。


心優しく臆病なハチローは、
両拳で上半身をガードする防御姿勢と取り、
村人達の暴行にひたすら耐え続ける。


そんなことよりもハチローの頭の中は、
行方不明になったルルのことが心配で、
それしか頭になかった。











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